セケム・プロジェクト・SEKEM[コラム 2018 No.21]

「サラマレンコ!」アラビア語で「こんにちは
パノコトレーディング御法さんのエジプト視察報告

エジプト・ポートサイドの街角にて

御法さんは、長らく超長綿糸のオーガニックコットンの供給を
受けていたHB社がオーガニック部門を廃止したため、これに替わる先を
探しました。
そして選んだ先は、SEKEMというエジブトの大規模なオーガニック農業 プロジェクトです

セケム・プロジェクト・SEKEM

1977年にイブラヒム・アボリシュ博士は、エジプト砂漠の真ん中に自然の力を信じて 農業地帯を構想して実現しました。
「砂漠で農業なんて無理だ」との声を横で 聞きながら、研究を重ね、粘り強く肥沃な農地に変えてゆきました。
オーストリアの哲学・神秘思想家の シュタイナーが提唱したバイオダイナミックス農法を採り入れました。   右:ゲストハウス外観


セケム(SEKEM)の意味は「太陽からの生命
エネルギー」という意味で従来の農薬に頼る 農業ではなく太陽や月や星の運行を農業手順に 取り入れるという徹底した大自然活用農業です。
写真: 創業者の名前が刻まれた石碑


このプロジェクトは、見事成功し 2003年には Right Livelihood Awardという国際的な賞を 受けました。現在は、農業を中心として、いくつもの関連会社や職業訓練センター、医療センター、保育園から大学(ヘリオポリス大学)まで立派な教育機関など備えた大規模な 農業コミュニティになっています。今回のオーガニックのプロジェクトはUNIDO’s Egyptian Cotton Project-国際連合工業開発機関に2017年から組み込まれています

http://www.unido.or.jp/about_us/unido/

昨年創立40周年の式典があり、御法さんは出席しました。一年ぶりの訪問です。 今回は、特にオーガニックコットン農家の人々との交流や責任者、スタッフの皆さんとの親交深めました。昨年は紡績工場を視察し、今回は綿繰り工場を視察しました。両方の設備の充実と労働境などが良好なことを確認できました。

地図は地中海周辺の国々を示しています。当該の地はDamiettaドゥミヤートです。

以下御法さんの報告です・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10月11日カイロ 国際空港に到着

セカム(SEKEM)が手配してくれたドライバーのアハメメドさんが空港で出迎えてくれた。空港から約1.5時間で SEKEMに到着。事務所、工場、学校、考古博物館等が敷地内にあり、ここで約1,700人が働いている。セカムの創業者アボリシュ博士は、昨年6月、80歳で亡くなられた。砂漠の中に奇跡のような緑多き農業地帯を拓いた。本当に偉大な人物だと感心した。

空港から約30分くらいのところにSEKEMのヘリオポリス大学があり、その建物を見ながら通過した。(http://www.hu.edu.eg/)保育園から大学そして職業訓練学校も含め教育に非常に熱心なことが分かる。

ゲストハウスで一休みしていると
オーナー社長の奥様に促され集会
広場へ行った。 翌日が金曜日で休日前の集会があるという。
午後3時45分ごろ三々五々大きなサークル広場に従業員が集まった。
4時になるとオーナーや幹部職員が大きな声で15分程のスピーチを
行った。その後、オーナーたちが
日頃の働きに感謝して従業員一人一人とにこやかに握手していた。

10月12日 ドゥミヤート(Damietta)の農場を視察

 早朝3時45分、モスクのスピーカーからコーランが流れ始める。これを聞いて起床した。コーランは、日に5回放送され、人々はその度にお祈りする。
ドライバー兼通訳のヤサーさんは約束の4時に三菱自動車ランサーで迎えに来た。かなり走り込んでいる様子で一瞬不安がよぎる。ところがそれから、約2時間半ハイウェイを130-140km/時で疾走した。
もちろん、こちらでは速度制限はないのでパトカーに捕まることはない。対向車線の分離を示す白線は、とうの昔にすり減って消えており、すべて自己責任の世界でしばらくは不安を覚えたが、いつの間にか慣れっこになって眠気まで出てきた。
前の晩は、土地の人も驚く大雨であったそうで、到着すると道路のところどころで水溜まりが見られた。綿も濡れているので本日の収穫は無理との連絡が入った。それでも、農業指導員2人と一緒に畑に向かったところ、ところどころで綿摘みの農夫を見かけた。

一縷(いちる)の望みを抱きながら行ってみると地主さんに会えた。
畑へ行って作業風景を撮ろうとカメラを向けるが農夫の女性たちは恥ずかしがり、カメラ目線をくれなかった。
すでに収穫を開始して2週間経過しておりほとんど採り尽くし、最終の収穫ということで綿の量はごく少なかった。来週中頃には終了とのことだった。

