ダニの正体を見てみましょう
オーガニックコットンとダニ
お客さまからたまに出る質問にこういうのがあります。
「オーガニックコットンは農薬も殺虫剤も使っていない。ということは、ダニにとっては住み易いということでダニの害が心配ですが・・・」確かに「ダニ」と聞いただけで、ムズ痒くなるものです。
「社会のダニ」「ダニの温床」と最悪のイメージの生き物です。
どのくらい困ったヤツか見てゆきましょう。
一口にダニと読んでいますが、名前のついているものだけで6万種、名前のないものまで入れると10万種をゆうにこえると言われています。
そのうち動物に寄生するものは、10%ぐらいでほとんどは土の中にいます。
有機物を分解するという大自然の生態系の中で「お掃除役」としてだいじな仕事を立派に務めています。
人に寄生するダニはわずか2種類しかいません。
ダニは分類学では、節足動物門、クモ形綱、ダニ亜網に属しています。
山や森に居て人に取り付いて血を吸うのはマダニ。
ねずみに取り付くのがイエダニ。
これらは一般の家庭では縁のないダニです。
コナダニとチリダニは、大体どこの家の中にもいます。
湿度が50%以上、温度が20度以上になると活発に活動しますが、増殖しないようにこまめな掃除と換気で十分防げます。
10年くらい前でしたが、アレルギーの専門医が、子供のぜんそくの原因はダニの死骸の粉で、その発生場所は縫いぐるみだと新聞で発表しました。
縫いぐるみは、一気に売れなくなって業界は壊滅的な打撃を受けました。
その後、ピレスロイド系の薬剤を使った防ダニ全盛の時代が来ました。
どの縫いぐるみにも防ダニ加工済みのラベルが付けられました。
時代は防ダニ剤だけでなく抗菌ブームでもありました。
あらゆる家庭用品に抗菌処理済みのシールが付けられました。
抗菌処理をしていないと物が売れない時代、ボールペンやバッグなど抗菌には全く意味のない商品にまで表示されました。
本当に抗菌効果を出すための濃度で加工処理をすると人の肌を傷めることがわかり、濃度を薄くせざるを得なくなりました。
当然、抗菌効果は意味を失いました。
ヒトの肌には黄色ブドウ球菌などの常在菌がいて肌を守っています。
薬品の刺激で常在菌が弱くなると体内の白血球が活性酸素を使って常在菌を破壊します。
この活性酸素の作用で肌がただれるというプロセスを踏むのです。
結局、売らんがための意味のない加工処理ということで抗菌商品のブームが去って現在はほとんど姿を消しました。
その後、ダニと縫いぐるみの因果関係もはっきりせず、防ダニ処理済みのラベルを見ることはなくなりました。
縫いぐるみは子供がなめたり口にすることもあり、化学薬剤の害の方がよっぽど怖いということが常識になりました。
オーガニックコットンの縫いぐるみもダニ疑惑の渦中に入りましたが、日本オーガニックコットン流通機構の認定には化学薬剤による防ダニ加工は認めていませんので、化学加工処理は一切しませんでした。
それでも、これまでに一度として、縫いぐるみとダニの関連のクレームをお客様から受けたことはありません。
ぬいぐるみは、十分に干し、軽くたたき、掃除機をしっかりかけるのが基本です。
重曹をふりかけて干して、掃除機をかけると臭いも取れる良い方法です。
雨の多い、湿気の多い季節には、布団が心配になりますが、この場合は布団乾燥機を使うのは良い方法です。
以上見てきましたようにダニは、防除のための化学薬剤を使わなくても、こまめな掃除と乾燥で比較的簡単に防げるものです。
最後に驚かすわけではありませんが、誰の顔にも、200万匹ものダニがいます。
毛穴の奥深くに住んで脂肪性の分泌物を食べて分解しています。
また、肌表面には常在菌がいます。
過度な洗浄が肌を荒らすというのは、肌表面の常在菌の均衡が狂った状態を言っています。
みずみずしく美しい肌は、ダニや菌がバランスよく働いている証拠ということになるのです。
人類とダニの付き合いは何百万年ですから遺伝的にも体は十分対応できるようになっていますが、化学薬剤はわずか50年で、とても適応できていないのです。
ダニと比べて化学薬剤の方がヒトの体に害があるということです。
テレビコマーシャルを見ているといわれのない不安をあおって、シュッシュッと解決しますよという化学薬剤商品が頻繁に出てきます。
安売り店に行くと店頭ではその商品が山のように売られていて、気楽にカゴに入れてゆく人を見ると、心配になります。
日本オーガニックコットン流通機構
理事長 宮嵜 道男