オーガニックコットン とは(Guide to Organic Cotton)

オーガニックコットン の意義

大地を守り人を守る

写真提供/Joerg Boethling・Agenda

写真提供/Joerg Boethling・Agenda


オーガニックコットンとは、一般の綿畑で使っている化学肥料や殺虫剤、除草剤などの農薬を使わず、有機肥料を用い、天敵の益虫を活用して害虫駆除を行うなど、手間ヒマをかけた昔ながらの栽培方法で育てたコットンです。

この栽培方法は、従来行われている農薬を多量に使い土壌の活力を失わせる方法とは異なり、自然環境に負荷を与えず、農場近隣の環境保全につながり、働く人たちの健康も損ねない理想的な栽培方法です。

オーガニックコットン の栽培

写真提供/Joerg Boethling・Agenda

写真提供/Joerg Boethling・Agenda


コットンの種

綿花は、アオイ科のワタ属。アオイ、ハイビスカス、オクラも仲間です。綿毛をぜんぜん持たないものが多く、野生種で 20 種類以上知られています。

綿を作るのはアルボレウム、ヘルバケウム、バルバデンセ、ヒルスツムの 4 タイプが主流です。

アルボレウムとヘルバケウムはインドを中心として栽培されてきました。

バルバデンセ、ヒルスツムはアメリカ大陸が発祥と言われています。バルバデンセは繊維が長く、細い糸にして高級品に使うのに適しています。

現在 90 %以上使われている種は、ヒルスツムで、1,000 以上の品種を交配改良して作られたアップランド種です。

生育期間が短く、どんな気候条件にも対応でき、繊維の質もよく、用途が広い優れた品種です。

種は、第一世代(F1)に限り、ハイブリッド種が主です。

在来の種は、ほぼ存在しません。

オーガニックコットン の主な産地

オーガニックコットン の主な産地

世界の生産量の 97 %が下記の 7 カ国で占められています。

インド 51 %、中国 17 %、キルギス 10 %、トルコ 10 %、タジキスタン 5 %、タンザニア 2 %、アメリカ 2 %

残りは、ウガンダ(1.08 %)、ギリシャ(0.49 %)、ベナン(0.42 %)、ペルー (0.23 %)、ブルキナファソ (0.19 %)、パキスタン (0.17 %)、エジプト (0.12 %)、エチオピア (0.05 %)、ブラジル (0.04 %) 、マリ (0.03 %)、アルゼンチン (0.005 %)、タイ (0.003 %)、その他

2018 – 2019 年にオーガニックコットン を栽培した国は、合計 19 カ国となります。

Textile Exchange Organic Cotton Market Report 2020 より抜粋

コットンが育つ土地の特徴/気候/風土

綿花の生産適地は、赤道をはさんで北緯 45 度南緯 35 度の地域で、雨が少なく乾燥して、日照時間が長く、人件費が低い地域です。

日本のように高温、多湿の国は、適地ではありません。

江戸時代には、盛んに栽培されましたが現状では、収穫量が低く人件費は、高くて採算が合わないこともあり、日本では、綿花の商業生産が難しい中で一部地域(愛媛県今治、熊本県球磨郡、兵庫県加古川など)で挑戦されています。

オーガニックな害虫対策

益虫を使った生物農薬の様子

益虫を使った生物農薬の様子


人や家畜、環境に対する高い安全性

一般の栽培方法は、綿花に虫が付けば殺虫剤を散布するのが当たり前ですが、オーガニックコットン の畑では化学合成された殺虫剤は使いません。

綿花に付く害虫を食べる「益虫」を放つ生物農薬で駆除したり、虫が嫌う植物の臭いのエキスをまいたり、ニンニク、唐辛子などの刺激臭のある植物を綿花畑に植えます。

また、糖分が豊富で虫が好む植物を畑の周囲に植えて虫をそちらにおびき寄せたり、夜間に電灯を付け害虫を集めて網で捕獲するなど、古来のさまざまな方法を駆使して害虫対策しています。

オーガニックコットン の収穫

写真提供/Joerg Boethling・Agenda

写真提供/Joerg Boethling・Agenda


ひとつひとつを人の手で

綿花収穫の方法は、アメリカやオーストラリアなどの先進国で行われる大型機械によるものが主流です。

機械 1 台で、手で摘む人 80 人分の働きをすると言われています。人件費の高い国では到底手で摘む方法は採算に合いません。

機械で刈り取る場合は、綿の木の高さを一定にしなくては効率が悪くなり、そこで成長調整の農薬が使われます。

また、綿花が収穫できる 9 月頃は、葉や茎はまだ枯れる時期ではなく、青々としていて、そのまま刈り取ると、湿気の問題や、葉の葉緑素がつぶれて汁が綿に付着し、品質を落とします。

