天国と地獄
「うちの子は、ご飯を沢山食べてくれなくて困ります」
「うちの子はお風呂が嫌いで困ります」
「うちの子は勉強が嫌いで困ります」
よく聞くわが国のお母さんの言葉です。これらは、この世の「天国」にいる子供たちの日常です。目を世界に転じてみると、十分に食べることも、さっぱりと体を洗うことも、学校で学ぶことも出来ず、朝早くから夜まで炎天下で、汗みどろな農作業労働を強いられる子供たちが沢山います。
また、機関銃を下げて戦場に行かされる子供たち、難民として命からがら逃げ回る子供たち、そして、性的な奴隷状態に身を置く子供たちなどなど、今、現在この世の「地獄」にいる子供たちが世界になんと2億1,500万人もいます。(ILO国連労働機関2010年発表)
NOCは、この地上から児童労働をなくそうという運動に協力しています。インドの綿花畑でも40万人もの児童が強制的な労働させられているとILOが報告しています。
児童労働反対運動CL-ネットは今年も5月~6月にキャンペーンを始めます。政策提言として毎年行われている賛同署名募集も行います。どうぞ皆さん今年も御協力ください。
<何が正しいか注意しなければならないこと>
「KONY2012」というキャンペーンがネットの世界で大盛り上がりになっています。3月8日の時点で、ユーチューブの視聴数が8,000万件を超えたそうです。
これは、ウガンダの反政府運動家のジョルジュ・コニーが、3万人もの子供たちを戦士として、また性虐待の対象として扱っているという問題を告発した映像です。このコニーを皆で捕まえて子供たちを助けようと呼びかけています。寄付も募り、なんと6億円以上も集まりました。
大いに皆で関心を持って、改善に力を貸したいというのが大方の人々の思いですが、この運動への批判も起きています。寄付金の使い方に不明瞭さがあるというものです。
アーティストやミュージシャンが始めたホワイトバンド運動(2005年)の時も、寄付金の使われ方への批判が出て運動自体が萎んでしまいました。
折角盛り上がったエシカルな慈善運動であったのに、これらのような本流と異なる運営上の問題を取り上げて潰してしまうのはもったいないと思います。
慈善運動には非営利性や純粋性が欲しいところですが、ある程度了解しなければならない面があると思います。
何をするにも人が係われば、生活があり無償ばかりでは続けられません。
赤十字でもユニセフでもJICAでも皆、立派なビルで優雅に仕事をしています。
あまり稚拙な批判をしていると改善の意欲を殺いでしまう恐れがあります。
ただこの「KONY2012」の話しの結末は残念ながらお粗末な面は確かにあるようです。
この映像を作ったのは、アメリカの3人の若者たちで、このところ不祥事も起こして、このキャンペーン自体の信憑性が疑われています。
また、この事件は、実は5~6年前に起きたことで、KONYという人物自体も行方知れずのようです。ウガンダに住む人たちから、今はそんなことは起きていないという打ち消しのユーチューブ発言もあり、賛否両論噴出しています。
アメリカでハリウッドスターなどの有名人も先頭に立って、国が介入すべきと論じていることから、きな臭さも出てきました。それというのもウガンダで石油が発見されていることです。影の目的を隠しながら人道を盾に介入を図ろうとしているのでないかという観測もあります。
こちら側の豊かな社会から見ると、以上のような本筋と異なる問題に目が捉われがちですが、これらのような悲劇は、現実にあり、アフリカでは珍しいことではなく、紛争が起こるたびに若いお母さんと子供たちが犠牲になっていることは事実です。
ウガンダといえば、NOCグループが協力しているbioRe タンザニア・プロジェクトの隣の国のことです。ビクトリア湖を挟んで北側にあるのがウガンダです。そう考えると、遥か遠いよその国の悲劇と安閑としていられません。
では何が出来るのかということになりますが、まずこれらの事実に関心を持つということが大事です。関心を持ち続けていれば、救済援助を発信している情報に目が向き、具体的な支援の方法に出会えます。
オーガニックコットン製品のコストの中に、貧困救済支援の資金が含まれていて、気持ちよく服を着ながら、少しづつでも、援助に繋がっている意義を感じていただきたいと思います。
日本オーガニックコットン流通機構 理事長 宮嵜 道男