コラム 2018 No.5

種まきSAKURA

 

今年も見事にさくらが

咲きました。

冬の寒さで凝り固まった身体が、桜を見ると一気に解放されて緩みます。

本格的な春の到来です。

2月の沖縄の寒緋桜、3月に入って寒桜、山桜、4月になる一斉に染井吉野

そしてその後八重桜、霞桜と5月までさくら前線は華やかに北上してゆきます。

まるで天女が日本列島をさくら色の羽衣でさらりと撫でるようです。

 

英語で桜は「cherry blossom」です。でも今や世界中の人が特別な花としてSAKURAと呼ぶようになりました。

チェリー・ブロッサムは「花の咲く桜」という意味で、わざわざ「花咲く・・」と

称するのは、西欧では桜の実・さくらんぼの方が普通で、花咲くのは特別なのです。

花より団子と云う訳です。

我が国では花の方に重きを置いて、古くから狂ったように品種改良に勤しんできました。

日本人が大好きで、心情にピタッと合う花木なのでしょう。パッと咲いて惜しまれながら潔く散ってゆく、本居宣長の「もののあわれ」に通じ、日本人の精神性を

象徴しているようです。

無邪気な若い女性たちが桜の小枝で「花の冠」を作り、被って満開の桜の前で

最高の笑顔で写真を撮り、インスタグラムに掲載したところ、評判を取れるどころか、大ヒンシュクの嵐に見舞われたそうです。若い人たちも桜への想いが強いことを知って嬉しく思いました。

 

桜は結構手間の掛かる植物で、「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」と云われ、桜の枝を切ると切り口から腐りだすので手厚い養生が必要になります。

良い品種を作り出すためには接ぎ木が必須で、苗木の養生には目を離せない苦労が付きまといます。

桜は、400種もの品種があって、日本全国の街路樹には49万本も植えてあるとのことで驚異的です。因みに街路樹ベスト3は、1位イチョウ(57万本)、2位さくら、3位ケヤキ(48万本)の順です。 長野県伊那谷の桜を育てたことで有名な森田和市さんは、50年前から桜に魅せられて、夢中になり、家をほったらかしにして、離縁騒ぎまで起こしたと云います。それほど品種改良に集中する人生でした。

人生ごと桜に尽くしてきた79歳の森田さんは、「桜を守って来たんじゃないですよ、私が桜に守られてきて、後悔のないいい人生を歩ませて頂いたんです」と感謝しきりです。

 

さて、日本は農耕の国でした。豊かな作物は大自然の恵みとしてきました。

冬の農閑期から農作業を始める時期を桜の開花の時期に決めてきました。

「種まきさくら」とか「田植えさくら」と云う言葉が残っています。

 

日本では古来、事の始まりは、同じように桜の咲く4月にしてきました。

会社の新年度も4月です。

多くの国は1月が年度初めになります。アメリカは10月が新年度です。

学校の新学期は、世界の国々では9月です。

日本も明治新政府が近代化のために、世界の標準に合わせて9月にしましたが、どうもしっくりこないのか、大正時代には満開の桜の下で新学期を始めるように

なりました。

 

やっぱり事の始まりは桜の季節から始めるのが「大吉」となるのでしょう。

梅の花が先駆け、桃の花が期待を盛り上げ、そして「待ってました!」と

桜がど派手な登場をする、「美し國日本」の春のなんとドラマチックなことか。

 

NOCも総会が終わり、新理事長、新理事の皆さんも新たな気持ちでNOCの発展に意欲を燃やされています。いい一年にしてゆきましょう!

 

平成30年4月5日

 

日本オーガニックコットン流通機構

顧問 宮嵜 道男 (文責)

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