周回遅れの日本?[コラム 2020 No.3]
周回遅れの日本?
わが日本は欧米先進国に、エコロジーの面でもフェアトレードの面でも
周回遅れの後れをとってきました。
それでも東京オリンピック2020に向けてやっとシフトを上げてエシカルな方向に走り出しているように見えますが・・・。
世界の金融、投資の環境は大きな変化を遂げていて、ESG投資額が年々増大して
2017年時点で2、500兆円を超えて、世界の投資総額(約一京円)の25%、4分の1にまで成長してきました。
そして日本の金融パワーも一気に増やし2018年には世界の投資額に対する比率の33.4%に躍り出ました。全体の額はなんと3,418兆円ということになりました。
主なESG投資国 | 2016年 | 2018年 |
EU | 1332兆円 | 1554兆円 |
USA | 965 | 1320 |
日本 | 5.2 | 233 |
カナダ | 11 | 187 |
オーストラリア
ニュージーランド |
5.6 | 8 |
さて、ESG投資とは何か?
E:エコロジーS:ソシアルG:ガバナンスの三つの要素を兼ね備えている事業に投資するというものです。
- 地球環境保全に対してどうか?
- フェアトレード等人権を守る社会的公正があるか?
- そしてコンプライアンス(法を守る)を維持するガバナンス(管理能力)があるか?
繊維の業界でも大手のファースト・ファッション(コストカット衣料)が立て続けに環境汚染問題や過酷な労働環境や低賃金労働、児童労働などが問題になって、金融界も目を逸らせない状況になってきています。
これらのことは投資家にとって、はっきりとしたリスクであることが認識されるようになりました。
グローバル企業98社のESG投資の条件に合うかどうかの調査をロンドンの投資会社が三年掛けて行ったところ、日本の大手アパレルメーカーや流通グループは揃って、下位に甘んじています。
今後は、体制として「改善」が進まないと見るや、投資を引き上げるなど厳しい措置を取ることになります。
アビバ・インベスターズのスティーブ・ウェイグッド氏は次のように言い切りました。「人権問題を放っておくのは危険だ。不祥事が起こり、業績が悪化する事例が数多くあった。ランクが低い企業が改善できないというのは恥である」
ESG投資のメリットが明確になってきた。その三つの理由は以下のとおりです。
- 投資のリターンが向上した。(実質的な利益になった)
- 情報開示が進んで投資し易くなった。
- ミレニアム世代(2000年以降に生まれた世代)が成人してきていて、彼らの86%がESG投資を支持している。(未来が明るい)
これまで日本企業はエシカルな要素は、素顔を隠すお化粧位にしか認識してきません
でしたが、今後は実質的な資金計画にダメージがあり、本気で取り組まなくてはならない時代になりつつあります。
日本の年金基金もESG投資に1兆円もの資金を投じているという賢明さを見せた
一方、次のような馬脚を現す新聞記事に出くわし、ああまだ本気じゃないなと思わされました。
9月24日の新聞記事では、オランダの国際NGO非政府組織PAXは、核弾頭や
ミサイルの開発や製造、補修工事に係わる各国金融機関の投資状況を調査して発表しました。
世界全体で325の金融機関がこの忌むべき分野に81兆円もの投資をしています。
その中に三菱UFJファイナンシャル、みずほファイナンシャル、SMBCグループなど8社が名を連ね、2、8兆円もの資金を投資していることが判りました。年々増額してきて、この金額になったそうです。
日本全体としては、エシカルなお化粧はすぐに剥げて傲慢な素顔が現れた形になってしまいました。
エシカルという言葉の概念は、エコロジー、フェアトレード、サスティナビリティ
オーガニック、ロハス、伝統文化等々と大きく包含しています。
素顔として美しくして、どの角度から見ても麗しい国に変えて行かなければ
なりません。
日本オーガニックコットン流通機構
顧問 宮嵜道男 (文責)10.16.19