とことんオーガニックシンポジウム2011
日本におけるオーガニック・マーケット調査(OMR)2010-2011」報告会
「とことんオーガニックシンポジウム2011」
当シンポジウムは、2011年6月10日、朝10時から、夕方6時近くまでの長時間、国会議事堂の真向かいにある憲政記念館で行われました。
・日本のオーガニックのマーケット規模はどれくらいか?
・消費者はオーガニック製品をどのように見ているか?
・オーガニックに未来はあるか?
などなど皆が共通に持っている疑問について従来、答えられるすべがありませんでした。
政府の政策や意図に影響されないためには、民間で行うというはっきりした意志があり、40社以上の企業からの寄付で調査され、報告書が作成されました。
報告書は、2009年に作業がスタートし、翌年2010年9月に完了しました。
報告会は、東日本大震災の慰霊を込めて一分間の黙祷の後、有機農業推進議員連盟ツルテン・マルテイ事務局長(参議院議員)の挨拶から始まりました。
続いて徳江倫明OMR代表からこの調査についての説明がありました。
徳江氏は、有機農業の普及に35年もの歳月を掛けてきたが未だ、有機農産物の占める割合は0.18%で1%に、遥か遠いと嘆くところから議論をスタートさせました。
・オーガニック食品の消費者像は、所得が高い50歳を中心とした女性たちでした。
・ほとんど毎日、有機食品を利用している人たちが全体(全国2,000人のネット調査)の0.9%あり、週一回程度の利用とした人は21%でした。
・有機食品の日本の市場規模は1,300~1,400億円。有機ではないが環境配慮型の食品と範囲を広げると6,000億円と見積もられ、将来の可能性は明るいと結論しました。
・「オーガニック」という言葉を、ほぼ全員(97%)知っていましたが、正確に理解している人となると、わずか5%で、業界の説明努力が足りないことを猛省しなければなりません。
・価格イメージは、「オーガニックは20%くらい高め」という結果です。これは妥当なところで、「条件が揃えば十分買える範囲である」と消費者は答えています。
ではその条件とは何かが問題です。
消費者が有機食品の情報をどこで得ているかという設問に対して60%が「店頭」と答えました。これにはみんな驚いたそうです。マスコミの広告やインターネットでお金を掛けて、繰り返し告知しても伝わらず結局、購入の直前に、商品の脇に立てられた説明カードを見て決めているということで、店頭の飾り付けや演出そしてPOPのキャッチフレーズの重要性がはっきりしたのです。
日本の消費者は、「健康や安全やおいしい」など自身のメリットで購入するアメリカ型か「社会性、理念」を重視するヨーロッパ型かどちらに近いか比べみると、はっきり利己的なアメリカ型ということが読み取れました。広告の作り方、キャッチフレーズやアピールのポイントを絞るのに参考になります。
まだまだ「品揃えが貧弱」、「野菜などの小分け」の努力が不足しているなどの現状の問題があり、いまひとつ普及が伸びない原因であることが報告されました。問題が判れば改善してゆくポイントが判り近道になります。
新たに農業に参入している若者中心の企業や組織団体の代表者達は、従来の農薬多用型の慣行農業には眼中になく、持続可能な有機農業を選んでいます。日本の有機農業の将来の明るさを確信させてくれました。30歳前後で活躍する若い有機農業の関係者が登壇してそれぞれの活動を紹介していました。
この若者達にとって有機栽培は特別な物ではなく、将来を見通したら有機栽培しか考えられないと力強く宣言する姿を見て、思わず目頭が熱くなりました。
アメリカのオーガニック市場は2.3兆円、食品市場全体の3.5%、EUは2.6兆円、それぞれの国別でオーガニックの比率を見るとデンマーク6.7%、オーストリア5.3%、スイス4.9%、ドイツ3.4%で日本の0.18%と比べてはるかに大きい市場占有率です。金額にすると、ドイツが8,190億円規模、フランスが4,131億円で日本は1,300億円ということで見劣りがします。
EUでこのように占有率が伸びたきっかけは、1986年のチェルノブイリ原発事故とBSE狂牛病問題そして1999年の遺伝子組み換え作物が社会問題化したなどの時々でした。消費者は現実に起こっている問題に対してかなり敏感にライフスタイルを変えていることが読み取れます。但しEUは、各国が共通して、政府の方針として補助金などの支援をした事実もあるそうです。
一方アメリカの場合は、オーガニックに対して、政府の援助などはなく、あくまでも民間の小売り業者が将来を見越したマーケティング戦略として積極的に有機食品を扱ったために伸びたのでした。
消費者に最も近い小売り業界がどれだけ積極的に扱うかが本格的に成長するポイントのようです。日本の小売業者は、残念ながら、まだまだ積極的にアピールしているとは云えないのが現状です。メディアでもオーガニックを専門にした雑誌の寿命は短く現在はほとんどないのが現状です。
話しはやはり福島の原子力発電の事故に及び、この事故から気付かされたのは「美しく安全な国土」は国民の共通財産であり、土壌や生態系を壊す農薬の使用や生命の形を換える遺伝子組み換え技術から早く決別して、1,000年経っても豊かな国土を維持できる技術の進歩が大事だと結論付けられました。
途中、農林水産大臣の鹿野道彦氏がオーガニック業界にエールを送る場面もあって、これからの成長産業になる可能性を十分感じさせてくれました。
日本オーガニックコットン流通機構 理事長 宮嵜 道男