そこで、収穫時期からさかのぼって「枯葉剤」をまき散らしておきあらかじめ葉や茎を枯らせています。

オーガニックコットン の栽培・収穫方法は、「枯葉剤」を使用せず、綿花を手で摘み、青々とした畑の中で収穫作業をおこなっています。

原綿・布地の加工について

オーガニックコットン の原綿

写真提供 | Joerg Boethling・Agenda

写真提供 | Joerg Boethling・Agenda


綿花の加工

収穫された綿花は繊維と種に分けらます。

種は植物油や飼料に利用されます。

繊維は約 200 kg 単位に堅くまとめられます(これを原綿と呼びます)。

布団や、クッションやぬいぐるみの中身に使う場合は、幾重にもわたるゴミ取り工程を経て精綿として取引されます。

オーガニックコットン の糸、そして布地の加工

環境と人の健康のために

環境と人の健康のために


高い安全性を追求

糸にする紡績工程では、ゴミや、品質を落とす短い繊維を取り除いた後、繊維を平行にそろえて引き伸ばす作業を何度も繰り返して所定の太さの糸に加工し、最後に適度なえりをかけて強度を出します。

ここまでの工程は、一般の紡績もオーガニックコットン の紡績も基本的には同じです。

オーガニックコットン の紡績の工程で使われる補助剤については、認証機関がエコロジーや、安全性を求めた基準(GOTSなど)に従って使用されています。

糸をタテ糸(経糸)のビームに巻き取り、ノリ付けします。

生地の柄、密度などの仕様に合わせて、経糸を織り機にセットしヨコ糸(緯糸)が織り込まれて生地組織ができていきます。

ノリが付いていてパリパリの状態で出来上がった生地は生機(きばた)と呼ばれています。

一般的には、薬剤処理してノリを落としますがNOCコットンの規準は、健康安全性とエコロジーのため、湯で洗い無添加の石鹸(せっけん)や酵素を使ってノリ抜きします。

環境に配慮した紡績プロセス

環境に配慮した紡績プロセス

環境に配慮した紡績プロセス


水の環境サイクルに配慮

一般の生地は、ここから脱脂、漂白、染色、防縮、防しわ、柔軟、艶出し、防水、防汚、防炎,抗菌など用途に合せて、幾重にもわたって化学処理が施されていきます。

そして、全て水を介して作業するため、処理工程で使われた水は、河川に排出されることとなり、水質汚染につながっていきます。

また、化学処理に使われた化学物質は、生地繊維の中に残留し、健康を害する場合があります。

そのため、アレルギーの体質の人は、しばしば繊維製品で発症してしまいます。

NOCコットンの規準のプロセスでは、ソーダ灰や石鹸(せっけん)液を高温にして生地を洗い、繊維の成分であるロウ分油脂分を取り除き、その後乾燥して化学処理をせずそのまま完成です。

現在は、国の排水規制が行きわたり、河川の水の汚染は改善された様に見えますが、環境ホルモンのように基準値以下の極微量の成分は残留し、生息する動植物への遺伝子異変を起しているという報告もあります。

これからも、化学物質の生物への影響は未知な部分が多く、注意深く監視していかなくてはなりません。

カラーコットンについて

カラーコットン – コットンフラワー 茶色や緑色

cotton09

4000年の眠りから目覚めた「カラーコットン」

コットンには白の他にも、茶や緑の色のものがあります。

これらの色は、すべて生まれつきコットンそのものの色で、染めた色ではありません。

「コットンは白い」と言うのが現在の常識ですが、実はもともとの色は茶色でした。

ではなぜ、現在のコットンは、白が主流なのでしょうか?大昔、人々は草や木や泥で布を染めることを覚えました。

すると、色をキレイに出すには白が一番都合がよく、より白いコットンになるように品種改良しました。

やがて白いコットンがすっかり主流になると、色の付いた茶色のコットンは邪魔にりました。

白いコットンに茶色が混じると困ることから、栽培することを法律で禁じた時代もあったほどです。

そして、とうとう茶色のコットンは姿を消して人々の記憶からも消えてしまいました。

エコロジーへの関心が広がり始めた 1980 年代、無農薬で育てるコットンが話題を呼びました。

そんな中、アメリカの昆虫学者であるサリー・フォックス氏(Sally Fox (inventor))は、カラーコットンの存在を知り、そしてひらめきました。

川や海を汚す染色をすることなく、カラーコットンで色や柄が出せたら素晴らしいことではないかと、趣味で細々と茶色の綿を栽培していたグループの協力を得て、それらをビジネスとして成り立つレベルの生産量に引き上げ、名実ともにカラーコットンを復活させたのです。

