ネガティブリストとポジティブリスト[コラム 2019 No.23]

ネガティブリストとポジティブリスト

何か規制や規定を作るときに、

ネガティブリストでゆくかポジティブリストでゆくか二通りあります。

例えば、あるイベント会場には基本的に誰でも入れるが、黒い服を着た人は入場が出来ないというのはネガティブリストの考え方になります。

また同じように、ある式典会場に入ることが出来るのは黒い服を着た人だけというのは、ポジティブリストの考え方です。

ネガティブリストの方は、規制するもののリストを示して、それ以外はすべて認めるというものです。(禁止条件の列挙)

ポジティブリストの方は、基本は規制するが、リストしたものは認めるというものです。(許可条件の列挙)

逆に考えると、ポジティブリストにないものは、すべて規制の対象ということです。

スポーツのルールは、やってはいけないことをリストにしているのでネガティブリストの考え方で、ルールのリストになければ何をやっても構わないわけです。違反ぎりぎりのところで有利に運ぶことが選手のテクニックになったりします。

オリンピックに向けて、スポーツの世界では筋肉増強剤や興奮剤などドーピングの問題が年々大きくなってきています。

当初はネガティブリストの考え方で禁止薬物として規制してきました。ところがリストにないドーピング剤が開発されて新たに規制リストが加えられるということが繰り返され、まさに「いたちごっこ」状態に陥り、基本的にすべて禁止にして、例外的に許される薬物をリストにしました。ポジティブリストへの移行です。

どうしても、ネガティブリストは、悪知恵の新規開発に対して後追い状態になる訳です。

尤も、ビジネスの先駆者たちは、これまでネガティブリストの規制の間隙を狙って仕掛けて新機軸を切り拓いてきたという側面はあります。

残留農薬の規準も同じように、当初はネガティブリストの考え方で規制農薬成分を

リストにしてきましたが、手を変え品を変えの開発があって規制の矛盾が起きて2006年からは基本は残留する農薬成分は規制対象として、一定数値内の成分は許可するポジティブリストに変更しています。

以上のように、ネガティブリストよりもポジティブリストのほうがより厳しい規制、ルールということになります。

さて、NOCのオーガニック認定規準はどのようになっているか、ということですが、

NOCコットン通称ゴールドラベルの規定はポジティブリストに属します。

オーガニックコットンと云う本当にピュアな原料に対して、できるだけピュアの考え方を維持して加工したいということから一般的な繊維製品加工の常識から外れて、基本は何もしないところを出発点にして、ぎりぎりやってもいい加工の方法をリストにしました。

ここに規定されている事の他はすべて規制対象という訳です。このため、完成した商品は、高度に純度が維持され、色がない中でデザイン性が工夫され、着心地を最優先して独特なNOCコットン認定商品として定着しています。

一方、NOCグリーンラベルは、安全性を大前提にして染色などの加工が行える規定になっています。その上で安全上使ってはいけないという規定の下に仕上げられています。

その意味でネガティブリストに属しています。

 

文責:日本オーガニックコットン流通機構

顧問 宮嵜道男 10.10.2018