インドのコットン生産地における児童労働問題
NOCは、「児童労働ネットワーク」の正会員として活動しています。
この団体の中心組織のNPO組織ACEの成田さんのレポートは、具体的で、大変貴重な資料です。
NGO ACE(エース)2013年5月 成田由香子
<児童労働の悲劇の典型例>
ベイビーちゃん(16歳):6歳からコットン畑で働いた。
朝9時 ~ 6時まで働き、休みはお昼の30分間だけ。
賃金は、1日当り 50ルピー(50ルピーは、約80円、大人は80ルピー、128円)。
農薬の影響で、皮膚病にかかり、具合が悪く、病院へ通っていた。
2011年、血液のガンにより、16歳で永眠 。
医者によれば、ガンの要因は農薬という。
「学校には行きたいし、病気になるのは辛いけど、働いて家族を支えなければならないの」と話していた。
<インド・ アンドラ・プラデシュ州のコットン種子畑で働く少女たち>
インドのコットン種子生産地域の約90%を占める4州に約40万人の児童労働者がいる。
54%が14歳未満、約70 ~ 80%が女子児童労働。
遺伝子組み換え種・人工交配種(ハイブリッド種)が急増して、人工授粉作業が必要になる。
大人だと屈んだ辛い姿勢で作業をするが、子供は身長が低く、更に指が細いので作業に適しているとされる。
また、当然安い労働力が必要になり、子どものほうが、賃金が安く、言うことを聞くので雇うのに有利である。
また、大人たちは、教育への関心が低く、学校が遠いとか、伝統的に女の子には教育が要らないという認識が強い。
親に仕事がない又は、低収入で生活が成り立たないという背景があると、子供が稼ぎに出させられてしまう。
<農薬問題、農民の自殺問題>
インドのコットン栽培農地は、全耕地面積の5%で、インド全体の農薬使用量の54%を占めている。
(Pesticide Action Network)
多量の農薬を畑に入れると、土の中の微生物が死んで、土の栄養分がなくなり、作物が育たなくなる。
地下水が汚れ、農民と近隣住民の健康が害される。
農民は、種や農薬を買うために 借金をする。
不作だと高い利息も含めて借金が嵩む。
絶望して自殺してしまう農民がいる。
11年間で累計18万3,000人
<巧みな宣伝文句>
インドの新聞宣伝広告には、こう書いてある。
「インドのコットン耕作地の9割でハイブリッド品種のBTコットンが栽培されている。収量が上がり、 コットン農家600万人が、総額3150億ルピー(約6000億円)の収入を増やした。」どこからこんな数字が出てきたのか、実態とかけ離れている。
<ピース・インド・プロジェクト>
子供を危険な労働から守り、教育を受けられるようにするプロジェクトが進められている。
最も受粉作業の盛んな地域の子供たちで、識字率が(45%)州内でもっとも低い子供たちを 対象にした。
2010年から2013年までは、アンドラ・プラディッシュ州、マハブブナガル県、ナガルドーディー村で 行い、2014 ~ 2018年には周辺地域 2 ~ 3ヶ所か所に広げる予定です。
6歳から14歳までの子供530人、17歳以下の女子2000人(450世帯にあたる)が対象になる。
<NPO法人ACEのスローガン>
「あたりまえを すべての子どもに」
- 子どもの権利が守られ、世界中のすべての子どもが、安心して希望を持って暮らせる社会をめざして、市民と共に、児童労働の撤廃と予防の活動を行っている。
- 危険な労働を行う子どもを救い、教育を支援する活動をしている。
- 児童労働を生み出す社会の在り方を見直し、改善にむけて、 企業、市民への啓蒙活動を行い政府へのアドボカシー活動を行っている。
平成25年8月13日 NOC日本オーガニックコットン流通機構 宮嵜道男