無私無欲と傲慢我欲
2016年という年は、稀にみる面白い年です。
真っ白な人達と真っ黒な人達が交互に現れて縞模様になっています。
南米ウルグアイの元大統領ムヒカさんが来日してマスコミが一様に礼賛しました。本物の無私無欲の人物でした。
一方パナマ文書なる租税回避の実態が露呈し、世界のリーダー達の蓄財が明るみに出ました。タックスヘイブン(租税回避地)は、パナマの他、有名なところではケイマン諸島など世界中に沢山あり、保有総額は900兆円~3500兆円になると推測されています。
日本の国家予算が100兆円としてもその10~30倍、その凄まじい傲慢我欲には驚かされます。 小さいところでは、東京都知事が公私混同で豪遊して発覚し、記者会見では傲慢我欲な物言いで釈明し、ひんしゅくを買いました。
これらに対して、無私無欲のもう一人の人物は、インドの社会運動家カイラシュサティヤルティさんです。 先週の土曜日(5月14日)の夕方に、来日したサティヤルティさんの話しを聞こうと600人以上の人たちが集まりました。大学の講堂で開催されたせいか女子大生が多かったようで華やかでした。
サティヤルティさんは、現在62歳。マディヤプラディッシュで生まれたそうです。この出生地はまさにbioReプロジェクトの本拠地で、親しみが湧きました。1980年に児童労働の悲劇に出くわして、電気技師から人権活動家に転身しました。これまでに8万5000人もの囚われの子供たちを救ってきました。 そして世界的なネットワーク活動を行い、実質的に児童労働の数を減らしてきました。
この功績が高く評価され、2014年にノーベル平和賞を受賞しました。この時、女性の教育の権利獲得のために活動してきたパキスタンのマララ・ユスフザイさんと共に受賞しています。
サトヤルティさんは、「現在地球上の人口の40%は18歳未満の子供たちで、その中で何百万人もの子供たちが苦境の中にいます。ここにいる皆さんは大変幸運です」と語り始めました。
「世界には2億人の大人たちが失業しています。そして児童労働の子供たちが、1億6800万人います。これはどうしたことでしょうか?子供は安い賃金で働かせられるのでこうなっているのではないでしょうか?」
洋服、サッカーのボール、靴、絨毯やカーペット等々身の回りの安売り品の裏側には、年端も ゆかない子供たちの犠牲があることを知って欲しいと訴えました。 改善する有効な手段は、消費者がこのことを知って、児童労働のない商品を買うことと断言しました。
サトヤルティさんは、児童労働反対運動として「グローバルマーチ」と名付けたデモ行進を世界中で行ってきました。地球2周分を歩いて訴えてきました。やがて、国際労働機関ILOの「18歳未満の子供たちの有害な労働を禁じる」条約採択につながりました。
グローバルマーチが日本でも行われ、その時のデモ活動に参加した人たちが、現在のCL-Netを展開するNPOのACEの皆さんで、今回この講演会を主催しました。
NOCはこの組織のメンバーとして協力しています。
サトヤルティさんは、満面の笑顔で「2025年までに児童労働を完全に終わらせる目標に向かって、みんなで頑張ろう」と力強くこぶしを振り上げ、会場の声を合わせました。苦境にあえぐ子供たちの沢山の話を聞いて、理不尽な現実に涙が出ました。
インドのコットン畑の児童労働の数は40万人でその7~8割は女の子です。多くはコットンの種の生産地域で長時間、低賃金で働かされています。畑の農薬の影響で呼吸器疾患や皮膚病に苦しんでいます。今でも根強く残るカーストの低い層の家庭の子供たちです。
NOCのオーガニックコットンの普及活動には、フェアトレードのテーマが色濃くあり、当然この中に児童労働を根絶してゆくという意図があります。一人でも多くの方に児童労働の存在を伝える努力を続けてゆきましょう。
平成28年5月18日 日本オーガニックコットン流通機構 宮嵜道男