「化学物質過敏症」を発症した患者さんが一時期、安心して過ごせる施設が必要だと云うことになり、10年程前にNPO法人化学物質過敏症支援センター(横浜)が資金を集めて
あいあい姫乃湯避難住宅を建設しました。

化学物質過敏症は、例えば家を新築して建材から発する化学物質が体内に入り、身体が防衛のために不快な症状として表れる病気です。
主な症状は、極度の頭痛、めまい、呼吸困難、身体の節々の傷みなどです。
新築ばかりでなく近隣の工場から流れてくる臭いに身体がアレルギー反応を起こすとか、
米どころの産地で、農薬を撒く時期になると体調が壊れると云ったことも起こります。
少しづつ溜まったコップの中の水がいよいよ溢れ出した状態です。
一旦溢れると、ごくわずかの水が加わっただけで溢れ出るようになります。
このようにしてある種の化学物質に過敏になり、苦しい症状として表れます。

こうなると、いま居る環境を変えなくてはなりません。
一番良いのは転地療養です。
空気のよい、水の清らかな地域で、
近所に畑がない、防虫剤散布の行われる
森がない、風がよく通り、陽当りのよい
土地を選び、化学処理されていない建材だけで建築された建物に住まなくては
なりません。
建物については、現代の建築の仕方は、
コストとの戦いで、効率化一辺倒の工法は、化学薬剤に頼っています。
接着剤、塗装剤、防虫剤等々大量に使います。
新築の家に入ると独特の臭いがしますが、それは化学物質が入り混じったカクテルの臭いです。
化学薬剤を使わない家を建てるためには、化学薬剤のない時代の工法に遡らなくてはなりません。
あいあい姫乃湯の建物は、化学薬剤を使わないという意味では、世界最高の品質でした。
今回訪問してみて、雨水を防ぐ塗装剤などが使われていないため、傷みがあちこちに見えました。天然の防腐剤の必要性を感じました。

この施設の場所は、伊豆の山の中で、伊豆縦貫道の修善寺インターチェンジから大見川に沿った国道12号を30分ほど走り、山道の59号線をしばらく行き、小高い山に向かってゆく
3メートル幅の細い道を登ってゆきます。
車はウンウンと唸りを上げて蛇行する道を登って行きました。
本当にこの道でいいのか心配になった頃、森の木陰の向こうに家が見え始めました。
傾斜地に小さい家が4軒あり、坂を登り切ったところに共同住宅がありました。
伊豆の空気は柔らかく、ワサビの産地で水もよく、傾斜地なので風通りがよく理想的な場所です。

小さい家の庭には、オーガニックコットンの生成り色の衣服が沢山干されていて、
「あゝ、このように使って頂いているんだ」と何かほっとした気分になりました。
車を降りて、一軒の家に声をかけると返事があり、「NOCの宮嵜です」と名乗ると、「ああ、あの宮嵜さん?」とにこやかに家から出てこられました。
いつも電話やメールで応対してきて、実際にお会いするのは初めてのお客さんでした。
オーガニックコットンの製品を沢山使って頂いています。
突然の訪問でしたが、快く迎えてくれて、オーガニックコットンの製品にどれだけ助けられたかをお話してくれました」
この方は、今年の8月に発症して、今まで当たり前に着ていた服に反応して着れなくなって、
バスタオルに包まって困っていたところ、オーガニックコットン製品を知りました。
買ってみたところ特に反応せず使えたので、本当に嬉しかったと感想を述べられました。
「どうしてオーガニックコットンの物は大丈夫なんでしょうね」と聞かれました。
逆に云うと一般に売られている衣料品にはどれだけ沢山の化学薬剤が使われているかということが分かりますね、とお答えしました。
NOCのオーガニックコットンの製品は、化学薬剤処理をせずに、自然の綿の状態を維持して、それでいて使いやすいように工夫を重ねて20年になりますので、この点で最も洗練された製品ということができます。
この方は、転地療養を始めて、体調が良くなり、昨日は、郵便局に出掛けたのに、全然反応が出なかったと云って、嬉しそうにされました。

あいあい姫乃湯は、一時経営難で封鎖する論議もされましたが、このところ施設を利用したいという差し迫った患者さんが増えて、しばらくは続ける事になったようです。

この度、化学物質からの避難施設を実際に見学してみて、患者さんたちが、快適に過ごして一日でも早く回復できるよう、オーガニックコットン製品でお役に立つことの重要性を感じました。

平成26年10月10日                日本オーガニックコットン流通機構
宮嵜道男