二倍、三倍は当たり前のペット業界
二倍、三倍は当たり前のペット業界
ペット業界に携わる人たちの禁句は「犬、猫」です。
「ワンちゃん、ネコちゃん」は最低限であの子、この子、ボクちゃんが当たり前です。
ペットの粗相を叱る場合も「お母さんは、許しませんよ!」と云います。
この業界に係るならば、完全に頭の切り替えが必要です。
犬小屋に無骨な鎖でつなぎ、冷えた残りご飯に味噌汁かけて与えていた時代とは違うのです。
2003年から2005年にかけて、15歳未満の子供の数がペットに抜かれました。
その後、その差はどんどん離れ、現在、子供の数が1,760万、ペットの数が2,520万に
なりました。飼育家庭の数は1500万世帯で3軒に1軒の割合です。
二人以上の世帯におけるペット関連の支出はこの15年間で1.7倍に増加しています。
ペット産業の市場規模は1兆278億円(総務省、ペットフード工業会発表)、これに対して
アメリカの市場規模は、4兆3000億円(APPMAアメリカペット製品製造者協会発表)です。
アメリカの家庭の飼育率は、60~65%で、日本はまだ30~33%で、単純にみても
市場が倍増する成長幅が期待されています。
JFW-IFFインターナショナル・ファッション・フェア2014で、ペット業界で注目のお二人の
講演がありました。イオンペット㈱の小川社長とドッグブランド・プロデュサーの垣内りかさんは講演の中でさかんにペットの業界が新しい局面に入っていることを強調されました。
イオングループはペットシティを展開してきたAHBインターナショナルと合併してイオン
ペットを立ち上げました。売り上げ規模は250億円で、業界大手のコジマの134億円を遥かに凌ぐ規模になっています。
昨年暮れにオープンした幕張のイオンモールの中のペットモールPECOSは、破格の規模でこの売り場の前を通るお客さんは多い時で10万人となり、日に日に注目度が上昇しています。
規模だけでなく基本的なテーマを「ナチュラル&オーガニック」に据えて、従来のペット用品は10%に抑え、90%は新規取り扱い品で棚を埋めました。お客さんは、見たことがない良い商品が沢山あって嬉しいと評判だそうです。
「可愛い子」の健康を考えてのテーマで、NOCメンバーのマザーズさんの商品に白羽の矢が当たりました。マザーズさんのオーガニックコットン製品がメインの扱いです。
従来の量販店とは異なります。 従来は、スーパーやホームセンターのペット用品の売り場と云うと、肥料やスコップなどのガーデンニングの隣で、価格優先で地味に扱われてきました。
ペットが長寿化してゆくとビジネスチャンスは更に高まります。
現在、平均寿命は犬で13.9歳、猫で13.9歳(ペットフード工業会発表)で、高齢と云うと7歳以上を云います。シニア対策用品が更に望まれています。
歩行を助けるハーネスやキャリングバッグ、乳母車ならぬワンちゃん用のカートなど必要な用品は増えてゆきます。また意外なのは、リードとリードカラー(綱と首輪)のバリエーションで自身のファッションと合う物が求められています。
室内での飼育率 犬64%、猫75%でペットウエアの分野も賑やかです。
ペットウエアの市場は現在500億円ですが、この程度ということはありえないと小川社長は断言しました。
19年前の1995年当時、犬の着用率は5%だったものが現在はほぼ100%着用しています。
ワンちゃんをヌードにしておいては不謹慎という「常識」が出来て来つつあるので、まだまだ
市場は拡大することでしょう。(一般衣料品の市場は9兆円)
ウエアの分野では、オーガニックコットンなどのナチュラル系とヒートテック繊維製品のハイテク系が良く売れています。
品揃えでは、どうしても可愛いフリルの付いた物が多く、それに対して男の子用(オス)の商品のバリエーションが足らないのでこれから有望です。それからもう一つ有望なのはアメリカ市場向けで、アメリカではかつて大型犬が主流だったのが、中型から小型犬に移り始め、日本の得意とするきめ細かな小型犬用の製品が注目されています。
男の子、女の子と云えばウエアだけでなく髪型も違うそうです。スポーティカットとかお姫さまカットがあるようです。
ペット同伴のパーティが開催されていて、飼い主のファッションとペットのファッションの
コーディネーションが競われています。当然、ペットのドレスコードがあることは言うまでもないことです。
元気を出す酸素カプセル、ペットホテル、リハビリ、運動不足解消のトレーニング施設、
クリニック、介護サービス、リラクゼーション・マッサージ、焼き立てパンのコーナーが人気、アメリカでは、留守番のワンちゃん専用のTV番組局ができています。
どの業界も「ペットと一緒」というキーワードで、マーケット戦略を立てていて、特に住宅メーカーや車のメーカーは、はっきりと販促ポイントにペットの存在を入れています。
ペットとの一緒の豊かな時間を過ごす、ペットとの良い思い出をつくるという価値観が働いています。ペットのいる家庭対象にアンケートして、「生活の喜びで大事なのは何か」という質問に、
犬を飼育している人は「家族」の次に「ペット」を挙げ、猫の家庭では、1位に「ペット」2位に
「家族」と答えています。時にペットは「家族」以上に大切な存在になっています。
どうしたらわが子が喜ぶかに熱中している様子が見えるようです。
我が家にはペットがいなくて、さほど関心がなかったのですが、この文章を書きながら
無粋ながら犬だ猫だ飼育だなどと書いていて、うしろめたさを感じ始めました。
「常識」が変わる臨界点に達しているのでしょうか?
平成26年8月4日 NOC宮嵜道男