またまた新しい言葉「リスポンシブル・コットン」
アイデンティティ・コットン(Identity Cotton)を初めて聞いた時に、「自己同一性・自分を持っているコットン?」判りにくいと思いました。
要は、一般的なコットンではなく、無農薬であったり、
フェアトレードであったりと一般のコットン栽培が抱える
不都合な問題を解決する持続可能性のある綿花ということに
なります。
そして、またまたコットンの新しい呼び名が出てきました。
多少、食傷気味にもなります。
Responsible Cottonとは、なんでしょうか?直訳すると「責任のある綿花」です。
Responseは応答する、「ちゃんと答えを持っている」ということから「責任」という意味になり、
Responsibleは責任ある・・・ということになります。
何に責任を持つということでしょうか?
責任と云うと何か重く、堅いイメージになりますので、「意義ある」と訳したいと思います。
エコロジー、サステナビリティ、フェアトレード、エシカル等、総じて「意義あるコットン」と
云うことになります。
1月23日にアメリカ(テキサス州)NGO法人のTE(テキスタイル・エクスチェンジ)が、
リスポンシブル・コットンの説明会を開きました。
リーゼル・トラスコットさんがオーガニックコットンの現状報告をされ、
BCI(Better Cotton Initiative)の担当者のダーレン・アベニーさんが、環境そして働く人々へ配慮するという意味でよりよいベターなコットンの普及活動を報告しました。
またFairtrade Cottonにいては、NPOフェアトレード・ラベル・ジャパンの松井譲治さんが、
発展途上国の農業の状況と貧困の実態を説明し、いかにフェアトレード(公正取引)が必要かを
説明しました。
それぞれの特徴をみてゆきましょう。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<Organic Cotton>
・1990年代の初め頃から始まった。
・生産量は11万トン(2012/13)
・認証、認定制度があり、製品に認証ラベルを付けて区別する。
・認定基準の中にフェアトレードの項目がある。
・認証までの移行期間が3年と決められている。
・遺伝子組み換えは認めない。
・最終製品までの認証、認定を行う。
・認定、認証規定
【NOC】 独自基準に基づいて原料から製品までの審査し認定する。
【GOTS】 独自基準を使って第三者認証会社が審査し、原料から製品までの認証をする。
【TE】 独自基準を使って第三者認証会社が審査し、オーガニック綿の混率を認証する。製品認証はしない。
その他 政府機関の基準を使って、第三者認証会社が原料の審査し、認証する。
最終製品の認証はしない。
アメリカ (USDA NOP,National Organic Program)
カナダ (Canada Organic Regime)
欧州連合EU (Nr. 834/2007)
日本 (JAS)
オーストラリア (Australian Certified Organic)
インド (India Organic National Programme for Organic Production).
<Fairtrade Cotton>
・2004年からスタート。
・国際フェアトレードラベル機構FLO、非営利組織(本部ドイツ・ボン)
FLOはFLO-CERT認証会社を持つ。政府の支援関係はない。
・生産量は、2.1万トン(2012/13)
・認証制度があり、製品に認証ラベルを付けて区別する。
・原綿、商社、紡績、製織、縫製、卸売のサプライチェーンがフェアトレード規定
を満たすかを審査してFT製品として認証する。(FLO規準)
・綿花栽培について環境保全に配慮して有害な農薬の使用は規制している。
・オーガニックコットンの様な農薬使用禁止の規制はない。
・遺伝子組み換え種は禁じている。
・混率については、規制があるが、事情によっては、20%までの異種繊維の混合が認められている。
・認証までの移行期間の規定はない。
・PAN(国際農薬行動ネットワーク・ドイツ)の禁止12農薬などを参考に
規制基準を持つ。土壌改善、水質保全などの規定を持つ。
・主にインドと西アフリカその他ブラジル、ペルーの綿花栽培地域で活動している。
<Cotton made in Africa>
・略称CmiA(アフリカ産コットン)は、2005年から始まった官民提携の
プロジェクトで、貿易援助基金(Aid by Trade Foundation・ドイツ)が行う。
・検証システムは、オランダのワーゲニンゲン大学、コンサルティイグ会社などが
