Textile Exchange Farm & Fiber Report 2011-2012

2011年のTEオーガニックコットンの市場レポートに引き続き、2011年-2012年オーガニックコットン農業と繊維生産の報告書が5月22日に発表されました。二つのレポートは、重複部分があり、なるべく省いて整理しました。まずは、いつものように、会長のラ・リーア・ペパーさんの巻頭言から紹介します。

前に向かって

伝統、改革、科学、いずれも元気を取り戻す牽引力

レポートにはビックリすることも、いいニュースも、これからの方向性も網羅されています。

生産量については。オーガニックコットンの関係者の皆さんの目覚ましい挑戦があって、かつてTEのレポートで予想した数字を超えた元気回復ぶりを見ることができます。

オーガニックコットンの生産量は、全体的には堅調だったということができます。特にタンザニアやニカラグアの成長ぶりには 目を見張るものがありました。

ただ残念なことにシリアは、これまでインドに次ぐ主要な生産国でしたが、アサド政権が内戦状態に陥り、オーガニックコットンの生産が不明になりました。北東地域のアレッポの農民は逃げてしまったようです。私たちは、オーガニックコットンの産地を考えるときは、零細な農業者の実情に思いを馳せています。そしてこのエコロジカルな農法を続けてもらえることに敬意を払わなければならないと考えています。

このレポートでは、一つの重要な変化が述べられています。それは、GMOではない種を安定的に供給できることの必要性が唱えられています。 具体的に、農家と関連の研究機関が協力して有効な種の改良に力を注いでいます。

研究機関は、FiBL , Louis Bolk Institute , AgriLife Texas , Helvetasなどです。

また、もう一つは、オーガニックコットンの未来に投資してくれる先を探すことです。

昨年TEは、3000の生産者を調査しました。16か国の132,000の農家から抽出しました。共通していたことは、オーガニックコットンが将来に向けて自然を傷めないという大きなメリットがあり、安定的に発展させなくてはならないし、そのスピードは、赤ちゃんの歩みから巨人の大きな歩みに加速してゆかなくてはならないとしています。

バングラディッシュの繊維工場の倒壊事件のような悲劇が、我々繊維業界に横たわっていて、これらの点にもこのレポートは触れ、過去と未来の中で私たちの現在の立ち位置と方向性をしめしています。

オーガニックコットンの明るい未来に向けて皆で協力して歩調を早めてゆきましょう。

La Rhea Pepper (Managing Director Textile Exchange)

*この他、役員の方々のコメントを要約しました。

Elayne Masterson

・  オーガニックコットンは、沢山あるサステナブル関連の繊維の中で、灯台の光のように、

大事な目印になっている。

・  オーガニックコットン生産量の減少は、シリアの内戦とアメリカの干ばつによるところが

大きかった。

・  GMOの種ではない種の品質の強化の必要性に気付き始めた。

・  次の10年はオーガニックコットンの需要に応えて生産量は上向く。

・  このところの生産量減産に反発の兆しも見える。

Lord Peter Melchett

・  有機栽培は1930年代に行われていたが、化学農薬を使う新しい農法の勢いの前に

霞んでしまった。

・  世界大戦で、窒素が盛んに爆弾に使われ、戦後その窒素が化学肥料に

転換していった。

・  同時に 殺虫剤、除草剤が開発された。

・  有機農法は、正に太陽エネルギーの活用の農法で、永続的に環境を壊さず行える。

・  昨年、Soil AssociationとGOTSは消費者に向けてオーガニックキャンペーンを始めた。

その名も「Have you cottoned on yet? もうお気付きですよね?」

NGOや大,小メーカーなどからも良い反応が出ている。

・  このキャンペーンで次の事をアピールした。オーガニックコットンは、色んな農法の中で、

最高位のGOLDである。

・  Soil  Associationの認証ライセンスの使用料が10%増加した。

・  今回のレポートを読んで、インドが、生産量減少から回復基調になってきたことを知って嬉しい。

・  有機栽培の歩みは実は80年にもなり、オーガニックマーケットはまだまだ本格的にはなっていない。

我が子そして孫と子々孫々の安全のために、どこかで何か大きなきっかけで,もう一段、市場が拡大することを願っている。

 

レポートの概要

オーガニックは未来の地球の安全標識だ。オーガニック農業は、大規模な農場より零細農家に向いている。そしてすべての農法の中でエコロジーと云う面から見ると最良の方法であり、フェアトレードなど社会的な善である「エシカル」という要素もあり、価値基準のベストの位置を占めている。

このレポートでは、環境汚染、地球温暖化など気候変動の問題や農業者の貧困問題の改善に対してオーガニック農業の可能性が述べられている

IFOAM(国際有機農業連盟)の規定の中にオーガニック農産物として認定する条件として次のような規定文が見られる。

「オーガニック農業は土壌が健全活性していて、生態系、生物多様性、人間に対しても最良の状態を維持する農法である。そして、人工合成的な物質を使わず、それぞれの地域の特性を生かした農業サイクルを作る。伝統と科学を融合させて、すべての命にとって良い結果をもたらす農法である。」

