オーガニックコットンと SDGs[コラム 2020 No.17]

NOC が SDGs として取り組んでいること

SDGsは、2015年に国連で決めた国際社会が2030年にあるべき姿の目標です。
Sustainable Development Goals の頭文字を並べてSDGsとしています。
日本語にすると「持続可能性のある発展の目標」ということになります。
Developmentと聞くとディベロッパーという言葉がまず思い浮かび、その連想は住宅街や巨大施設の開発です。森を壊して開発かと違和感があるのではないでしょうか。
この言葉には、発達、発育、成長や写真の現像の事だったりして、広い意味があるのでした。
その意味で、このレポートでは「持続可能性の開発目標」と掲げるのではなく、題名は開発ではなく発展としてみました。

スタートしてから3年経った2018年7月に、各国の取り組みの結果のランキングが発表されました。
日本は156カ国中15位でした。

トップ5は、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ドイツ、フランスです。
日本は、17の目標のうち、達成されていると評価されたのは,「目標4:質の高い教育をみんなに」のひとつのみでした。そのほかの目標は未達成となっていました。
特に

  • 目標5:ジェンダー平等を実現しよう
  • 目標12: つくる責任つかう責任
  • 目標13: 気候変動に具体的な対策を
  • 目標14: 海の豊かさを守ろう
  • 目標17: パートナーシップで目標を達成しよう

の5つに関しては、4段階の評価で最も低い達成度で落第です。

国は、民間企業および市民団体へのSDGsの取り組みを普及・拡大を促進しながら、“オール・ジャパン”でSDGsに取り組むことを表明しました。
地方創生と中長期的な持続可能なまちづくりを推進するとして、積極的にSDGsに取り組んでいる29の自治体を特に「SDGs未来都市」として2018年6月15日に選定しました。
その中でも循環型の森林経営に取り組む北海道下川町をはじめ、特に優れた取り組みと認定された10事業に対して上限4000万円の補助金制度も設けました。
政府が地方のSDGsの取り組みを支援しながら成功事例を増やすことで、全国的に持続可能なまちづくりの普及を加速させることが狙いです。

企業としてSDGsで注意しなければならない事は「SDGsウォシュ」です。
これは、企業が決算などで粉飾することをWhitewashと言いますが、これから作った造語です。
企業が広告やホームページなどで時流に乗って盛んに環境問題の改善をアピールしながら、実際には自然破壊に繋がる原材料を輸入していたり、不適切な開発への投資をすることです。
これまでは、企業活動には清濁あり必要悪だと、知らぬ顔の半兵衛よろしく厚顔でやり過ごしてきましたが、現代人の見る目は厳しく不買運動に発展することもあります。
それよりも何よりも、それまで費やしてきた高額の広告費を無駄にし、長く不誠実の謗りを受け続けることになります。
そこで企業は、専門性の高いNPOやNGOと協業して、正当性を磨く傾向が強まっています。

さて、NOCグループの主要な原料供給先のbioReプロジェクトが、このSDGsの17のテーマに於いて、オーガニックコットンがどれだけ目標に適っているかを整理していますので紹介しましょう。

目標01:貧困をなくそう

SDGs:目標1
bioReプロジェクトはそもそもオーガニックコットン事業でインドの農村の貧困をなくすことを目的にしていた。
農業者の栽培コストを少なくして、割増価格で産物を買い取り農業者の収入を増やしてきた。綿花だけ単一の栽培をするのではなく生活を安定させるため豆も、麦も野菜も果物、花、家畜まで幅広い有機農業をした。
6,000軒以上の農家がオーガニックコットンを栽培し、買取り保証や15%のプレミアムといったサービスを利用するなどして貧困から脱するための手がかりを得ている。
また、4つの女性グループが縫製や手織りの生地を生産するための支援を行っており、彼女たちは平均的な賃金よりも高額な収入を得ることができている。

目標02:飢餓をゼロに

SDGs:目標2
コットンの種は業者から買わずに、プロジェクトから支給し、利子なしの借入ができるようにして栽培の負担をなくしている。
収穫物はプロジェクトが割増し価格で買い取り、5年間の買い付け保証して、生活を安定させている。
コットンの繊維の副産物の種は食用油の原料や家畜の餌として売り、農業者の収入をあげている。

目標03:すべての人に健康と福祉を

SDGs:目標3
オーガニックコットン農場では、農薬を使わないので、農業者の健康被害はない。
100以上のトイレの設置と医療バスの配置を行い、農家の人々の健康をチェックする仕組みを設けている。
年間7万3千人もの人々がこれらを利用し、マラリアなどの感染症から守っている。

目標04:質の高い教育をみんなに

SDGs:目標4
プロジェクトは、高いレベルの教育機会を提供するために地域毎に学校を建設している。
また、これまで社会的地位の低かった女性が自立できるよう教育指導して有機農業のアドバイザーや、手織り生地の加工や縫製技術を指導して職業として収入が得られるようにしている。

