コラム 2018 No.7

知れば知るほど知りたい疑問

オーガニックコットンの勉強をして、ひと通り理解した後「あれっ?それってどういうこと???」と疑問が湧くことが あります。

そういうテーマを考えてみましょう。

コットンはリサイクル商品か?

天然繊維の優れたところは、土中や水中の微生物により、分解して無機物にすることが良いということです。

綿製品は、条件によりますが、土に埋めてから数週間から6カ月で微生物に分解され、土になっていきます。

ここでいう条件とは、綿製品の染色その他の化学処理の度合いや土壌の温度、土壌の質(微生物の量)などで、微生物が活発に働ける条件が良いかどうかで決まります。

これに対して化学合成繊維、プラスチックは500年以上掛かります。

500年も掛かるんじゃ使い回そう、というのがリサイクルの発想です。

綿は、分解性が優れているので基本的には、リサイクルの必要は、ありません。

綿製品のリサイクルは、一般的には雑巾、フエルト、軍手などがあります。

回収した綿製品を反毛の機械に掛けて繊維の状態まで戻す考え方です。

そのリサイクル綿繊維で改めてフエルトに加工したり、糸に加工して軍手などを作ります。

ただし、ここで注意しなければならないのは、そのリサイクルの方法が、本当に省資源、省エネルギーに役立つかということです。

使い古しの綿製品は、価値がないように見えますが実際には、回収のためにトラックを走らせるガソリン燃料、反毛の機械を動かす電気エネルギー、回収の作業をする人件費は、社会的なコストとして見合うかどうかということです。

綿は毎年、主に途上国の農業者が生産し、その人々の生活を維持する重要な収入源になっています。

この産物を買って、途上国の貧困農村を助けているという側面もあります。

これに対して、価値のない汚れた使い古しの綿製品を貴重な石油資源を使って、わた繊維に戻して安物商品に作り直そうとすることは、社会的損失ではないでしょうか。

繊維製品の廃棄状況は、平成21年度の(独)中小企業基盤整備機構「繊維製品3R関連調査事業」の報告書にあります。

繊維製品全体の廃棄の量は、171.3万トンとしています。

衣料品が94.2万トン、カーテン29.6万トン、カーペット32.9万 トン、タオル15.2万トン、 ふとん26.1万トンこれに対して、繊維製 品全体のリサイクル率 は9.5%、リユース率は10.0%、リペア率は2.6%で、再利用率は、22.1%です。
その他は、焼却されています。

再利用の方法としてユニークな成功例があります。

2010年6月に日本環境設計(株)は、タオルの名産地・愛媛県今治に繊維製品をエタノールに変える工場が稼働を始め、現在も順調に業績を上げています。

エタノールの原料はセルロースで、あらゆる植物はセルロースからできているのでこのプロジェクトの拡張性、将来性は明るいと見えます。

米を取った後のもみ殻は、40%、同じように杉、ひのきは、53%がセルロースです。

綿は、なんと95%がセルロースで圧倒的にこのプロジェクトに向いています。

50トンの綿製品から20キロリットルのエタノールが生成されるといいます。

原理は、グルコース(ぶどう糖)の重合体であるセルロースを酵素で分解(壊す)すると元のグルコースになり、これをアルコール発酵させれば、エタノールになるという単純なものです。

エタノールは燃料だけでなく広い用途があります。

エタノール生成の工場と聞くと、石油化学の大規模な工場が熱と動力でエネルギーを多用して煙を出しながら操業するイメージがありますが、この工場は発酵の工場で、微生物の発酵を維持するだけなのでお酒の工場のように静かです。
エネルギーの消費が少ないエコロジー工場です。

なぜアレルギー症にはオーガニックコットンなのか?

オーガニックコットンは、日本に入って来た時からアレルギーの患者さんたちに使われてきました。その訳について見てゆきましょう。

アトピーアレルギー症

1990年以降、幼児が原因の分からない「しっしん」や不快な「かゆみ」に悩まされ、多くの母親たちの不安を呼びました。

原因がわからないという意味の「アトピー」という新しい言葉がついて、アトピーアレルギーと呼ばれ、アトピー対策として改善や治療の商品が多く発売されました。

アトピー症の対処法としては、肌を清潔にして保湿し、その上でできるだけ肌を刺激しない繊維素材の服を着せることが専門医から指摘されました。

一般的な繊維製品の加工工程では、漂白、染色、柔軟加工等々、化学処理が幾重にも行われています。

専門医は、ここで使われている化学物質が肌に影響している可能性があり、化学処理の少ない衣料品を身に着けることを薦めていたのです。

オーガニックコットンの製品は、無農薬の綿素材を使い、糸、生地の加工工程でもできるだけ化学処理をせず、純粋・生成りの天然な特性をいかすことを目指して仕上げられてきました。

この化学処理をしていない製品が、アレルギー症の患者さんたちに受け入れられてきたのです。

化学物質過敏症

アトピーアレルギーは、免疫系の疾病で、主に幼児、若年層で発症します。

これに対して化学物質過敏症は、神経系の感作(かんさ)で極々微量な化学物質が 神経に作用して、頭痛、関節痛、悪寒といった不快な症状として表れます。

中高年女性に多く発症します。

新築やリフォームを契機に建材などから出る化学物質を体内に取り込み、体内で処理できる限度を超過すると、一群の化学物質に過敏な症状が起きてきます。

一般の衣料品・繊維製品と異なり、オーガニックコットン製品は染色他、化学処理をしていないものが多く、残留する化学物質が極く少なく、患者さんは安心して身に着けられる訳です。

この度、皆さんの見過ごしがちな「ちょっとした疑問」を取り上げましたが、この他に疑問が湧いてきましたら、
事務局の方にお寄せください。

一緒に考えてみましょう。

平成29年7月12日
日本オーガニックコットン流通機構 顧問 宮嵜 道男 (文責)

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