ビジネスモデル

TEではオーガニックコットンのビジネスが繁栄するようにCollaborative Learning Seriesという専門研究会をもった。サステナブルの専門家20人の協力体制を作った。今後も魅力あるビジネスモデルを作ってゆくことの重要性を認識している。

非GMOの良質の種の必要性

サステナブル農法の中で、フェアトレード・コットンとアフリカ産コットン推進運動の農業者たちは、GMOではない種を使うことにしている。

農業者と関連機関が協力して研究している。

研究機関は、Cotton Connect、FiBL 、Louis Bok Institute,AgriLife Texis, HELVETASなどである。

一方、農薬会社のGMOコットンの種の販売促進は、インド、中国、ブルキナファッソ、ブラジル、タンザニア、ニカラグア、パラグアイなどで激しく行われているという現状もある。

オーガニック推進者たちの反発力

色々な難問があって生産量が減少傾向にあるとしても、結果的には予想を超える生産量が確保された。

・  アメリカは、36%も栽培面積を広げたのに、3分の2の地域で干ばつに襲われ45%の生産減に見舞われた。(繊維量、2,893mtが1,580mtになった)

・  アフリカは103%の伸長をみた。特にタンザニアの昨年比153%増は,有難い雨がいい時期にたっぷりと降ったのが恵みだった。(2,723mt→6,891mt)

・  トルコは、耕作面積を広げて64%増産できた。(9,613mt→15,802mt)

・  ニカラグアは、他の国と比べると一段小規模であるが、CAPROEXNICという推進組織が奮闘して190%伸ばした。(42mt→122mt)

・  インドは、世界のオーガニックコットン生産量の70%を占める超大国である。

インドの生産量の増減が、そのまま世界の生産量の増減を表す規模である。

昨シーズンの落ち込みは大きくオーガニックコットンの歴史始まって以来,初めての前年割れをきたしてしまった。それでもその後よく踏みとどまって今シーズン1%伸ばした結果となった。(102,452mt→103,004mt)

・  シリアはずっとインドに次ぐオーガニックコットン生産大国だった。ところが先のチュニジアのジャスミン革命などに触発されて2011年1月にアサド政権打倒の革命を目指す反政府軍が蜂起して内戦状態になった。すでに7万から8万人の犠牲者が出ている。昨シーズン16,000mtを成し遂げ、そのまま行けば世界の生産量は155,000mtに達していたはずである。

このような状況下で、認証作業はできるはずもなく、今回のこのレポートでは、残念ながらゼロと云う判断になった。早期の紛争解決を切に願うものである。

オーガニックコットンの特徴的数値

・繊維生産量                    138,813トン

・昨シーズンとの比較                 8%減

・世界の生産量にインドが占める割合          74%

・生産国                          18か国

・昨シーズンから増産させた国の比率                 50%

・ニカラグアの驚異的な増産                        190%増

・タンザニアの増産                                   153%増

・アフリカの生産量のタンザニアが占める割合          77%

・オーガニックコットン耕作地面積                316,907ha

・オーガニックコットン農家の数                   214,905

・アフリカのオーガニック農家の女性が占める割合     29%

・中国のオーガニックコットン農家の女性が占める割合  54%

 

世界のオーガニックコットン繊維の国別生産量

国名 繊維生産量 mt 全体に占める割合 %
1 インド 103,003.52 74.20
2 トルコ 15,802.00 11.38
3 中国 8,105.53 5.84
4 タンザニア 6,890.90 4.96
5 アメリカ 1,580.00 1.14
6 マリ 860.00 0.62
7 ペルー 478.50 0.34
8 ウガンダ 455.70 0.33
9 エジプト 420.00 0.30
10 ブルキナファッソ 370.00 0.27
11 ベニン 328.00 0.24
12 キルギスタン 156.00 0.11
13 ニカラグア 122.00 0.09
14 パラグアイ 100.00 0.07
15 イスラエル 70.00 0.05
16 ブラジル 37.79 0.03
17 セネガル 17.13 0.01
18 タジキスタン 16.00 0.01
Total 138,813.30

2012-2013年の生産量予測

多少数値的には、減少があるかもわからないが、大方は変わりなく維持できるものと思われる。アメリカや南米の気候の行方とシリア情勢によって数値は動くものと予想されている。136,000mtくらいに落ち着くだろう。

前進したこと

香港大会で円卓会議が行われた。農業関係者、メーカー、小売り販売関係者など90人が一堂にして議論され一致団結した。成長のためのビジネスモデルについて合意された内容

・オーガニックビジネスに積極的に投資を呼び込む。

・廃棄に関して、コットン製品のライフサイクルを研究する。

・非GMOコットンの種の改良。

*今年の11月にはイスタンブールで2回目の円卓会議が開催される。

参加して知恵を出し合いたいとしている。

一般綿の概況

2011-2012年は在庫も生産量も記録的な上昇を見せた。2009-2010年に綿の不足があってその不安を取り戻すべく、努力した結果の上昇だった。

*綿が高騰して農業者にとって作付けのメリットがあるとの判断が働いた。

繊維総生産量2、710万トンで、前年より6.4%の増産だった。世界同時不況の影響で綿の消費は10.7%減退したため、在庫は30%上昇した。結果的に、綿の価格は下落してポンド当たり99.8セント(219円/kg、100円/$)になった。但し、この価格は、10年来の平均価格からは、まだ60セント高めで推移している。

