いよいよ種子の法律に手を付けるEU

欧州連合EUのロビー活動監視組織(Corporate Europe Observator 公益法人)から農産物の種子の法律について6月5日に報告がありました。これは、EU始まって以来のことで注目されています。

種子は、全人類の農産物の大本をなしています。

巨大化した種子会社の市場独占を抑えるための施策が練られました。すでに現在、市場規模も国際的な影響力も過大になったという認識で、どのように規制できるかの検討が2008年から行われてきました。現状の種子に関する法律が複雑過ぎたため、「簡素化、明確化」して対抗しようというものです。

EUは、5月6日に「農産物の生産と市場」に関して欧州議会と欧州理事会で議論が交わされました。結局、12分野の条例を統合して一つにまとめました。

種子の国際市場規模は、巨大で68億ユーロ(8840億円)にもなり、更に年々拡大しています。世界の種子の市場は、売上規模トップ10の企業によって64%が占められ、更にトップ4社が58%を占めるという寡占振りです。これまで、産業化した大規模な種子会社は、在来の受粉農家や種の選別施設などエコロジカルな方法で生産する小規模な種子会社を「特許」という武器で支配してきました。ただ、その支配の仕方は、巧妙でその種子が、「明確で、均質で、安定しているか」のEUの基準に合っていて、あくまでも合法的な範囲で行われ、これまで問題として浮かび上がってきませんでした。

これらの多様性を持つ在来型の農業者は、大手の種子企業の勢いの片隅に押しやられてきました。ヨーロッパの市民社会が成熟してエコロジーに目覚め、遺伝子組み換え農産物を嫌い、地域に根差した在来型の農産物の需要が増えて、弱小な農業者たちに光が当たり、種子の再開発が始まりました。

この需要が伸びてゆくと、在来の種子市場が息を吹き返し、不当に吊り上げられてきた高額な種子市場の価格は正常に戻ってゆくことでしょう。ただし、巨大企業の反撃は、激しいものになることは必至です。

「記録のない生物は、存在しない」

種子の独占問題は、生物多様性の維持と反するため、この生物多様性が、争点になります。大手種子企業のロビー組織は、生物多様性に対して、「記録のない生物は存在しない」という極端な主張で攻めます。「生物多様性」の定義を限定的に狭く解釈しようと運動しています。2012年にヨーロッパ裁判所で出た判決があります。フランスの種子保存の組織のKOKOPELLIと種子会社BAUMAUX社の間で訴訟となりました。EUの種子の市場の規制の正当性について争われ、BAUMAUX側のロビー活動組織が、負けて、生物多様性をよく理解すべしと申し渡しました。

以上のように、EUは、はっきりと種子に関して、遺伝子組み換え種子の問題、市場独占の問題などに ”NO”の意思表示をしています。残念ながら、我が日本の政府は、アメリカの意向に従って、ほとんど無批判に遺伝子組み換え種子を受け入れ、新しい農業の技術として推進する立場を取っています。いくつもの高価なカタログを作り、国民を誘導しています。

TPPの行方次第では、更に遺伝子組み換え種子やこれに付随した農薬が大量に使われる事になります。最近では、EUでネオニコチノイド系の農薬を限定的ですが使用中止を決めています。

ネオニコチノイド系農薬は、7割の農作物の受粉を担っている「ミツバチ」の絶滅に係っている可能性が高いという重大な問題をはらんでいます。

ところが、我が国政府は、一切規制する姿勢を見せていません。農薬を使っている農家の人は、この農薬が使えないと、米は作れないと主張しています。

ミツバチが受けている農薬のダメージは、「神経が狂う」という症状です。ミツバチが狂うのであれば、ヒトの神経も狂う可能性は十分あります。農家の人たちは真っ先にその被害に遭う人たちなのに、目の前の収入に目が眩んで、思い至らないのです。

我々の健康問題でもあり、皆でこの問題に、関心を持ち、”NO”という意思表示を示してゆくことが大事です。

 それにしてもEUの意思決定が羨ましい限りです。

*Corporate Europe Observatorホームページ6月5日(2013)              ”Closing  in on our seeds”の記事を参考にしました。

平成25年9月12日                    日本オーガニックコットン流通機構

宮嵜道男

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