オーガニックコットンが1990年頃から認識され、エコロジー・ビジネスとして登場して新しい価値観を世界に植え付けました。また同時に従来のコットン産業で起きている問題が一般に広く知られるようになりました。それらは、「農薬まみれの綿畑」、「過剰な化学的加工処理」、「綿花栽培農民の過酷な労働環境」、「冷徹な経済優先が生み出す貧困」などです。

2000年頃からエコロジーへの関心が広がり、一般の綿産業の業界としても放っておけない状況が現れ始めました。

そこでアメリカでは総合病害虫防除管理IPM(Integrated Pest Management)や生物学的綿花栽培システムBASIC(Biological Agriculture System in Cotton)などの農薬削減の計画が本格的に進められました。

また一方、2005年から2006年にかけて、ヨーロッパ中心(スイス)にBetter Cotton Initiative(BCI・より良いコットンを主導という意)という組織ができ、より良い綿産業をめざすとしています。

オーガニックコットンが「ベストな選択」に対して、「ベターな選択」の正当性を広めようという
動きです。

Better Cotton Initiative BCIホームページより抜粋
参加企業・団体は、
アディダス・ギャップ・H&M・イケア・TE(OE・オーガニックエクスチェンジ)・オックスファーム・WWF・PAN(UK)・ICCO・IFAP・IFC などです。

当初の運営資金は、以下の組織が負担していました。
SIDA Swedish International Development Agency
SECO State Secretariat for Economic Affairs of the Swiss Confederation
ICCO Interchurch Organization for Development Co-operation
現在は、会員の会費WWF(スウェーデン)の資金で運営されています。

目的
コットンは世界3500万haで栽培されている。世界の耕作面積の2.5%に当たる。
世界80か国で栽培され、その90%は2ha以下の小作農業で貧困に苦しむ。
世界で3億人の人々が、綿産業に係わっている。
(International Cotton Advisory Committee発表より)
・コットン産業は、これほどの世界的な規模であり、問題があれば改善しなくてはならない。
・綿花栽培に於いてエコロジー面や社会面の問題を改善し、持続可能な生産に切り換えてゆく。
・BCIのメンバーはコットン販売の世界的企業の集まりであり、主流の企業が取り組むことに
意義がある。
(オーガニックコットン業界は規模が小さく、世界的に見て改善の効果が現れにくい)

運用
BCIとしてラベルを付けることはないが、消費者に改善の事実を立証できる認定方式は確立するとしている。(書類の審査、インタビュー、必要に応じて現地調査)
BCI関与国として綿作の地域を設定している。
ブラジル、西、中央アフリカ諸国、インド、パキスタン2007年からスタートし、2015年までにBCI関連のコットンを100万トン生産の規模に拡大することを計画している。
※BCIが事前に調査した結果のコメントを出しています。

<インド>
・BTコットン(遺伝子組み換え綿)はほとんどの畑ですでに使われていて、農民は高額な種のために、借金をしてまでも利用している。
・BTコットンの利用によって、殺虫剤の使用は80%も減少し、農民の農薬による病害も減っているので定着したと見られる。
<パキスタン>
・Pakistan Cotton Ginners Association(PCGA)によると、2009年の収穫量は前年の微増を期待していたが、20%減という結果になった。
・原因は抗菌剤処理をしなかったためにCLCVというウイルスが発生してコットンの葉が丸まってしまって害になった。
<ブラジル>
・WHOが最も毒性の強い農薬と指定されているALDICARBであるが害虫対策に欠かせず使われ続けている。

※以上遺伝子組み換え農産物や農薬の使用に対して肯定的なコメントをしている。

1997年~1998年はコットン農民の自殺が多いという最悪の時期だったが今は、その悲劇はない。

※既に問題は少なくなっていることを印象付けようとするコメントをしている。

参考:BCIについての総合的なコメントがあります。
<エスティーブ氏の見解>

ブラジルの世界的な綿花の商社・Ecom Agroindustrial Group,の最高責任者のエスティーブ氏(Antonio Esteve)は、BCIについて以下のように語っています。(2010年3月)

今までのところ、BCIは、コットン生産のマイナス面(エコロジーやフェアトレードへの配慮に欠けている)の言い訳をしているように見えるが、将来はオーガニックコットンの運動に代わって、現実的な後継者になりうるだろう。
私がブログやツイッターでオーガニックコットンを批判してきたように、オーガニックコットンは、生産に於いて厳しい基準があり、認証を取ることも難しく、生産効率は下がり、価格は高くなる。
結局、オーガニックコットンは長年運動をしてきたが、今だに世界のコットン生産のせいぜい0.8%に止まっている。(影響力がない)
ほとんどの生産者も消費者も、出来るだけわずかなマイナス面に止めて、今までどおりのコットン製品を流通して欲しいと思っているに違いない。
正にBCIの存在意義そのものである。
BCIは「認証の仕組み」を持っているわけではないので、衣料品を買って、下げ札に“BCIコットン100%”というような表示を見ることはないだろう。
それでもこの仕組みには、今までよりも農薬の量を減らし、水の使用量を減らす規定が含まれていてメンバー企業が誠実に守ってゆく。
オーガニックコットンとは異なり、一定のレベルを維持するという事ではなく、オーガニックの考え方を参考にしながら、信頼に応えられるよう努力してゆくという事だ。

関連記事: IPM・BASICについてはコチラをご参照下さい。

日本オーガニックコットン流通機構 理事長 宮嵜 道男