アマゾンのまなざし

 

「あの本が読みたいな」とネットを開くと、あのアマゾン(Amazon)の画面に行き
着き、途端に「注文しますよね!ね!ね!」の応酬があって、ついポチッとクリックすると、
その日のうちに宅配便が「お届けに参りました」と注文の本を持ってやってきます。考えてみると、とんでもないサービスが実現しています。

その後、ネットで検索していると「あなたはこの本もお好きですよね?」と関連の本のお薦めメッセージが張り付いてきます。
きっとアマゾンでいくつか買い物をすると人物プロフィールが積み上げられて、巧妙にお買い物に誘導してゆくのでしょう。
この会社、世界中でネット通販を展開して、なんと15兆円の売り上げ規模まで成長しています。
アメリカの書籍販売の20%をアマゾンが占め、日本国内だけでも1兆円の売り上げと云います。

そのアマゾンが次に目を向けている新しい市場は、「ナチュラル、オーガニック」の分野ということがはっきりしました。

先月の16日、アマゾンがアメリカのホールフーズを1.5兆円で買収したのです。
ホールフーズ(Whole Foods Market.inc.)は300店を展開、9000億円も売り上げる巨大ナチュラル、オーガニック食品チェーン企業です。

経済界は、アマゾンが食品の効率的な配送網が欲しくて買収したと説明していますが、本当でしょうか?
アマゾンのトップのジェフ・ベゾス氏は、ホールフーズの買収の理由を
「多くの人に愛されて、最高のナチュラル、オーガニック食品を提供し、健康な食事を楽しませてくれている」と語っています。
オブラートで包んだようなこの言葉の奥にある冷徹な戦略に思いを馳せると、
アメリカの人口の4分の1を占め始めたミレニアルズの存在が浮かんできます。

ミレニアルズは、日本で云うポスト団塊ジュニア世代で、1980年以降に生まれた世代です。

パソコンはもちろん、スマホが体のいち器官になってしまった世代です。そして結婚、出産、住宅、自動車等々消費の主役になり始めています。
ところが、この世代、一筋縄ではいきません。
豊富なネット情報を駆使して裏からも横からも、ユーザーコメントもじっくり読んで、商品を検討して購入する人たちです。
これまでのように、マスコミの物量の勢いで販促しても乗ってこない難しい消費者です。

日本では「さとり世代」とも呼ばれ、所有よりレンタル、共有で済ます、上昇志向は薄く、バランスのよい生活を好み、人間関係もべったりするより緩く繋がっていたいという、どこか醒めた見方をする世代です。但し、何か買いたいと思うと、徹底的に得意のネット情報で調べ、納得したものを買いますが、価格についてはあまりうるさくありません。いいものなら高いのは当たり前と納得します。
そして良い買い物をしたとなるとスマホで仲間たちに情報拡散します。

アマゾンは、きっと既存のネット通販を利用する顧客の分析を精密に行い、3年先5年先の市場動向を見つめ、このミレニアルズに照準を定めたものと思います。
ホールフーズの重要な顧客層がミレニアルズであるという事実があります。2016年の調査で24%ものミレニアルズがホールフーズで買い物していたというものです。

ミレニアルズは、都会的なセンスをもった健康志向派です。体に害がある可能性の物を嫌います。

・成長ホルモンや抗生物質で飼育された食肉。

・動物虐待の可能性のある食肉

(ニワトリのブロイラーではない鶏の放し飼いがよい)

・殺虫剤、除草剤などの農薬や下水汚泥から作られた肥料で栽培された野菜。

・遺伝子組み換えの技術が使われた食品。

・生産過程で放射線などの有害なプロセスを経ている農産物。

この他、最近ではデオドラント関連商品の中のアルミ成分が乳がんの疑いがあるとしてNonアルミニウムの表示の製品を選んで購入しています。このように健康医療情報には、ダイレクトに反応します。またグローバルよりローカルという価値観もあり、地産地消の野菜果物が好きです。当然ビーガン(采食主義者)の中心的な世代です。チョコレートは、フェアトレードの背景をもち、カカオ成分の高いものを選びます。
以上のミレニアルズの志向をすべて店内で実現しているのがホールフーズです。

このところ、ホールフーズを追いかけている食品スーパーチェーンがあります。ロサンゼルス発祥のトレーダージョーズ(Trader Joe’s)で、グルメスーパーマーケットというコンセプトで売り出し、今やナチュラル・オーガニックの食品スーパーとして人気になっています。
ハリウッドのセレブも利用し、独特なデザインのトートバッグを下げて歩くのがカッコいいとして、そのバッグも飛ぶように売れているそうです。

ナチュラル・オーガニックのライフスタイルがカッコいいと云う訳です。
自社ブランドを多くして、ホールフーズよりいく分安めのプライス戦略が功を奏して成長しています。

最近、東京で目につくようになった食品スーパーチェーンカルディ(KALDI)は、このトレーダージョウズの雰囲気を持っています。
店内の装飾デザインとトートバッグがうまくコーディネートされていて、日本のミレニアルズに人気です。
品ぞろえは、普通のスーパーマーケットでは見かけない輸入品が中心です。価格は高めです。実際にカルディのお洒落なトートバッグを下げている女性をよく見かけるようになりました。

カルディのコンセプトは、「自分たちが住んでいる地球をこわしてどうするの?住みやすくしたいね、だから地球のためにいいことしよう。自然を大切にする環境を大切にする。そうして地球に住んでいるみんなが幸せになる」で、品揃えのコンセプトに反映しているようです。
今や374店、7300人の従業員を擁する規模になっています。
同じように、高級食料品店チェーンの成城石井も、安全安心を売り物にして、お洒落感を大事にして若い女性たちに人気になっています。

カルディも成城石井も、もっともっとナチュラル・オーガニックの色を濃くして営業を進めてゆけば、ミレニアルズの支持を得て、更に業績は伸びてゆくでしょう。

 

平成29年7月6日

 

日本オーガニックコットン流通機構

顧問 宮嵜道男(文責)