右:地主:Al-Seddik Rashad さん(72歳)
20年SEKEMと契約している。
Lelmrabiien village, Damietta niteELSC(超長綿)栽培に従事

左:農業指導者:Ezzet Mohamed さん(62歳)
25年SEKEMで従事

農作業は、日中は暑いので 早朝から 午前10時頃までしかできない。 午後は、日陰でのんびり過ごす。コーヒーショップでチャイを飲んだ。隣の席の男性は水タバコを吸い始めた。すると我がドライバーも誘われるように 水タバコを注文して約1時間休養した

農業指導員の宿舎の近くに地中海に面した 砂浜があり、そこで散策。
海水浴を楽しんでいるいくつかの家族が 散見された。もちろんビキニはありえない。

宿舎でナツメヤシの実(かなり甘い)を食べながらまたまたチャイタイム。
コーヒーも紅茶にも現地の皆さんは沢山の砂糖を入れる。口をサッパリさせたいのだろう、チェイサーと呼ばれる水が付いて来るのが一般的。

車窓から何気なく見ていると大量のコンテナの山が動いている。エーっ!と思いドライバーに聴いてみるとスエズ運河のコンテナ船が航行中だという。
ハイウェイが並走しているのでコンテナの山が陸を走っている様に見えたのだった。

地中海に面したアレキサンドリア、ポートサイド (スエズ運河)の活気あるコンテナの集積港の様子

ナツメ椰子プランテーション。
エジプトの一番のお土産はデーツ・ナツメヤシの実。
デーツは、古代エジプト紀元前3000年以来の重要な食料。彼のクレオパトラの好物だった。
イラン、サウジアラビアと肩を並べる主要産地。
エジプトは世界の16%を生産。

宿泊のホテルは、ネットの人気ランキングでチェックした。
なかなか見つからず、結局5段階評価の2で、利用者の口コミ評価は酷いものばかりだったが妥協した。とりあえず夜露がしのげて、シャワーの水が出れば それで良しと諦めた。
夜はドライバーがシーフードレストランに案内してくれた。具だくさんのスープとフライの魚にありつけた。これが意外とうまかった。ドライバーも満足げだった。残念なことにここはイスラムだから「アルコールは無し!」だった。ホテルに戻ると、ドライバーの部屋でまたチャイと切れ目のない おしゃべりが延々と続いた。…本当にアラブ人は話好き。

10月13日綿繰り工場視察

 Damiettaから車で南西に約2時間半のMinyet  Samannoudへ向かった。 綿繰り工場 ARAB ginning of cotton CO. に到着。
工場の課長M.Hannaさんに 面会。この会社は25年前に民営化され現在私企業。
綿花収穫後の10-12月に工場は稼働する。オーガニックコットンの加工の時はSEKEMの責任者Ezzetさんの立ち合いの下、入念に清掃され、作業に入る。彼は加工期間中も常駐し監督する。
綿繰りの機械はすべてローラージンで約80機設置されている。
ローラージン方式は、一般的なソージン方式と比べて、生産効率は劣るが 繊維にダメージを与えない優れもの。
量より質を重視するオーガニックコットンならではの方式である。

工場を見学する前に、ハンナさんのオフィスで、約2時間のチャイタイム。その間、職員が来て話し合いがあって、何やら口論となり、激高して大声で怒鳴り合いになった。
どぎまぎして様子をうかがっていると、話は収まり職員は部屋から出て行った。


その後は何もなかったようにこの笑顔 アラブの女性も強し!!

この日も同じ部屋に宿泊し、街のお店で購入したナンにお菓子、ポテトチップ、チーズでチャイと
ドライバーの長話。これがディナー。このような所では、多くは望めない。 帰国後、粗食の反動で食べ過ぎて、体重加算中。

1014日ポートサイド周囲の見学

スエズ運河の地中海側の港街を見学、石油コンビナートなどあり街中は活気があった。
街には物が溢れていた。殆どが中国製。途中運河を横断している立派な橋が掛かっていた。聞くとこれは日本政府がODAで無償供与したものだった。

セーカムの活動のホームページ(英文)
https://www.sekem.com/en/with-an-air-of-cultural-harmony-sekem-celebrates-its-organic-cotton-harvest-for-the-second-consecutive-year/

BIO DYNAMIC農法の認証はドイツのDemeterが世界的に有名ですが、この度パノコトレーディングが扱う超長綿は エジプトのギザ92 で、イタリアの ICEA によるGOTSオーガニック認証にしました。

ICEA: Institute for ethical and environmental certification  

さらに詳しく知りたいは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

パノコトレーディングのホームページに詳しく報告されています。どうぞご覧下さい。

https://www.panoco.co.jp/report_wp/?p=1673

                    日本オーガニックコットン流通機構

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