目標05:ジェンダー平等を実現しよう

SDGs:目標5
世界の認証オーガニックコットンの畑で働いている10%は女性であり、農業技術の指導者、認証の農業記録係、農場の所有者と活躍の場が広がっている。

目標06:安全な水とトイレを世界中に

SDGs:目標6
オーガニックコットン農場では化学農薬を使わないので飲料水の化学物質汚染が起きない。
またオーガニックコットンは保水性がよく灌漑ではなく、雨水栽培ができるので飲料水の確保ができる。
タンザニアに77の井戸と26の貯水のタンクを設けている。
これによって3万4千人以上の人々が安全な水を得ることができている。

目標07:エネルギーをみんなにそしてクリーンに

SDGs:目標7
プロジェクトでは、公共の電気の供給が不十分であるため、ソーラーエネルギーとバイオガスを活用している。
インドとタンザニアで2,840台の高効率なガスコンロと3,238個のバイオガスプラントが利用されている。

目標08:働きがいも経済成長も

SDGs:目標8
世界で認証オーガニックコットンの生産に20万の人が携わっている。
認証規定に農業者の健康、エコロジー、公平、人権保護が盛り込まれている。

目標09:産業と技術革新の基盤をつくろう

SDGs:目標9
オーガニックコットンの生産活動そのものがサスティナブル、エシカル、事業の透明性を前提に行われている。
年々、生産量も上昇して繊維業界への貢献している。
気候による収穫性のリスクなどに対して産業、社会的基盤の向上が進められている。

目標10:人や国の不平等をなくそう

SDGs:目標10
オーガニックコットンの生産は現在、インド、タンザニア、中国、トルコ、アメリカの5カ国で、途上国も先進国も共に行われている。
農民の社会的地位が低くかったが、オーガニックコットンの産地では、収入が正当に得られ安定した生活が整い、コミュニティが自立している。
コットンの生産に携わる多くの女性が自立している。

目標11:住み続けられるまちづくりを

SDGs:目標11
農民の収入が上がり、農薬の被害がなく、自然環境が豊かになり、コミュニティーへの 定着が進み、土地の価値が高まった。
そして重要なことは、寄付に頼らない住民の自治も進んでいる。

目標12:つくる責任 つかう責任

SDGs:目標12
オーガニックを選択することは、畑はどうか、工場はどうか、小売店はどうか、家庭内ではどうかを考えることで、結果として健康生活が得られる。
オーガニック農産物は大自然の作法に沿って多様な作物を同時に育て、人工的な肥料や殺虫剤など使わない、その結果品質面でも栄養面でも優れていることが証明されている。
オーガニックコットンは繊維 だけでなく食用油にもなり、オーガニック食品の多様性に貢献している。
オーガニックコットンの製品の生分解性も優れ、廃棄物の問題の解決策の一つと云える。

目標13:気候変動に具体的な対策を

SDGs:目標13
オーガニックの土壌は二酸化炭素を保持し、それが土壌の力になっている。
一方化学肥料の酸化窒素はオゾン層を減衰することが解っている。
オーガニック農業では合成の窒素肥料は禁止されている。
bioReプロジェクトはコットンの単一栽培ではなく、多様な作物を同時に栽培する輪作や混植をするので、気候変動による収量変動に対応できる。

目標14:海の豊かさを守ろう

SDGs:目標14
オーガニック農業の最大の特長は、化学合成の肥料も殺虫剤も一切使わない事である。
一般の農業では、化学農薬が大量に使われ、土壌から地下水や川にそれらの化学成分が流れてゆき、最終的に海洋に広がり海洋生物への異変をもたらす。
その害悪は海洋生物を通じて私たちの健康を害する結果となる。

目標15:陸の豊かさも守ろう

SDGs:目標15
オーガニック農業では、土壌のあるべき循環を尊重して収穫力を上げるように工夫されている。
輪作、混植、耕作地の規模をできるだけ小さくして、地域の自然環境を傷めないように工夫している。
家畜の育成と植物の栽培の関係に配慮して、相乗効果が上がるように工夫している。
森林保護や家畜の放牧による砂漠化が起きないように管理している。

目標16:平和と公正をすべての人に

SDGs:目標16
オーガニック農業が健全に発展してゆくために、欠かせないのは農民が自主性を持つ事で、そのためには公平で協力的で民主的で人権尊重が欠かせない。
bioReプロジェクトは農民を中心にして男女差別がなく、協力するための組織があり、優れたリーダーがいて、地方自治体の支持を得て、国の協力を得て、国際的な協力関係を得てきた。

目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

SDGs:目標17
オーガニックコットンの発展のためには、国際的な協力関係がなければ成り立たない。
その生産のやり方が、エコロジーであり、フェアトレードであることが認められ共感されないと協力はされない。そのために公平性と情報開示そして良い品質、安全性で世界の消費者の皆さんに喜んでもらえるよう努力を続けなければ成り立たない。
bioReプロジェクトは、これが実現しているので発展している。

日本人のSDGsへの認知度は2018年で27%でしたが、今年の3月の調査でも微増の32.9%でした。世界から相当遅れていることを自覚しなくてはなりません。
これからは、これを知らないという企業人には未来がないと言わざるを得ません。

2020年10月2日
日本オーガニックコットン流通機構 顧問 宮嵜道男

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