6月12日、児童労働反対世界デー

今年も児童労働ネットワークによる「児童労働の撲滅キャンペーン」が
行われました。
「ひとはたあげよう」というキャッチフレーズで、初めてネットを
活用して展開されました。

スローガンが印刷された小さい旗を自分の身の回りに置いて、思い思いの写真を撮り、集めて広く関心を呼ぶよう考案されました。そして同時に、賛同者同士の交流も目指しました。
結果は、テーマ写真が462枚、投稿者が151人、ひとはた上げた人2,212人,あがった旗が
1,882本でした。初めての取り組みとしては成果があったように思います。

数年前からNOCは、この運動に参加してきました。
世界の実態はなかなか明確に改善に向かう兆しがありません。
この問題は、世界の貧困、格差と直結していて、とても一朝一夕で解決することのない根の深さが
あります。
一方で有り余る資金の持って行き場に困っている国際金融機関があるかと思えば、アジア、アフリカや南米の国々では貧困が進んで、餓死する子供たちが後を絶ちません。お金の仕組みの欠陥とか不条理を 感じます

現在の日本には、親の借金を被って、学校へも行かず、長時間、重労働をしている子供は一人として
いません。しかし、日本の貧しい時代には当たり前のように子供は重要な労働力でした。
1968年に発表された山本茂実著のドキュメンタリー文学、「あゝ野麦峠」には13歳前後の少女の過酷な運命が描かれています。明治時代、富国強兵で輸出総額の3分の一を占める生糸は重要な国策産業でした。
年端もいかない少女たちを、低賃金で1日14時間も働かせ、病気になっても休ませず、辛くて逃げようにも、窓には堅牢な鉄柵に阻まれるという女工哀史です。
親兄弟のために飛騨から雪の山中を越えて信州の製糸工場に出稼ぎに行く小説のくだりは涙を誘います。
ただ、その少女たちが大人になって、当時の感想を聞くと「家で働くより楽だ」という言葉には驚かされます。当時の子供たちは、家でも相当厳しく働かされていたのだろうと想像できます。1983年のNHK連続テレビ小説「おしん」の平均視聴率52.6%という驚異的な人気ドラマでしたが、わずか7歳の少女が貧しさから親から離れ、雇い主のところに奉公に上がり、忍耐の日々を送るという話でした。これも児童労働です。
このように日本でも貧しい時代には児童労働は当たり前でした。
現在は13歳未満の就労は法律で禁じられています。
(映画や演劇などの子役などは条件付きで認められている)
児童労働の問題の難しいのは、以上のように家業を手伝う子供たちを児童労働の範疇に入れるかどうか曖昧になる点です。日本でも、病気の親を助けるために、学校へ行く前の早朝に新聞配達をする少年の話は、美談にこそなれ、咎める人はいませんでした。
ILOが、貧困国の農村を調査に行くと、親が子供を隠すと云ったことは頻繁にあり、正確な数字を   掴むことさえ難しいのが現状です。実際、児童労働の中で一番多いのは、家業と農業です。
農業プランテーションでは大半が児童労働で支えられています。
インドのコットン農場だけでも児童労働者が40万人もいると云われています。縫製工場、パン屋、  ホテル、レストラン、バス、列車、建設作業現場、ゴミ収集などあらゆる分野に及びます。
悲惨な例では、医療用メスなどの刃物の研磨の作業などで、金属粉を日常的に吸い込むので重篤な  呼吸器障害を起こす子供たちが後を絶ちません。雇用者は、子供は、従順で大人よりも賃金は少ないので有利さを感じています。病気が進行して子供が亡くなっても代わりはいくらでもいるので雇用者は一向に困りません。当然投資して環境を改善することはしません。便利な児童労働の味を占めると、大人の   雇用を減らすようになってゆきます。このように聞くと、どこまでも不幸が連鎖してゆく哀しい現実に 突き当たります。
ナイキ社のサッカーボールの発注先が児童労働者を使う工場だったことが公になり、轟々たる批判を受けて、急いで改善しイメージダウンを防いだことがあります。
大手企業は、何億円もの広告宣伝費を使いますが、このように悲惨な児童労働に関与したというだけで、企業イメージを落とし何億円分の広告効果を一瞬に消してしまう可能性を恐れるようになりました。
この意味で、「実態」を白日の下に晒すことの重要性が浮き上がります。

ILOが発足して第一回総会から、児童労動をなくすよう議論され、1999年の総会では、満場一致で
182号が採択されました。児童労働を禁じるILO国際条約138号、最悪の形態の児童労働を禁じた   182号があり、世界ははっきりと児童労働撲滅への意思を示しています。
2012年時点で、185加盟国中90か国が条約に批准しています。
182号は、「最悪の形態の児童労働」が規定されていて、
1.児童の売買や取引の禁止、
2・戦闘への使用を目的とした強制的、義務的徴兵禁止
3・強制、義務労働などを含むあらゆる形態の奴隷制度、または類似した慣習の禁止
4.売春、ポルノの製作、興行に関与させることの禁止
5.不正な薬物の生産や密売を目的とした児童の斡旋、供給の禁止
6.児童の健康、安全、道徳に害を及ぼすおそれがある業務の禁止
以上に違反すると刑事事件として処罰するとしています。
「最悪の形態の児童労働」の対象となる子供の数は、改善されたといっても、今この時に世界で
2億1500万人もの悲惨な状況に置かれている子供たちがいると聞かされると、絶望感に襲われます。
1ミリでも前進させるということから目を離さないことが大切です。
買い物の時にフェアトレードの背景のある商品を探して、できるだけ買うことから始めましょう。

平成25年9月2日          日本オーガニックコットン流通機構
宮嵜道男

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