中国は、経済を伸ばし、軍備を拡大し、領土、領海の拡大に熱心で、四方八方に加圧の行動をしています。

中国沿岸の海洋侵出では、南沙諸島でフィリピンと、沖縄尖閣列島では日本と摩擦を起こしています。

陸上の国境でも、中国軍はやはり膨張して、インド軍がこれに対抗し、重苦しい緊張状態が続いています。

そんな中、インド、ヒンドゥスタン・タイムズ紙の8月9日付の報道では、ちょっと心和む場面があったようです。

中国のパトロール隊がいつものようにインド側に侵入し、「中国の領土だ」と主張していたところをインドのパトロール隊が発見し、銃を構える一触即発の睨み合いとなりました。
しばらくして、中国側の兵士がバドワイザーのビールの缶、数本を差し出すと、インド側も手持ちの お菓子を渡し、最悪の事態は回避されました。

中国側の新華網もこのハプニングを8月11日の紙面で好意的に伝えました。

相対する軍人同士も、軍服を脱げば只のヒト同士ということを、微かにでも信じたいところです。

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生態学者・今西錦司(1902~1992年)は、生物の進化について「種の中では競争しなくても生きて進化してゆく」という画期的な棲み分け理論を打ち立てました。

一方、ダーウィンと云えば進化論ですが、それまでヨーロッパでは、この議論はキリスト教も絡んで紛々と行われてきました。

そしてダーウィンが、1859年「種の起源」を出版して、集大成した形になりました。

進化論は、世界の常識、生物界の常識で、「自然淘汰」、「弱肉強食」、「優勝劣敗」の理論一色で塗り固められて、疑問を挟む余地はありませんでした。

進化論は、白人優位・有色人種劣位、やがてナチズムにまで投影されて人々の価値観や社会の仕組みに影響してゆきました。

そんな中、今西博士は、昆虫や魚など多くの生物の生態を子細に見てゆくと必ずしも、弱肉強食ばかり ではなく、弱い「種」でも固有の環境の中で適応してうまく棲み分けしながら、進化してゆくという理論を提唱しました。

日本古来の「共存共栄」や「和の精神」を持った日本の学者らしい帰結でした。

世界に目をやると、昨日も今日も紛争や内戦で命を落とす人たちが沢山います。力には力で優位に立って、相手を潰すというやり方が相変わらず行われています。

人類も上手に棲み分けて、お互いを尊重するような方向に進化してほしいものです。

インド軍兵士と中国軍兵士の間に、一瞬でも、人間的な感情の交流があったこのニュースには希望があります。

宮嵜道男