かつて、染色工場の周辺は化学汚染し、繊維産業は公害産業と呼ばれた時代もありました。

カラーコットンは、化学汚染がまったく起きないエコロジー繊維として、4000 年の眠りから覚め、今最も新しい素材として注目されています。

りんご・ピーマン・カラーコットン

りんご・ピーマン・カラーコットン

自然にあふれるさまざまな色彩

大自然が生み出す色は実に多彩です。

色とりどりの花はもちろん野菜や果物も豊かな色にあふれています。

ただし、自然の色は移ろいやすく、人工の染色と比べると安定しません。

土壌のミネラル成分のちがい、年々の気候のちがいによって色合いは異なり、一定の色を望むことはできません。

カラーコットンも、原綿の色は収穫ごとに異なります。

一般的に色の度合いを示す場合、DIC(大日本印刷カラ-ガイド)の数字で表しますが、カラーコットンにおいては、白いコットンの原綿 30 %とか 50 %などの、混綿率で示すしか方法がありません。

当然、元の原綿の色の濃度によってまったく違う色調になる可能性があるわけです。

しかし、これは欠点ではなく、自分と出会った唯一の「縁のある色」と捉えていただければ愛しさが湧いてきます。

自然の恵みだからこそ現れる色を楽しんでみましょう。

有機カラーコットンが消えてゆく???

有機カラーコットンが消えてゆく???

あなたは触ったことはありますか?着たことがありますか?

カラーコットンは、需要不振のため栽培が続けられなくなっています。

オーガニックコットンの市場においても、漂白や染色をした方が有利な面が多く、需要が伸びるに従って、カラーコットンが衰退するという結果になってしまいました。

一般の人々に十分に行き渡り、真価が伝わる前にその姿を消してしまうというのはいかにも残念です。

NOC日本オーガニックコットン流通機構では、カラーコットンを何とか絶やさないよう、最大の努力を払い供給を続けていきます。

4000 年ぶりに陽の目を見た茶色の綿が、わずか 10 年で消滅してしまわないよう、もう一度注目、利用し、いつまでも有機の畑にカラーコットンの種が撒(ま)かれるよう運動していきましょう!

古くて新しいカラーコットン

茶色の綿の紫外線(UV)防止効果

茶色の綿には、不思議なことに生体に有害な紫外線を 95 %も吸収する UV 効果があることが偶然発見されました。

草木染のUV効果を調べていたとき、たまたまそばにあった茶のカラーコットンの布地を比較のために測定しました。

白いものは 80 %くらいだったのに対して、茶色のものは、草木染の布地と同じ 95 %台の値を示したのでした。

なぜでしょうか?「茶色の綿は綿の原種」ということを思い出してみてください。

コットンが育つのに良い条件は、長く強い日差しを受けることです。

すると、綿毛に包まれた種子は有害紫外線から守られなくてはなりません。

大自然が選んだ綿毛の最良の色は茶色だったのです。

市販の UV 加工品は化学処理されて製品化されていますが、カラーコットンは生まれながらに UV 防止品になります。

帽子、手袋、外着、カーテンにも効果を発揮してくれるのです。

緑色の綿の面白さ

緑の綿は、サリーさんの茶色の綿畑の中から見つかりました。

変な色の不良品だから捨ててしまうというのが普通ですが、サリーさんは、大切にこの変種の綿を育てました。

さらに、変種同士を掛け合わせてその特徴が色濃く出るよう辛抱強く繰り返しました。

最初は薄い黄緑のような色だったのが、はっきりした緑色になりました。

その後も黄色、ピンク、ワインレッド色の綿が採れましたが、商業的には成功していません。

遺伝子組み換えの技術で成功するかもしれませんが、オーガニックの精神に反しているので使えません。

自然の交配では緑色までが妥当なのかもしれません。

緑の色は石鹸や重曹などのアルカリ性の液に浸けると色がパーっと発色します。

また熱いお湯に浸けても濃くなります。

しばらく使っていると色が薄くなります。

これは洗った時の水の中の塩素や洗剤の漂白作用のためです。

さらに日に干すと紫外線の漂白作用が影響します。

色が濃くなったり薄くなったりなんとも面白い綿ではありませんか。

変化するどの色もみんな安らぎのあるいい色になります。

どうぞ慈しんでください。

記事より:FORT WORTH STAR-TELEGRAM PARADE 1996, APRIL

人類とコットンの密接な関係

綿は、アメリカ大陸において、約 4,500 年前から栽培されていたことが分かっています。

最初は家畜のエサであったり、薬草として使われ、繊維として利用されたのは、ずっとその後のことでした。

グレー、茶、ベージュ、白は選別されて栽培されていたという研究があります。

他に青、紫、ピンク、緑も利用されていたとありますが、一般の学者たちは、口伝による単なる伝説で、草木で染められたものと混同しているとしています。

コットンの原種であるカラーコットンは、長い歴史のなかで人々のそばに寄り添い、そして歴史を作ってきたのです。