一所懸命・頑張る[コラム 2019 No.9]

一所懸命・頑張る

「一所懸命」は、先祖伝来の所領を、命を懸けて守り通すことが本来の意味です。最近では一生懸命と変わり、命がけで頑張ることと一般化しました。頑張るも、本来は「我を張る」で頑(かたくな)で、意固地になることでした。欲しい物を買ってもらえなくて怒ってご飯を食べない子供に、「そんなに頑張るなよ」という親の言葉に近いようです。一般的に「頑張ってね」という時の頑張るは、もっと前向きで「全力をつくせ」とか「後悔しないように」という応援の意味の方に使われるようになりました。

NOCの会員の中には創業してから100年に達する、またはとうに100年を超えているという長寿企業があります。伝来の土地で代を重ねながら繊維の仕事を続けています。
英語で「企業のあり方」という意味でGoing Concernという言葉があります。直訳すれば継続企業となりますが、企業にとって最も価値のあることは長く続けることという意味が込められています。
世の中の役に立つものを提供し続けてきたからこそ、企業として永く存続できました。

世界で100年以上の歴史を持つ企業を数えてみると、なんと80%が我が日本にあり、2017年時点で33,069社ありました。日本の世情が安定してきたこと、永く続けることは信頼と同義語であることを日本人が深く了解しているから、このような誇るべき数字となったのでしょう。

フランスにはエノキアン協会という200年以上永続した企業の集まりがあり社会から一目も二目も置かれる存在です。ヨーロッパなどでブランドロゴの下に小さく「since 1800」というような創業年を表記して老舗ぶりをアピールするものを見掛けます。やはり「歴史がある」という重みはその製品やサービスへの安心感に繋がっているということでしょう。

日本の100年企業に共通しているのは、常に進取の精神に富むこと、本業を大事にしている事、そして最も大事なことですが、神仏を含めて大自然の摂理に沿った発想をして、常に感謝の意を懐に収めています。

この精神は、オーガニックコットンの本質に通じ、現代が最も重視している指針

「サステナビリティー」の考え方そのものです。

NOCの会員企業の中で「一所懸命・頑張ってきた企業」を紹介します。

壷内タオル(株)   1928年  90
(株)前田源商店   1921年  97
(株)土田産業    1913年  105
カクイ(株)     1881年  137
浅記(株)      1869  148

これらの企業の経営者の皆さんに以下のような質問をさせていただきました。

1 永続できた理由は何とお考えですか?
2 永続してきてよかったことは何ですか?
3 企業を永続させてこられた中で、

社是、座右の銘、モットーなどがありましたらお聞かせください。

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壷内タオル(株)

1.永続できた理由は何か?

・創業から昭和40年頃までは日本も成長期で、作れば売れる時代でした。昭和49年のオイルショック以降タオル業界も徐々に難しい時代に変わっていったようです。その中で二代目である私の父は借金をしてでも事業を伸ばすか、身の丈の範囲に留めるか、の分岐点に立った時に後者を選びました。以降私に至るまで大きな借金をせず身の丈経営を続けてきたことが良くも悪くも継続につながったと考えています。

2.永続してきてよかったことは?

・あまり意識することはありませんが、敢えて挙げれば ”信用”でしょうか。

3.座右の銘

・ありません。強いてあげれば”三方よし”でしょうか。三方よし、すなわち取引先、自分、世間様、自分の商売に関わるすべての人が良かったと思える商売、これはそのままフェアトレードの精神に通じます。

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(株)前田源商店

1.永続出来た理由

・時代の流れに沿って対応出来てきたこと。
・取り扱い製品が変化しても織物という括りの中では統一性があったので。(違う業態のビジネスをしてこなかった・ノウハウが全て活かせた)

・色々な方のご指導ご鞭撻の賜で。

2.永続してきて良かったこと

・地域や関わる方々とずっと一緒に仕事が出来てきたこと。

3.社是・座右の銘・モットー

・共存共栄
・人間性の向上を目指す(自分(前田市郎)の気持ち)

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(株)土田産業

1.永続できた理由

・社員そして取引先との信頼関係をベースにつねに時代の変化に対応出来たのかなと思います。

2.永続して良かったこと

・将来を見据えつねに魅力ある企業とは、という事を考え努力してきた事です。

3.社是・座右の銘・モットー

・やはり「継続は力なり」が理念、100年、200年そして永遠に存続できるような企業をめざして経営していく。
・座右の銘は、「人間万事塞翁が馬」、ポジティブ思考でマイナスをプラスに解釈してつねに前向きに物事を捉えることを心がけています。

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浅記(株)

1.永続できた理由

・浮利を追わず 不易流行

2.永続して良かったこと

・信用得た先祖からの信用を繋いでいきたい。

3.社是・座右の銘・モットー

・優しいけれど甘くなく、厳しいけれど冷たくなく。
・信用を失うのは一瞬、取り戻すのは一生。

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アンケートにお答え頂いた皆様に深く感謝申し上げます。

実利を目指すビジネスの世界は、人間としての生き方とは相容れないものかと感じてきましたが、皆さんのお答は人生訓そのものでした。
この企画を通して本当に勉強になりました。ありがとうございました。

 

文責:日本オーガニックコットン流通機構
宮嵜道男(顧問) 10.31.18