インドbi0Reツアー報告書

NOCのメンバーのビオリ・  プロジェクトの視察ツアーが行われました。

<ツアー日程>

平成24年 10月7日(日)出発~             10月13日(土) 帰国

<参加者>                         左から

㈲マザーズ 石塚隆さん

日本オーガニックコットン流通機構 宮嵜道男

㈱前田源商店 前田富男さん

㈲カワグチ企画 川口圭さん

㈱クジライ 鯨井智広さん

 

 

 

 

 

 

 

<視察地>

ビオリ・プロジェクトは、リーメイ社が1995年にわずか15エーカーの土地で数人の農民で始めた事業。現在は、6000の農家が参加している。  この地域は、インド中部、マディア・プラディッシュ州、ナルマダ川流域のマール盆地に位置している。

 

 

 

 

<ビオリプロジェクトの概要>

背景

綿花は、乾燥して痩せた土地でも栽培でき、貧困農村の重要な換金作物である。 インドの綿花の耕作面積は、950万haで、既に90% がGMO(遺伝子組み換え)の種が席巻している。

インドの種子産業の市場は640億円でそのうち、80%は欧米の多国籍企業の種子で独占されてしまっている。

 

 

写真:ビオリプロジェクトのリーダー・ラジブさんの熱心な説明を聴きました。

50年前にアメリカ種のアップランド種子・ヒルスツム種(hirsutums、)が導入され、在来種の種子が、ほとんどこの種子に置き換えられてしまった。

繊維が細く長く品質が良いという利点に対して、ヒルスツム種は水分が大量に必要で灌漑が要る。

化学肥料、農薬を多く使うという面があり、農薬の会社にとってはビジネスチャンスがある品種といえる。

 

これに対して、ビオリ・プロジェクトは、オーガニックコットンを栽培して、化学肥料や農薬の経費をなくし、プレミアムコットンとしての有利な価格で取引することで農民の所得を向上させ、貧困を救うことを目的にしている。

 

<視察のポイント>

 

綿花の収穫は例年10月から11月の   2ヶ月間に行われるので、10月のはじめに日程を設定した。

綿花の収穫の最盛期を狙ったが、今年は雨の時期が長引き、そのため収穫時期が2週間ほど遅れた。残念ながら、本格的な収穫の様子を見ることは叶わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回、ビオリ・プロジェクトの視察において、プロジェクト・リーダーのラジブ氏が強調していた点は、綿花の品種の開発の重要性であった。

ラジブ氏の問題意識には、有機農法が化学肥料、農薬を多用する慣行農法に質、量ともに劣るという「常識」を覆すことにある。

また、GMOコットンが席巻してしまって、在来の種子が絶滅する危機があり、これに対抗するため、適材適所の種子の開発が急務になっている点である。スイスの研究機関やインド国内の大学研究機関の支援を得て、試験農場で着々と研究が 進められている。                                                                                                                             種子については、GMOではない種子の入手が難しくなってきている現状を前にして、公的な種子のブリーダー(育種機関)から種を供給してもらうなどしているが、ゆくゆくはビオリ・   プロジェクトがブリーダーとしての機能を持つことも計画されている。

ビオリ・インドのそれぞれの農場に最も適した品種として、害虫に強く、品質の高い在来種の交配種子を開発し、品種の特定をしている。

痩せた乾燥した土地では、アレボリウム種(arboreums)やヘルベセウム種( herbaceums)の方が有機栽培には向いていることが判ってきている。

インドのモンスーン(季節風)に影響されるので、適応力のある強い形質が有利になる。

<視察内容>                       

農場

・   コットンの品種改良の実験農場

 

 

 

・   慣行農法、オーガニック農法、バイオダイナミック農法の栽培の比較を目的とした農場    ・ 堆肥つくりの現場を視察マメ科植物、作物の残渣、牛の糞を使って堆肥をつくる。

・多種なマメ科植物を育て根粒菌を増やす。マメ科は、大気中の窒素を固定して肥料になる

・ 緑肥(Gliricidia)

アルファルファ(うまごやし) レンゲソウ、ルピナス、クローバー、えん麦、ライ麦、トウモロコシ、マリーゴールド

・植物を収穫せずそのまま耕して肥やしにする。土壌中の有機物が増えて、土壌中微生物が良く働く。

・土地の構造が良くなり、水はけがよく保水力が増す。

・土壌中の微生物のバランスがよくなると病害虫を抑制する。

・  ミミズの飼育研究を視察。

 

