やけにホームランが多いのと違うか?
例年と比べて今年のホームランの数が異様に多いことが問題になりました。日本のプロ野球機構は、内緒で「よく飛ぶボール」の仕様に変えていた、いわゆる「統一球問題」が起きて、責任のあるコミッショナー(会長)が知らぬが半兵衛を決め込む醜態を晒しました。
福島の原発問題でも、政、財、界のトップの人々は、原発再稼働と原発システムの輸出を目指すため、事の重大さをできるだけ小さく見せるよう実態を隠しています。
高濃度の放射性汚染水が海に流れ出て、水産業の関係者は片時も休まらず、不安と緊張を強いられています。
遺伝子組み換え農産物の農林水産大臣、内分泌かく乱性化学物質(環境ホルモン)の厚生労働大臣などは、世界の論調が厳しい目を向けてきているのに、相変わらず経済優先で産業寄りの姿勢を取り続けています。
日本人は平均して世界に稀にみる知能の高い国民と海外から褒められることがありますが、どういう訳か日本人は、トップやリーダーを選ぶ能力は、からきし劣るようです。
アベノミックスで景気回復、経済優先の政策一本槍で、国民の健康、自然環境の保全は後回しの感があります。
<環境ホルモン第一波>
1990年代に、フロリダの沼に生息するワニが90%も激減するという衝撃的なニュースが流れました。
1980年に沼の近隣の農薬工場から化学物質が大量に排出され、ワニの卵は孵化せず、オスはメス化して生殖能力を失ってゆきました。
化学物質が、野生動物の中で女性ホルモンのように働き、生体機能を狂わせている実態が次々と明らかになりました。貝や魚、カモメやアジサシなど鳥類そしてアザラシ、イルカそして羊やピューマにもホルモン性の異常が発見されました。オスのメス化、甲状腺の腫瘍、免疫力の低下、奇形、生殖器官の異常が見られました。
これでは、人間にもきっと影響が出ているのではないかと調べてみるとゾロゾロ異常が見つかりました。
WHOは1998年から2011年までの男性の精子の変化を発表しました。精子の数も運動率も平均して20%も衰弱していました。
母乳からダイオキシンが見つかり、大騒ぎになって粉ミルクに切り替える母親も出て、これらの話題はしばらく続きましたが、やがて次々に起こる事件ニュースに埋もれて関心は薄れてゆきました。
<第二波到来>
このところ、海外では内分泌かく乱物質いわゆる環境ホルモンの問題が10年ぶりに再燃してきています。
・国連環境計画(UNEP)と世界保健機関(WHO)が共同で「内分泌かく乱性化学物質(環境ホルモン)の科学的状況(State of the Science of Endocrine-Disrupting Chemicals) 」と云うレポートを発表しました。
環境ホルモンが、女性の乳がん、男性の前立腺がん、子供の注意欠陥多動性障害、甲状腺がん、などに 関係していることを報告しています。 (疑われる化学物質は800種)
・5月24日、EurActiv誌は、世界から89人の公衆安全健康関連の研究者や科学者が集まる研究機関から、「内分泌かく乱物質に関するベルレモン宣言」が出されました。
・ラマツィーニ協会が、6月13日に環境ホルモンの問題の重大さを再認識すべきと云う見解を発表しました。
この協会は、世界35か国の環境と労働衛生の専門科学者180人で構成された学会です。
・EUの化学物質政策では、特にこの内分泌かく乱物質(EDCs)への懸念を強くしています。 生殖異常に加えて神経系障害や糖尿病, 肥満まで影響しているようだ, となるとこれは乳幼児から老年まですべての 年代の人々の障害となり、あまりに大きな問題になる可能性を示しています。
環境ホルモンは、化学物質に過敏に反応するタイプの病気とは違い、症状が現れるまでに長い時間が掛かるため、発症の原因追及が難しく、経済界に背景を持つ学者は発症の因果関係が立証できないからシロという反論を展開しているようです。
本当に因果関係が証明されたら、この現代の化学万能時代は壊れてしまう訳です。
そこで、日本経済が打撃を受けないように、できるだけ隠すか、引き延ばして大事にならないようにしています。これは、「手段」と「目的」を取り違えた政策です。
本来、政府の「目的」は、国民の生活、安全、健康であって、経済はあくまでも「手段」ある筈です。
<改めて環境ホルモンって、なあに?>
さて、内分泌かく乱性物質・環境ホルモンとは何か改めて考えてみましょう。
作家の立花隆氏は、2000年頃、著作や講演で、繰り返し「環境ホルモンが人類を蝕んでいる」ということを警告していました。
現代に現れた異常発症現象は環境ホルモンの作用ではないかと仮定し、不妊症、拒食症、強迫神経症、うつ病、アレルギー症、家庭内暴力、いじめ問題、普段大人しい人物が起こす凶悪犯罪、子供の知能の低下問題などなどを疑うよう声を上げました。
そして、この種の問題は「疑わしきは罰せず」ではなく、「疑わしきは、停止する」制度にしないと犠牲になる人の数が膨大になることを指摘しました。
ホルモンは、成長、発達、代謝、体温調節、血糖値、生殖、睡眠、精神状態、気分などが適正に働くように調整していて、脳下垂体、甲状腺、脾臓、精巣、卵巣と云った内分泌腺で作られ血液に入って全身を巡ってゆきます。
こうしてみると、ホルモンが日常の生活のバランスを保っていることが判ります。そこにホルモンバランスを狂わせる疑似ホルモンが悪さをしているということです。
もう一つこのホルモンの問題は、作用する化学物質の量がきわめて微量である点です。
10億分の一から1兆分の一という極微の化学物質で、生体システムを狂わせると云うことです。
NOCは、化学物質過敏症という大変深刻な現代病に焦点を当てて、解決の援助を模索してきました。
人工の化学合成品は多かれ少なかれ人体は「毒」と捉えるようです。
数百万年続いてきた人体のシステムは、わずか70年80年で、未体験の化学合成物を取り入れることはできないということです。
これからは、ひたすら人工化学合成を止めて、天然の要素をそのまま活用して、そのまま戻す技術の開発に重点を移してゆかなくてはなりません。
オーガニック技術の開発の時代へと舵を切らない限り、人類の未来はありません。
平成25年8月20日
NOC(日本オーガニックコットン流通機構)宮嵜道男