「ジャケ買い」と云う言葉をご存じでしょうか?その昔、LP盤の音楽レコードを買う時、中身の音楽を聴くことができないので、ジャケットの絵柄から推察して買う事を云いました。

10枚に1枚、当たる程度の確率で、決して良い買い方とは云えません。

このところ本をネットで買う癖がついて、やはり失敗が続いています。本のタイトルが面白い、衝撃的、好奇心をくすぐられるなどから注文する「タイトル買い」です。

その中の一冊がこの文章のタイトルの本でした。

イギリスのテレビキャスターで、オーウェル賞というジャーナリストとして権威ある賞を受賞するくらいのコナー・ウッドマン氏の著書です。衝撃的なこのタイトルを見て飛びついてしまいました。原題は「UNFAIR TRADE」です。

身近に溢れる「人と地球にやさしい」は本当に世界を良くするのだろうか?

「このコーヒーで、アフリカの貧しい人を救えます」

「このアクセサリーで、恵まれない子供たちが学校に通えます」

信じてもいいのだろうか?世界一周の旅で出会った、誰も知らない驚きの真実。

等々と表紙に興味を惹く言葉が書き添えられています。

「フェアトレードなどと謳い、人道的、倫理的の仮面をつけて実は、生産者を苦しめている実態を暴く」というような勢いです。

読み始めて気付くことは、このウッドマン氏は、最初からフェアトレード、慈善行為を批判的な目で見ているということです。フェアトレードの実態を白紙の気持ちで取材して結論として「アンフェアトレード」のままだったというのなら納得できますが、この人は、最初から歪んだ否定的な視線で取材しています。

その為、改善途上でも、結論は意味がないとサラッと切り捨てています。

世界の貧困の原因は複雑で、政情の不安定、民族や宗教の違いからくる紛争、国際金融勢力がもたらす市場操作、不穏な気象条件などなどいくつもの条件が折り重なっていて、ウッドマン氏の云うような簡単な結論を出せないのが真実でしょう。

1990年台から欧米諸国で関心が向き、フェアトレードの認証商品が拡がって行き、イギリスでは、この分野の市場が、数%とはいえ見逃せない小売り市場規模になって来ています。

多くの消費財を扱う大手企業は、消費者の価値観の変化に重大な関心を寄せていて、ひとたび、生産者を苦しめている商品であると判ると、ブラック企業のレッテルが貼られ消費者イメージは失墜し、それまでに掛けてきた何百億円もの広告宣伝費が一夜にして霧散するリスクを認識しています。                                          このリスク管理の方策として、大手企業がしぶしぶでもエコロジーやフェアトレード改善策を進めています。ウッドマン氏はこれを見て単にマーケティングのメリットとして、保険としてやっていることで、本当にその地域の貧困をなくそうという崇高な動機はないと断じます。

この見識は、まともな大人のビジネスマンのものとは思えません。この本の全編にこの理想主義的、啓蒙主義的な高い位置からフェアトレードを批判しています。

この本の中に、実際にフェアトレードを謳いながら、不正を働く暴露の場面などというものは見当たりませんでした。

各国で行われているフェアトレードが本当に効果を現しているかどうかに疑問を持つのであれば、次善の策を示すべきだと思いますが、右も左もみんなクエスション・マークだと散らかして文章を打ち切っています。

但し、この本には、ウッドマン氏が、想像を絶する不快感と身の危険を冒して世界の隅々をレポートしているところには価値があります。

この本の原題通り、「UNFAIR TRADE」の実態を知るにはいい本です。

アフリカのコートジボワール共和国の綿花農場もレポートされていて、イギリスの農産物取引の巨大企業オラム社がこの綿花農業地域に大きな資金を投じて、結果として農民を助けている実態が報告されています。

オラム社の現地担当者の女性は、こともなげに言いました。「貧しくて飢えている農家を抱えていても、私たちにいいことは何もありません」

大手アパレル企業が、消費者のイメージダウンを怖れて、持続可能性の色合いのあるものに替えて行き、結果として地球環境に、人道的に正しい商品が主流になって行くことはいい事です。

そこに崇高な理念を求めて、偽善とか欺瞞とか言って非難することは幼稚だと思います。フェアトレード商品の市場が拡大しているのは、今日の消費者の高い社会意識の勝利です。

市場は、消費者の意識を映す鏡だとつくづく思いました。

平成25年10月7日                       日本オーガニックコットン流通機構

宮嵜道男