化学物質過敏症からの回復のために[コラム 2020 No.15]

化学物質過敏症からの回復のために・・・

NOC(日本オーガニックコットン流通機構)は2000年、北里大学病院の臨床環境医学センター(化学物質過敏症診療所)にオーガニックコットン製品を納入するようになってから化学物質に過敏な方々とのやり取りが始まりました。

患者さん達からの色々な相談、質問にお答えし、また患者さんからご自身の回復の工夫など沢山聞かせて頂きました。
その中には、療養の生活上、有用なアドバイスが沢山ありました。
化学物質が多用されている環境で暮らす現代人の常識として、特に徴候のない方でも予防の知識として目を通しておくことをお薦めします。
知らず知らずのうちに、化学物質に反応しながら体調を損ねている場合があり、他人事ではありません。化学物質に過敏になってしまった方々の経験を広く知って頂くためにレポートしました。

<発症した方の生活上の注意点・工夫>

家の中の化学物質発生源を認識する。
家の中には意外に沢山、化学合成の物質がある。
芳香剤、防虫剤、臭いのあるプラスチック製品、香水、洗剤、香料入り柔軟剤、化粧品、
マニュキュア、ヘアカラー、白髪染剤、整髪料、スプレー類、入浴剤、ペイントした小物、家具の塗装剤、接着剤、タバコ、線香、蚊取り線香、床ワックス、カビとり剤、農薬(殺虫剤、除草剤)、建材(床材、壁材、天井材)、青い畳(色付け、イグサの匂い付け)など。

ある物の臭いやそばに行くと違和感を感じたら処分する。
処分できない場合は、ポリエチレンなどの袋で二重に包み、セロテープや輪ゴムで密封してできるだけ離れたところに保管する。

化学的に合成された製品から天然自然の製品を選ぶ。
一般的な化学合成の洗剤を植物油から作られた石鹸系の洗剤に替える。
(洗剤という言葉は、一般的に化学合成の洗剤と云う意味で使うが、ここでは、単に洗濯用の洗浄剤と云うことにする)

使えるもの使えないもの
・香料は化学合成系、ナチュラル素材系(植物エッセンス、お香など)含めて使用を避ける。
・筆記具では、マジックペン類は使用しない。(独特な強い臭いを発している)
・接着テープは、セロテープは使える可能性が高い。ガムテープ、ビニールテープ類は使用しない。
・塩化ビニールは使用しない。PE:ポエチレン、PP:ポリプロピレンは使える可能性が高い。
・輪ゴム、クレープ紙(茶紙)、ポリ系や綿製の紐は使える可能性高い。
・印刷物は、カラーグラビアなど光沢のある物は避ける。インクが浸み込みやすいマット系の紙は使える可能性がある。白黒印刷は比較的大丈夫。カラーコピーは比較的使える。
・新聞は印刷してから時間が経っていないので、できるだけ避ける。
*どうしても読まなくてはならない印刷物は2~3時間、直射日光に当てて、しばらくしてから読む。

家具の臭いが辛い
できるだけ処分する、又は遠ざける。できない時は、毛布など厚地の生地ですっぽりと覆う。

衣類について
・購入した衣類は、必ず洗ってから着ること。
・臭いを感じるようであれば、40度以上の高温水に浸けて5~10分おいてから水洗いして脱水後、日に干す。
・洗えない衣類は、日に干し、風を当てる。
注意:お湯で洗うなどの作業は、患者さん本人はせず、人に頼むこと。
(化学物質の蒸気を吸うと症状が悪化する可能性がある)
*クリーニング店のドライクリーニングは不可。(水ではなく化学溶剤液を使って洗うのでドライと呼んでいる)

タオル、ハンカチなど
できるだけ染色などしていない生成りの物を選ぶ。

生理用ナプキン
生成りの綿製の布ナプキンを使う。
便宜的に使い捨てナプキンを使うときは、メーカーの素材や製品加工への考え方をよく知って選ぶ。

体内から化学物質を排せつする工夫
・安全な水を十分に摂る。
・入浴、運動して汗をかく。
・ビタミンC群,B群、カルシウム、マグネシウムを意識して摂る。
・良質な有機野菜や果物、海藻類をバランスよく食べる
・繊維質の食品をしっかり摂り、便秘を避ける。
・早寝、早起き、食事、排便のリズムを維持する。
・身体を冷やさないように着衣に気を配り、手足を積極的に動かすなどして、血行を良くする工夫をする。

精神面の工夫
・趣味や生き甲斐をみつける。
・何事もストレスにならないように、気持ちを切り替える工夫をする。
・できるだけ顔を緩めて微笑む工夫をする。(ペットで和む方もいます)
*微笑みの表情を作ると顔の筋肉や筋が脳に伝わり和みホルモンが分泌されて、微笑みの気分をもたらす。
・色々なものに感作するのを、怖がらないで何が原因か、探し出すことを面白がる意識に変える。
(感作したものを記録しておくと意識に定着する)
・感作した化学物質とは、生体的に体に良くない、ダメージになる物質であり、身体が有効に防衛していると考える。
高性能な「「人体害毒検知器」を持っているので身体全体としては安全である。
(感じない一般の人たちは、検知器が働いてないので、無防備に化学物質を体内に取り入れてしまっているので化学物質過敏症にはならなくても違う形の病気になる可能性がある。)

NOCグループはエコロジーの観点からオーガニックコットンの普及活動を進めてきました。
すると、エコロジーに良いものは、各種アレルギー症の方々にとって、最も快適な繊維素材であるということが判りました。
そこでNOCは、更に安全面に配慮した製品づくりの指針を示し指導に努めています。

なぜオーガニックコットン?
一般の綿衣料や生活雑貨は効率性や美観のために漂白、染色他、繰り返しの化学処理を施します。
繊維に吸い込まれた多くの化学物質は、過敏な方々には刺激として作用してしまいます。
どんなに気に入ったデザインの服でも、ひとたび反応してしまったら二度と着ることが出来ません。

NOCグループのオーガニックコットン製品は、エコ加工規準に沿って、
混じりのないオーガニックコットンを原料にして、化学処理せずに仕上げています。(NOCコットン規準)
布地の洗いの工程では、天然せっけんや酵素を使っています。

漂白や染色、柔軟剤などの一般に行われている化学処理をせずに仕上げると云うことは、
逆にどの工程でも手数がかかり、コストアップになるということになります。
機能面、美観、価格面などの難点はありますが、原料から製品まで一貫して安全安心を追求している点をご理解ください。

過敏なお客様方には、一緒に考え、個別の対応をしてゆきます。
例えば、オーガニックコットン製品も天然石けんでの洗浄仕上げを行っていますが、
この石けん分にアレルギー反応してしまう方のためには製品を特別なラインで湯洗いしたり、
重曹、電解水やEM液で洗うなどの処理も行ってゆきます。
衣服に限らず、ふとん、毛布、ベッドマットなど丸洗いの出来る協力工場に依頼できます。

これまで全国のアレルギーの専門病院や化学物質過敏症の専門病院、関連療養施設などから、NOCの製品は注目され、寝具リネン類、衣料品、家具など多くの納入実績を上げてきました。

今後とも過敏な方々がどうしたら快適に過ごせるかをテーマに、製品開発を続けてゆきます。

文責:NOC日本オーガニックコットン流通機構
顧問 宮嵜道男 7.22.2020