この9月に、毒性アミンに変るアゾ系色素の指定が 22物質から24物質に追加されたという繊研新聞の 記事が出て、流通関係者から不安の声が上がりました。Exif_JPEG_PICTURE
そこで「アゾ系色素」についてレポートします。

2012年(平成24年)3月30日に経済産業省から「繊維製品等の安全性の確保」という テーマで業界の代表として日本繊維産業連盟に協力要請を行いました。
この安全性の確保とは、特に毒性のある一部のアゾ系色素の自主規制でした。
アゾ染料は、種類が豊富で安価であるため、3000種以上使用されています。 現在、約6,000(登録カラーナンバー)ある色素のうち実に60~70%に当たります。 その内、毒性があるのは、極く少数です。
問題のアゾ色素で染色された衣類を着ると、色素が皮膚から体内に入り、体内の酵素分解作用によって 芳香族アミンに変化します。これは発がん物質と見られています。特に、幼児は服を舐めることがあり、絶対に避けなくてはなりません。
現在までに有害アミンの害で健康を害したという例はありませんが、科学的に毒性が明らかな ものは使わない方向で世界は動いています。
1994年にドイツは、世界に先駆けて毒性のあるアゾ染料の使用禁止を決めました。  1999年にオランダの国立研究所が、有害芳香族アミンに変化する一部のアゾ色素の存在を  発表し、これを受けてEUでは3年後の2002年に使用の禁止処置を行いました。
中国は2003年に韓国では2010年に禁止しています。国際保健機構WHOの国際がん研究機関でも、この物質を規制すべきと指摘しています。
2015年9月1日に、日本繊維産業連盟は、有害アゾ色素についての具体的なガイドラインを発表しました。従来、22物資が指定されていましたが、今回24物質に追加されました。
ガイドラインでは、「所定の試験法によるアゾ基の還元分解の結果、特定芳香族アミンそれぞれが、繊維製品から30μg/g(mg/Kg)を超えて検出されるアゾ色素(染料、顔料)は使用してはならない」とあります。
日本では政府、厚生労働省の政令として「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」があって、この度、有害アゾ色素が追加されることになりました。
施行は来年2016年4月1日から始まります。
衣料品などからこの有害アゾ化合物が検出されると、回収命令、立ち入り調査、罰金、懲役など厳しい法的な罰則が適用されますので、染色やプリントの際には十分注意が必要です。
NOCグリーンの規準では安全とされる染色を認めていますが、NOCグリーンのラベルの付いた 製品からこの有害アゾ色素が検出されるようなことは、絶対に避けなければなりません。
今後、認定審査の判定の際には、重要な要素にしてゆきます。
<ローインパクトダイ>
NOCグリーンで認めている染色は、ローインパクトダイです。         ローインパクトダイとは、「自然環境に対しても、人の健康に対しても害を最少に留める染色」という意味です。
具体的には、ローインパクトダイは、「重金属を含まない反応染料でベンゼン、ホルムアルデヒド有機塩素を使わない染色」となっています。      一般の染色ではもともとベンゼン、ホルムアルデヒド、有機塩素を使うことはありませんので重金属を含まない染料だけでカラーリングの選択をすることが出来るのか?ということになります。
結論は出来ますですが、一部、鮮明な青色が必要な場合は、銅を含んだフタロシアニン系染料が必要になりますが、これはGOTS認証の染料でも安全性が認められています。        (ダイスター社のコメント)                                                    重金属については、有害なものと無害なものがあり、適切な判断が必要になります。
<反応染料>
化学合成染料は1856年にイギリスでマラリア病の特効薬の開発中に、たまたま紫色の染料が出来て、それ以来、化学合成で染料ができるという可能性に掛けて化学者たちはしのぎを削りました。50年後の1900年の頃には500以上の染料が完成していたと云いますから、天然染料のコストが高く、安く大量に染めたいという衣料品市場の欲求が、余程強かったと思われます。
綿はセルロース繊維で、染まり難い難物でした。                1956年にやっと反応染料ができて簡便に染められるようになりました。染色の歴史の中では、 最も新しい技術です。
反応染料の優れた点は、媒染剤なしで、セルロース繊維素そのものと化学反応して強い結着力を示す「共有結合」することです。
その反応を補助する薬剤としては、比較的安全性の高いアルカリ剤の芒硝(硫酸ナトリウム)、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)を使います。
よく染まるということは、染色の効率がいいと云うことで、染料の量は少なく、水の使用も洗浄後の廃水の量も少なくて済むということになります。   処理温度も低くて済み、省エネ効果があります。
コットンのローンインパクトダイの考え方では、まずこの反応染料による染色法を取ります
<重金属は毒なのか?>
重金属とは、比重が4以上の金属元素で、金、白金、銅、水銀、鉛、鉄、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、カドミウム、ヒ素、ベリリウム等全部で38種類あります。         (比重4以下は軽金属と呼びます)
かつて、工場排水の汚染で起きた「イタイイタイ病」はカドミウム、「水俣病」は有機水銀で重大な障害の原因物質になりました。このように鉛、水銀、ヒ素、カドミウム、ニッケル、六価クロムは特に注意すべき有害重金属元素です。
一般に、ミネラルと聞くと身体にいいような気がしますが、ミネラルは鉱物で、多くが金属です。
中には重金属もあります。ヒトの体に必要なミネラルのうちクロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛は重金属です。この他、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、モリブデンが金属で、後は金属ではないリンとイオウ、塩素、ヨウ素、セレン等があります。
このように重金属は、単純に有害とは言えない訳です。用法と使用量の問題です。NOCコットン規準では草木染を認めています。例えば、鉄分は媒染剤として重要な役割を持っています。安全性に配慮して行っています。
染色に際しては、環境汚染と健康障害が決して起きないことを「最優先」にして、厳しい眼を向けて色の選択することが大事です。
*この度、染料メーカー各社に問い合わせしましたが、防衛的な対応が多かった中、最も協力的  な会社は、ダイスター社でした。安全性への認識も高く、情報の公開も寛容でした。この場を借りて協力頂いたお礼を申し上げたいと思います。染料を選ぶ際は、ダイスター社を推薦します。

平成27年11月13日

日本オーガニックコットン流通機構
宮嵜道男