新疆綿(しんきょうめん)の黒い影[コラム 2021 No.07]


こちらはNOC 会員様に向けたコラムの一部抜粋です。

新疆綿につきましては、2021年4月1日時点の情報です。
情報が少ないため、不確実性も含まれますが、お問い合わせを多くいただきます内容となりますので、こちらに掲載させていただきます。

オーガニックコットンアドバイザーの一見解となりますので、ご理解の上、ご覧いただきますよう、よろしくお願いいたします。
なお、NOC コットンは新疆綿を使用しておりません。


最近、NOCのメンバーから新疆ウイグルコットン情勢についての質問がありましたので、この機会にお知らせしようと思います。
随分昔の事ですが、いくつかの大手繊維商社が中国綿や新疆綿のNOC認定の可能性を問い合わせてきたことがあります。

*現在は、NOC認定は、NOCメンバーだけを対象にしています。
当時、事情を聞いてみると、原綿のオーガニック証明が中国の地方組織が発行した書類で、正当かどうか判断ができないと思いました。
まして、新疆ウイグル自治区の弾圧問題については、当時からフェアトレードの運動をしている方々からよく聞いていて、とてもオーガニックコットンとして扱うことは難しいとアドバイスしました。

このところ中国政府は強権化して、世界は香港問題、台湾問題、そして新疆ウイグルはじめとする自治区への弾圧問題を取り沙汰するようになりました。
新疆ウイグルの重要な農産物は綿花であって、NOC のメンバーの関心も特に高いのではないか思い、本コラムで取り上げてみることにしました。

そもそも自治区というのは、自治と言いながら漢族以外の民族をそれぞれ政権下に置くというもので、新疆ウイグルの他には、内モンゴル自治区、広西チワン自治区寧夏回族自治区、チベット自治区の5カ所があります。チベットは、法王のダライラマが国内に居られず転々と亡命を続けていることからも分かるように、それぞれの自治区の実権を握っているのは中国共産党で、中央の強い意向の下にあって、私たちが考えるような「自由」はありません。どこも同化政策が行われて民族の文化、言語を中国化するよう運動しています。これに抵抗する者は捕らえて再教育し、女性は中国人との結婚を進めます。教育、言語、民族の種を中国化する政策は「浄化」と呼ばれているようです。

新疆ウイグルの綿は、北海道の北の端くらいの緯度で害虫も寄せ付けない冬の寒さを過ごし、良い条件の土壌、澄んだ空気、晴天続きで日照時間が長く、1日の気温差が大きいという超長綿を栽培するのに理想的な条件下で育ちます。そして手摘みで収穫するため、繊維へのダメージもありません。
エジプトギザ綿、ペルーピマ綿、アメリカスーピマ綿などと高品質綿として並び称されています。

NGOヒューマンライツナウのホームページには、新疆ウイグルの問題について、詳しい報告がされています。
https://hrn.or.jp/activity/17720/

ざっと要約してみると、中国に工場をもつグローバル企業が、新疆ウイグル自治区に住むウイグル人を強制労働させていて、このうち日本企業は12社ほどあるとしています。
2017年から2019年までに、収容者300万人のうち約8万人を工場で働かせています。
オーストラリア戦略政策研究所ASPIも報告書を発表していて、関連企業もビッグネームが並んでいます。

これに対応するアパレル企業も現れ始めています。
新疆綿素材を調達してきたサプライヤーと契約を解除したメーカーもあります。
新疆綿の品質の高さを大々的に宣伝してきたメーカーも、そのキャンペーンを取りやめました。
オーストラリアのアパレルブランドも新疆綿の取り扱いを停止しました。

同じような昨今の問題では、ミヤンマーの国軍独裁問題もあります。
日本企業がスーチー政権下であまりにも大きな投資をしたため、国軍への非難を出来ず、
前にも後ろにも進めない、抜き差しならない状態にいます。

国軍のクーデターからわずか2ヶ月で、デモなどで抵抗する国民の犠牲者が500人を超え、対抗する少数民族の地域に対して、空爆までして多くの犠牲者を出しています。
国軍に反対するデモ隊は腕を高く伸ばし三本指を掲げています。
昔、流行ったピースサインじゃなくて、なぜ三本指なのか調べてみたら、2012年に公開されたアメリカ映画「ハンガー・ゲーム」の中で、市民が独裁政権に反抗する際のサインだと判りました。
ミヤンマーの若者達はこの映画の独裁者と自国の国軍を重ねているのです。
パート3までの長い映画でしたが、観てみると、不条理な支配に対して、自由を求めて戦う若者たちが最後には勝利していくという、三本指のサインは、微かでも希望のサインでもあるのです。

多くの日本人が関心を持って、日常の何気ない買い物が生産地の苦境とどう繋がっているのか考えるようになってくれることを願います。

2021年4月1日
日本オーガニックコットン流通機構
オーガニックコットンアドバイザー 宮嵜 道男

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