農業コミュニティの中のビオリプロジェクト
ECO TEXTILE NEWS2009年8月号より抄訳
Mowbray Communications Ltd.
ビオリ・タンザニア
ビオリプロジェクトでは、長期的な視野に立ってFLO-CERTの認証を取得する計画をしている。
※訳者注釈 この記事の筆者は、2009年6月30日付けでビオリプロジェクトが、正式にFLO-CERTの認証を取得している事を知りませんでした。
FLO-CERTはフェアトレードなど社会的責任を果たしている事業であることを証明する認証機関で、ドイツのボンに本部を置き、世界70カ国の企業に認証を提供している国際的認証機関。
ビオリプロジェクトの生産責任者ツマ・シムソン氏の妹ジャスティナさんは、新しく出来た飲料水の井戸に向かう道すがら、記者のインタビューに語った。
ビオリが、コットンの農民に行ってきた社会倫理的な活動は、これから、もう一段ステップアップするでしょう。
私達は、FLO-CERTの認証を取る計画をしています。今、行われているビオリ社会倫理プロジェクトを更に発展させる事が期待されています。現在オーガニックコットンの認証についてはスイスのバイオ・インスペクタが行っていますが、この地域コミュニティ全体を監査して証明できるようにしたいと思います。
FLO-CERTを取り込むと、農民の農業訓練や借入金の期間延長や地域のプロジェクトとして組織を作り、主体的に資材購入の価格の交渉やオーガニックコットンの価格交渉が出来るようになる。
ビオリ・タンザニアが当初から行ってきた事は、環境面と倫理面の考え方を融合させる事であった。
ジャスティナさんは続けて
この計画を進め、農民から代表者を募り、組織を作るということは、オーガニックコットンを広めることと同じくらい価値ある社会活動なのです。
と説明した。
とは言え、まだ「社会的責任」を理解している企業の援助に負うところは多い。
例えば、今訪れているところに設備された飲料水の井戸である。
2009年の3月にムアンヤヒナ(Mwanyahina)の村のコミュニティに安全でキレイな水を提供する井戸が完成した。この井戸は、村に沿って流れる川が干上がった川底の下の水源の水位まで8メートルも掘って作られた。
そしてこの井戸は日本の株式会社パノコトレーディングと日本オーガニックコットン流通機構の寄付金で賄われたのである。
㈱パノコトレーディングは、ビオリプロジェクトの推進企業であるRemei社を通じてオーガニックコットンの綿と糸を日本市場向けに輸入している。
この井戸はメアトウ(Meatu)地域に出来た5つの井戸の一つであり、ビオリ・タンザニアによって保守管理されている。この井戸の恩恵は、村の人々にとって計り知れないくらい大きい。
このような生活支援は、ビオリ基金に集まる寄付金で運営されている。
寄付金はビオリのオーガニックコットンを扱う企業の協力を得て行われている。
6人の孫を持つ女性ニジル・マンダーゴさんは
井戸が出来てから、健康を感じられるようになりましたよ。
と語った。
主婦は、村から3キロメートルも離れた井戸に来て、バケツに水を張り、頭に載せる伝統的な方法で運んで行く。この地域には48家族が利用していて、少しずつ利用料を払い溜まったお金で、井戸の保管整備に充てている。
キレイな水は、健康をもたらし、日々の仕事にも勢が出る。
前出のジャスティナさんは
これはビオリの農家の人たちのためだけの水ではなく、コミュニティ全体のものだから、利用者がわずかづつでも支払う事は、いつまでも給水を続けて行くのに大事なことなんです。
と話してくれた。
次に向かったのは、ムワミシャリ(Mwamishali)小学校で、先生方は平屋建ての校舎
の外に出て我々を迎えてくれた。
校舎から離れたところにバスケットボールのゴールポストらしきものがある。
そのカゴは、アカシアの枝と古いオートバイのタイヤで出来ている。
資金が不足していることがわかる。
案内してくれた先生方のリーダーであるミエンカさんは
バスケットのボールさえ今はもうなく買えないのですよ。
と伏し目がちに言った。
続けて
この学校が抱えている問題は、水が不足しているとか教材が不足しているといったこの地域にある学校が共通して抱えている問題なのです。教材も不足していて一冊の教科書を4人で使っていました。教室には机や椅子もなく、生徒達は、床に座って授業を受けていました。その後、ビオリ基金から60台の机と椅子が贈られ、すっかり便利になりました。
と話してくれました。
煙の出ない調理用コンロ
従来、農民はもくもくと煙の出る木材を燃料にしてきた。
ビオリの支援で、また調理用のメタンガスのコンロを各家庭に提供している。
森林保護の観点から木材の消費を避けることと、リーメイ社が取り組んでいる二酸化炭素削減策のために行われている。
オーガニックコットン栽培農家のコンスタンティン・エノックさんの妻のエスターさんは鶏肉と御飯を混ぜ合わせながら話しました。
このガスコンロが来るまでは、部屋中煙だらけだったのよ。それに、このガスコンロの燃料の効率はいいし、火力も強いので、家族に直ぐに料理を出せるようになりました。
ビオリは現在38台のガスコンロを各家庭に設置した。
2009年中に119軒設置してゆく予定にしている。
このようなサービスは、ビオリプロジェクトに参加する農家を増やす事にも役立っている。
ビオリの飲料水の供給などの社会事業は、単に農民向けということばかりでなく、農民の所属するコミュニティ全体に貢献するように行われている。
この他、このコミュニティの経済活動を活発化させて自立できるように、女性達に縫製の技術指導をしている。
オーガニックコットンの収穫の際に使うコットンバッグの加工から始め、衣料品の加工ができるようになると、街の小売り屋さんに売ってもらい現金収入を稼ぐようになる。
ミシンも加工場も技術指導もビオリが世話をしている。
ビオリの社会倫理活動は、農民とその
コミュニティの人々に対して、教育訓練、健康、収入の機会を増やすよう活動している。
以上のビオリの活動の様子は、いつでも誰でも見ることが出来るようになっていて、
オーガニックコットンを買い付ける人々や支援者に納得してもらっている。