係り、原綿の栽培、輸送、綿繰り工程、倉庫保管などの規定を作った。
エコサート、アフリサートなどが、認証する。
・生産量、15.6万トン
・貧困な小規模自作農家の生活改善と環境改善を目的とする。
・アフリカ綿花の競争力強化のマーケティングが主眼で、農業技術の指導と農業者の生活基盤の向上を目指している。
・人体に害のある作業や児童労働を規制している。
・自然保護の立場から農業を規制する地域を設定している。
・マイクロ・クレジットの制度を持って農業者の金利負担をなくしている。
・遺伝子組み換え種の使用を禁じ、化学肥料や農薬を減らすプログラムを持つ。
・混率の規制や栽培の規制や認証などは特にないが、独自のラベルは発給している。
・大手企業と積極的に係り、アフリカ貧困支援への志向を持ちながら、低価格を
欲しがる消費者をターゲットにしている。
オーガニックコットンやフェアトレードコットンが、一部のハイエンド
マーケットの枠から広がらないマイナス面を補完する立場を取る。
<Better Cotton Initiative>
・2005年に発足した会員制の非営利組織(本部スイス)。
Ecom、ICCO、IDH、IKEA、H&M、Levi Strauss、M&S、Rabobank、Solidaridad
WWFなど大手企業が中心になって設立された。
・生産量 75万トン
・農薬の使用を減らし、農業用水の使用を減らし、フェアトレードを進め、結果として農業者を有利に導くことを目的としている。
・サプライチェーンの負担を減らし、低いコストの要求に応えられるようにする。
・ラベルの仕組みを持たない。BCIとしてのプレミアム(付加価値)を付けない。
・遺伝子組み換え種、化学肥料、農薬などの規制はしない。
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以上、一般の綿花栽培の問題点を解決してゆくという共通の目的で作られた組織の特徴を並べてみました。
12/13年のこれらの綿花の総生産量は114万5.000トンの規模まで伸びてきました。
10/11年と比べると3.5倍という成長ぶりで、大手ブランドを中心にエコロジーやフェアトレード等のテーマは、もはや外せない時代が来ていることを示しています。一過性のブームではなく、
今後確実に拡大してゆく方向がはっきりしています。
以上の考え方のコットンの他に、日本では、オーガニック認証までの移行中のコットンをプレオーガニックと称した製品や5~10%のオーガニックコットンと一般綿を混合した低混率のもの、国産綿で農薬を使わないからオーガニックコットンだ、と云ったものも大手商社などが係り、一斉に市場に出てきました。
価格的にもデザイン的にも一般のコットン製品と同程度で、買いやすく工夫されています。
そしてこれらのコットン製品の”意義”についての表示説明は抑えられています。
消費者にはこれらの”意義”は伝わっているのでしょうか。どれもこれも大差ない、なんとなく環境にも社会にもいい、それなら安いものがいい、ということになって関心が薄れるのが心配です。
特に、BCIコットンについては、巨大なマーケットに大手企業が扱いやすい形で侵入してゆくので、消費者は一般商品との違いを知ることなく拡がってゆき、コットン産業の問題点を知って、
改善してゆくという意識に繋がることはなくなります。
これら”意義あるコットン”の生産量が増えて行けば、結果として地球環境保全や公正な取引に改善してゆくのだから、それはそれでいいという意見もありますが、消費者が、本当の意味で改善を望み、選択的に商品を購入することにならないと、コットン産業の問題点は解決しないと思います。
オーガニックコットンが20年以上プロモーションしてきて、規制の厳しさ、価格が安くならないなどの理由から、一部のエコ意識の高い富裕層にしか拡がってゆかないという現実を埋める形で
これら多様な”意義あるコットン”が出現してきています。
さて、オーガニックコットンを扱う立場から考えて、どのようにビジネスを進めてゆくのか、
今一度考えるよい機会と思います。
沢山あって同じように見えるのなら、なおさらオーガニックコットンの素晴らしさ、NOCが
求めている価値観をマーケットに対して、はっきりとアピールしてゆく意味が強くなっています。
NOCラベルの付いた製品は、原綿から最終製品まで混じりけのない純粋性と安全面への配慮が
行き届いていることを証明されています。
実際に、過敏な体質の方々が、色々試した後、NOCのラベル製品を選んでいることが確たる証拠です。
以上の事実をもって、オーガニックコットンの普及活動に更にまい進頂けることを望みます。
平成27年2月4日 日本オーガニックコットン流通機構
宮嵜道男