コロナ禍下でのTEの声援[コラム 2020 No.16]


コロナ禍下でのTEの声援

TEテキスタイル・エクスチェンジ(アメリカ)のオーガニックコットン・マーケットレポート2020を読むと、この異常なコロナ・パンデミックによって縮み上がった市場状況を何としても踏みとどまって、ピンチをチャンスに換えて欲しいという意図が一貫して表われています。
鼓舞する声を上げている時、その裏側には真に深刻な状況があるという見方があり、オーガニックコットンの市場状況も他の繊維産業と同じように相当に厳しいところにあるものと思われます。
一方、オーガニックコットンの生産量は、ウイルス感染下でも順調に伸びてきています。

まずはその辺の数字を見てゆくことにしましょう。

2018/2019のオーガニックコットン産地データ
ファイバー(繊維)の生産量   23万9787トン
*この量は昨年比31%の増加率で、その前の2016/2017の年と比べると
56%もの増加となっている。将来の需要増を見越して生産意欲が増していると見られる。
世界のコットンの総生産量に占める割合は、0.93%で惜しくも1%を超えることは出来なかった。

オーガニックコットン生産国は 19ヶ国
オーガニックコットン従事者数 222,134人
認証オーガニック農地面積   418,935ha
転換中オーガニック農地面積     55,833ha
*認証転換中の農地は13%に当たり、単純に13%の生産量が増えるとすると
来年の生産量は軽く1%を超える模様である。
オーガニックコットン関係者の積年の目標は10%(約200万トン)に達することに
あるので、まだまだ先は遠いと云わざるを得ない。

世界の主要生産地
インド     51%
中国      17%
キルギスタン  10%
トルコ     10%
タジキスタン  10%
タンザニア    2%
アメリカ     2%
以上7ヶ国で全体の97%を占める。
*生産量が増えて、マーケットが軟調だと価格的にも軟調となる。等級や条件がちがうが平均して18%~25%位の価格下落を起こしている。
相場はインドで平均キログラム当たり2.1ドル程度である。

この度のレポートで特に指摘されていたのは、中国政府の新疆ウイグル自治区に対する厳しい政策の問題があって、綿花畑や関連生産施設での強制労働、不当な労働条件や児童労働への懸念に触れられていました。昨今のトランプ政権の対中国政策の影響がこんなところにも出ているようです。もっとも昨年11月にニューズウィーク誌で、ユニクロや無印良品が扱う新疆綿はウイグル自治区への中国政府の弾圧下で生産された原料であると報じられました。
SDGsを国を挙げて取り組もうというこの時に、このような不見識な事業態度は問題です。
日本人も日本企業もこのような問題を前にすると、建前は建前、商売は商売だからと本質を煙に巻くことがよくありますが、国際社会は一歩も二歩も先に進んでいて、認識の甘さを許される時代は過ぎ去ったことを知らなくてはなりません。もう一つ大きな問題は、このニュースを日本のマスコミが採り上げないと云うことです。広告スポンサーのダメージにならない配慮としたら、新聞やテレビの報道意義を疑われることになります。
日本人が先進国の中で、エコロジーやフェアトレードに関心が、離れて低い理由の一つにマスコミがこれらの問題を採り上げないという事実を重く見る必要もあります。

TEがオーガニックコットン事業者に宛てたコロナ禍の苦境を脱する応援メッセージを紹介しましょう。

行動を起こしましょう
個別にコットン製品を販売してゆくという従来の発想からネットワークされたコミュニティに商品を投入してゆこう。
特定のサプライチェーンでビジネスをする時代は終わりました。 オープンなビジネスの関係で異分野にも拘わらず、人間関係を重視して信頼を築くことが回復力につながります。

多様性と複雑性を受け入れる。
答えを見つけるために、暗い部屋に閉じこもっていてはなりません。
システム思考で、最善の解決策を組み立てましょう。例えばSDGs持続可能な開発目標17項目すべてに照らし合わせて商品政策を考えてみましょう。

ビジネスパートナーと密なコミュニケーションをとる。
電話をするか、ビデオ通話をセットアップして、状況の変化や相手の考え、最適な立ち位置を共有しましょう。課題について一緒に考え、共感できるパートナーシップを持ちましょう。

適応と革新。
変化は難しいものでありますが、現在世界的なコロナウイルス・パンデミックによって変化せざるを得ない状況になってきています。
この状況をマイナスに捉えないで逆に活用してゆく意気込みで目的を再設定してゆきましょう。

ビジネスの “より良いビルドバック “を
一緒に仕事をしましょう。
何かと何かをくっつけて考えたり、引き離してみたり、スケールを替えて見てみたり、ビジネスのタイミングをずらして考えてみたりと思考実験をしてみましょう。
全員が一丸となって解決策に取り組む仕組みづくりも重要です。

この活動を「再生」と呼ぶか、「オーガニック」と呼ぶか、「持続可能」と呼ぶか…私たちは全員が同じ旅に出ます。デメリットの最小化からメリットの最大化を正確に捉え、単体でなく全体的な視野をもって前向きに進むことにしましょう。

文責:日本オーガニックコットン流通機構
顧問 宮嵜道男 8.21.2020