GMOコットンは世界のコットン耕作面積3、552万ha(ISAAA調査)の69%に広がっている。TEのレポートでは、2010-2011年にほぼ50%と報告している。

中国、インド、アメリカ、パキスタンは、GMOの種の使用率の高い国である。インドでは、GMO種の綿の収量の減少が見られた。GMOの有益性と有害性が二分して、コットンでは有益性が、食品では有害性が。議論されている。

世界の一般綿の繊維生産量の国別割合

中国                26.7%

インド              22.2%

アメリカ            12.5%

パキスタン            8.5%

ブラジル              7.0%

オーストラリア        4.4%

ウズベキスタン        3.4%

トルコ                 2.8%

灌漑水の使用量

今世紀は地球的に水の不足の問題が起きてくるという予測があるが、真水の使用量を

大ざっぱに示す。

灌漑に使っているのが全体の70%

産業用が20%

家庭用が10%

(UN water)

 

*世界の綿畑の53%が灌漑による栽培を行っている。(ITC)

*TEの調査によると75~80%のオーガニック農業は天水(雨水)を利用している。

農薬使用量は減っているか?

コットン栽培において農薬の使用量は減っているのか?

事実はNOで減っていないという現実がある。

綿花畑で使われる殺虫剤は、相変わらず世界の全消費量の15.7%を占めている。(ICAC発表)

この中には毒性の強いものもある。

Organochlorine有機塩素化合物やEndosulfan有機イオウ化合物に代わって

Carbamateイソシアネート、ウレタンとかOrganophoshate有機リン酸塩が使われている。

GMOの綿が新たに抵抗力をつけた害虫によって、被害が出てきて有効性が疑われてきた。(Pest Management Science)

更に、GMOを使って行われるRoundup Readyは、抵抗性を高めた雑草が出現して効力を

失っている。

結局、Glyphosateと新たな除草剤を加えて散布される結果となってしまった。

これらの農薬の大量使用は、ミツバチのCCD(絶滅)につながる。特にネオニコチノイド系の農薬は最も害を及ぼすことが知られる。

現在食用植物の3分の1はミツバチの媒介で成り立っているので大問題である。(PANNA)

* アインシュタインは、不気味な予言をしている。

「ミツバチが絶滅したら人類は4年で滅ぶ」

世界の農薬(殺虫剤)の売り上げ推移1999~2009年

1999年    300億ドル

2000     292

2001     267

2002     251

2003     267

2004     307

2005     311

2006     304

2007     333

2008     404

*以上の10年間で100億ドルの売り上げ増をしている。

地球温暖化CO2問題

IPCCによると農業が地球温暖化に影響しているのは10~12%である。

一般の綿は、4,017kgCO2Eg・/haの排出量

オーガニック綿は 150kgCO2Eg・/haの排出量

CO2排出量の比較

化学肥料の生産              38%

家畜の腸内発酵による発散    32%

バイオガスの火力利用        12%

水稲                        11%

堆肥                          7%

コメンタリー --------------------------

膨大な手間と時間を掛けたこのレポートに敬意と感謝を申し上げます。

 さて、このレポートを読んで見ると、オーガニックコットンの歩みが、ひ弱で遅々として進まない赤ちゃんの歩みのように見えます。

オーガニックコットンの手続きは、面倒でコストが掛かるため、ベターな選択という安きに流れようとする大手のアパレルの意図が見えます。

農薬の使用量も減らず、GMOの種も拡大基調です。未来の世代の安全を考えたら、決して進める方向ではありません。

 昨日今日のビジネスの成功、目先の利益のために進んでいるのが現状です。この方向を修正するには、消費者が賢くなることに掛かっています。

 オーガニック農業において、最も忌避すべきことは、遺伝子組み換えの技術です。

 この技術は貪欲なビジネスに裏打ちされて、特許による独占と訴訟という、およそ、人類の命の元の食糧生産にそぐわない技術です。

 福島原発事故の例を引くまでもなく、原子力技術と云うのは、結局人知が遥かに及ばない、人類滅亡につながる、決して手を出してはならない技術です。同じように遺伝子組み換え技術も神の領域を侵すものであり、生命体そのものが変異してゆく可能性があり、同じように人類滅亡につながります。

オーガニックの真髄は、「大自然が与えてくれる産物をそのまま利用し、使用後、戻しても地球環境を傷めない」ということで、子々孫々、永続できる正に未来的な先進農業です。

 掛け買いのない地球を何よりも優先するということは、人類が唯一、生き永らえる方法と気付かなくてはなりません。

 平成25年5月28日                               宮嵜道男(抄訳)

                                日本オーガニックコットン流通機構