「湯水のごとく」とは幸せなこと
”湯水の如くお金を使う”は、資産家の放蕩息子の浪費を嘆く時に使われます。
「湯水のごとく」は、水が只で手に入る価値のないものということから出来た言葉でしょう。
”日本人は空気と安全はタダと思っている”と山本七平は著書「日本人とユダヤ人」に書いています。
本当に、日本人は空気も安全もそして水もタダのように感じられる”超”幸せな民族です。
「空気清浄器も浄水器も水道代もホームセキュリティも安全のための保険もタダじゃないでしょう」と云うのは野暮なヤジです。
世界を見渡してみるとビックリします。
世界195か国中、水道水が飲める国はわずか13か国で、国全体どこに行っても水道水が飲めると限定すると、なんとスイスと日本の2か国だけと云うことになります。
これじゃ日本人が、水がタダと感じるのは仕方のないことです。
世界では、7億6800万人の人々が飲み水に窮しています。不潔な水が原因で病気になって死んでしまう
5歳以下の子供の数が年間50万以上とも云われています。
この写真は、東アフリカのエチオピアの風景です。何とものどかで、オレンジ色の竹籠風のオブジェが風景にマッチしています。
この芸術作品のようなオブジェは、Warka Waterと名付けられた飲料水装置です。
イタリアのデザイナーArturo Vittoriさんが開発しました。
全長9メートル、重さ60kg、価格5万円で、極く簡便な装置です。
昼と夜の気温差があって、そこそこの湿度があればなんと一日で95リットルもの水が装置の下の水受けに溜まります。
この地域に住む女性や子供は、一日に6時間もかけて、池や川に水を取りに行きますが、この装置があれば解放されて、女性は他の家事ができるし、子供は学校で勉強ができるということになります。
装置の仕組みは、単純で冬の寒い時期に、暖房で温められた部屋の窓は結露でびしょりになります。
これは部屋の空気の湿気が窓の冷たさで、水滴になったわけです。
竹籠の中のオレンジ色の袋は、化学合成繊維製の網で、この網に水滴ができ、下の水受けに流れ落ちてゆき、溜まるという仕掛けです。
2015年までの支援プロジェクトとして活動が進んでいます。
この装置は、地下水が少ないとか、汚染されているなどの井戸に頼れない場合に有効と云われています。
南米ペルーのリマも水不足で苦労しています。
年間降雨量が13mm(日本の降水量約1700mm)ですが、湿度は98%と高い地域では、大気を特殊な
フィルターに当てて、水滴にして水タンクに溜めています。
この他に、アフリカのナミブ砂漠に生息する甲虫(カブトムシ)が、大気中の水分を上手に取り出して生きているのをヒントにして、NBD Nanotechnologies社は、ナノレベルの精密な表面加工技術を利用して超撥水、超給水の材料を開発し、大気中の水分の取り出し装置を
作り上げました。
軍事関係からも引き合いがあるようです。
以上のように、ハイテク技術を使った装置は、湿度や昼夜の温度差など適用する条件範囲が広い点は優れていますが、
上記のWarka Waterは、価格も安く、電気も使わず、メンテナンスも要らず、普及の可能性は高いと
云えます。
いずれ、世界の乾燥地域ではこのオレンジ色の塔が、風景に当たり前に溶け込むようになると思います。
水の豊富な国に住む、有難さをひしひしと感じました。
平成26年7月7日 日本オーガニックコットン流通機構 宮嵜道男