国際綿花相場の裏事情

世界的に有名なイギリスのファッションデザイナー キャサリン・
ハムネットのホームページを見ていたら、一般のコットンの問題点を
厳しく追及していました。
農薬による自然破壊の問題や農場で働く人々の悲惨な状況が率直に語られています。
NO MORE FASHION VICTIMS(もうこれ以上ファッションの世界から犠牲者をだすのを止めよう!)の スローガンをプリントしたTシャツでアピールしています。

キャサリンさんが2003年にアフリカのマリを視察したときのことでした。
綿花農家で最悪の場面に出くわしたのです。
それは貧困のため、栄養失調で母乳が出なくて、二人の子供を
次々と死なせてしまった若い母親の嘆きでした。
そしてそれは、特別に珍しいことではなく、日常茶飯事のことであることを知らされました。
それからキャサリンさんは、「オーガニックコットン」を普及する
ことの重要性を強く認識したのです。

<ホームページより>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一般の綿がどれほど酷いかということ・・・

・ 綿は世界の農作物の10%なのに、世界の25%もの               殺虫剤を 使っている。

・ 世界保健機構WHOによると、毎年2万人もの人が農薬の薬害事故で死んでいる。

・ PAN(Pesticide Action Network・農薬問題ネットワーク)によれば、100万人以上の人々が長期に亘る農薬の被害を受けている。

・ ロシアから南アフリカにかけて一億人の綿花栽培農民は、飢餓状態の貧困の中にいる。

・ 飢餓による死が拡がり、農薬などの借金が払えず自殺する綿花農民が年間20万人もいる。

★ アメリカの綿花農業者に支給されている補助金が世界の綿花の相場価格を引き下げて、
途上国の綿花農家を貧困に 追いやっている。
アメリカ国民は、世界で唯一、このことを改善できる立場にいる。政府に廃止を求め、
政治家にオーガニックコットンを着るよう迫ろう!

貧困農民が有機栽培に変えれば、この酷い状況はなくなる
オーガニック栽培に換えると、支払いが40%減って、20%高く売れるので、
収入が50%も増える。
そうなると、食べるものも着るものも整い、子供たちの健康と教育を維持できる。
オーガニックコットンは綿花栽培を行う途上国の貧困から抜け出す唯一の方法である

あなたが、オーガニックコットンのTシャツを選ぶということは、
それが優しくソフトで格好よく充実感を味わえるということだけではなくて、
何よりも一番大事なことは、・・・・・
オーガニックコットンTシャツを選んだあなたがこの地上に生きる人々の
尊い命を助けているということなのです。

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上記のキャサリンさんの主張の中の★印に、アメリカの綿花農家への補助金が途上国の綿花農家の貧困を
生んでいるという指摘があります。

この点に注目してみましょう。

ブラジルは、2003年に、アメリカの綿花農家に
対する補助金が、世界の綿相場を歪めているとして
世界貿易機関WTOに提訴しました。
その後2005年、2008年と二度に亘り、
アメリカのWTO協定違反が認定されました。
ところがアメリカは、一向に改善しようとしないため、
WTOは、とうとう2009年8月、ブラジルに対して、
アメリカからの輸入品に総額約742億円(90.5円/$)の
報復的な関税を課すことを許しました。
翌年2010年4月に、アメリカはこの報復措置を
回避するためブラジルと交渉を始めました。

2009年のアメリカの農業補助金の内訳は、トウモロコシが39.75億ドル、小麦が
22.32億ドル、大豆が17.28億ドル、そして綿花が22.7億ドルですから、
アメリカにとって綿花が、いかに重要な農産物として位置付けられているのかが判ります。
もしも農業法において国内農家への補助金を見直すとなると、綿花農家だけでなく、大豆、
トウモロコシ、小麦、米ほかの作物にも影響があり、国内で大きな反発もあり、アメリカ政府は
苦慮しています。

2003年、メキシコのカンクンで行われたWTOの討議の中でアフリカのマリと
ブルキナファッソの大統領が、アメリカの補助金のために苦しんでいる窮状を訴えました。

・アフリカ各国にとって綿花は、重要な農産物で、輸出歳入の40%以上でGDPの10%に
もなる。
・アメリカが、2002年に自国の25,000の綿花生産者に30億ドル(3000億円)の補助金を
与えており、その額は、ブルキナファッソで、綿花で生活している200万人の生産額よりも多い。
・補助金のために綿花相場が不当に下がり、アフリカの1000万の農家を窮乏化している。

西アフリカのベニンの農家の1ポンド当たりの綿花のコストが、0.35ドルで、アメリカは
0.8ドルになり、この0.45ドル分が補助金として農家に支給されているということです。

アメリカの補助金が無くなると、コットン相場が上がり、アフリカのコットン農家は
総額で2億5000万ドル多くの収入を得るという報告もあります。

世界銀行(2006年)は、世界の綿花補助金が廃止されると世界に283億円の経済効果が
あると発表しています。世界の綿花相場が上がり、途上国の収入が上がります。

アメリカは、中国、インドに次ぐ、綿花生産大国で、なんと世界の綿花生産の12%を
占めていて、それが、補助金で、半値に引き下げられた綿花価格が、世界の綿花相場を
引き下げ、途上国の綿花価格を下げる圧力になっています。

アメリカの綿花農業者は、十分な国の保護の下うるおい、その綿花農業者に供給している
「種や農薬の企業」が安定的に収益を伸ばしています。
このように、アメリカの綿花は、政治を巻き込んで、がんじがらめの複雑な利権構造の中に
あるのでした。

綿花を生産する途上国の人々が、それぞれ納得して、当たり前の生活を維持できるように
ならなくてはなりません。

補助金とは縁がない自立したオーガニックコットンの存在意義は、
益々重いということを知って欲しいと思います。

平成26年6月2日                     NOC 宮嵜道男

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