 

 

写真:ミミズが土中の有機物を食べ糞をすると植物は肥料成分を吸収しやすくなる。また粒状の糞は、通気性を良くする。

 ・  害虫対策トップテンとされる防虫効果のある植物成分 ガーリック、 オニオン、チリペッパー、ニームなどを適宜、組み合わせて使う。

・ 多品種の作物を育てる方が農地にとってよい。

地上の生態系を多様化すると、その他の作物の害虫が寄って来て捕食関係を作る。

・ 植物をマルチ(植物を畑に敷きこむ)する。最適な土壌温度を維持できる。土壌の水分蒸発を防げる。

・  GMO、BTコットンを排除するための検査を見学。

写真:成育したコットンの種や葉を擦り潰して試薬に反応させて検知します。

エリサ試験 :土壌菌のたんぱく質があるかどうかを調べる。BT遺伝子があると試験紙に線が二つ出る。

<ハイブリッド ・ F-1 種の研究>

 現状は、品質の安定したF‐1の種を、専門のブリーダー(育種)から買い入れているが、将来は、ビオリで独自に育種できるよう研究が進められている。スイスの農業研究所FiBLやインドの大学が協力している。

 

 

 

自家受粉するのを止めて、品種の違う雄しべを接触させ花粉を雌しべにつけるハイブリッドの作業をしている。

ハイブリッドとは、例えば、「品質が良い品種の   雌しべ」と「病気に強い品種の雄しべ」を掛け合わせて、種を取り栽培すると、一世代だけ「品質が良くて、病気に強い」優位の形質が安定して得られる。

農家にとっては、安心して栽培し、有利な収穫を望める。

ところが二世代以降は、この安定が乱れるため引き続きの使用にはリスクがあり、実質的に使えない。

そこで、毎年その種を買わざるを得なくなり、農家の経費負担になる。

ビオリ・プロジェクトでは、農民のこの負担を軽くするためこの研究を進めている。

<トレーニングセンター>

 

写真:歓迎の意を示すウエルカム・ボードを飾り迎えてくれました。

 

・  施設内を見学した。どこも清潔に整備されていた。     

近所の若者向けにパソコンを教え、自由に使わせる施設などがあった。地域コミュニティの発展に寄与している。

 

・  2010年からTracenetの仕組みを使って、 農地のGPSでマークして必要な情報から認知するシステムができている。              

 

 

・  農村の女性の経済的な自立を目的とした織物生産の技術指導の現場を視察。                     

 

 

 

 

 

<綿繰り工場見学>

綿から種子を分離する工場を見学した。収穫が遅れていたため、工場は稼動していなかったが機械を動かして、綿繰り(ginningジニング)の実際の作業を見せてくれた。

<農家の視察>   

オーガニックコットンの農家の家を訪問した。

バイオガスの活用の様子を見学。

 

 

 

 

 

 

牛の糞や植物の残渣を発酵させてメタンガスを取り、調理用ガスとして使っていた。

子弟の学校視察

㈱パノコトレーディングの寄付で建設され、運営されているカスラワッドの学校を視察した。生徒たちと楽しく交流。

一般の学校とビオリの学校の両方を見ることができた。    ビオリの学校は、生徒たちの様子からしっかりと運営がされていることが感じられた。

<移動病院>  

農場の近くの街の広場にビオリの大型バスが駐車していて、近隣の人たちへの医療サービスをしている様子を見学した。                          男性と女性の医者がいて、患者を男女別に分けて診察していた。宗教的な理由からと説明を聞いた。

 

 

 

     <牛の活躍>

 

インドの農村では、 石油を使うトラクターは見かけなかった。牛が運搬にも、耕作にも大活躍していた。

 

 

 

 

当然のこと、牛は平気で道路をふさぎ車はしばしば、急ブレーキをかけて停まった。

 

ガンジーの肖像は学校にも普通の家にも事務所にもあちこちに掲げられている。

<ガンジーの墓苑>

ガンジーはインドの人々にとって国の誇りということが判る。

 

 

 

 

 

宮 嵜 道 男

 

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