エシカルの概念は広い[コラム 2021 No.09]
1989年といいますから、今から32年前にイギリスで「エシカル・コンシューマー」と云う雑誌が創刊され、欧米諸国ではエシカルという概念が一般に浸透していきました。
エシカルは、直訳すれば倫理的ですが、もう少し広く、社会的良心というくらいの概念になります。
倫理的消費調査研究会が2016年に発表した調査結果を見ると「エコ」という言葉の認知度は50.9%、ロハスは 32.5%、フェアトレードは 23.2%、倫理的消費 6%、エシカル 4.4% でした。
さらに4年後、2020年に電通がアンケートでエシカルの認知度を調査すると5.7%とほとんど向上していませんでした。
エコはエコライフやエコ住宅、エコ給湯器など、まるで接頭語のように使われてすっかり馴染んでいます。
ロハスという概念もメディアが取り上げ急速に広がり、珍しく流行語にまでなりました。自分の健康や美容もエコロジカルな背景がないと成り立たないという「自分」を中心に置いたエコライフスタイルでした。
流行語になってしまったためか、時間が経つと色褪せて古い感じがして、今となっては使いにくくなりました。
フェアトレードも少しずつ知られてきつつありますが、先進国の中でわが国は異常に低い認知度調査の結果を示しています。
イギリス、オーストリア、スイス、アイルランド、ドイツ、スウェーデンなどヨーロッパでは 80% 越え ですが、日本は 22% で、世界のフェアトレードの市場規模 8,300億円 に対して、日本の消費規模はわずか 1% という状態です。
これは何と言っても、テレビ、新聞、雑誌などの主要メディアが無関心でほとんど扱っていない、街の小売り店も関心が薄く関連の商品を並べてないという供給サイドの認識の低さがあります。
また長年、デフレ経済で推移しているため、いく分高めのフェアトレード商品は、低価格の強風の前に敢え無く吹き飛ばされている感があります。
一方インターネットで探している消費者の検索数は年々伸びて来ていて、このインターネット流通分野には希望があります。
エシカルは、エコもロハスもフェアトレードもすべてを包含する概念です。
2011年の東日本大震災以降、特に若い人々の中に、ボランティアや寄付の体験を通じて新しい価値観が生まれてきたといわれています。
「自分のことだけでなく、人や地球・自然のためになることを考えながら自分の振る舞いを決める」という感覚です。これはまさにエシカルな感覚です。
エシカル意識が強くなれば、自然に日常使っている生活用品のひとつひとつがどのように作られているかにも関心が向くはずです。
若い女性たちの間で、何かを購入する際、機能性やデザイン性、「安全性」ということに注視しますが、その製品の生産の過程で「環境を傷めていないか」、「動物を苦しめていないか」、「発展途上国の人々の生活を犠牲にしていないか」など、従来では問われなかった生産背景にも関心を持ち始めていると聞くと未来に希望がもてます。
なんと言っても、女性は消費の中心にあり、さらにエシカルを知らしめる努力を怠りなく続ける必要があります。
実際に女性誌などで、エシカルな発言をしている女性たちは知的な憧れの対象になっています。
2008年 内閣府から発行された国民生活白書「消費者市民社会への展望・ゆとりと成熟した社会構築に向けて」の中で、公益優先的な考えを持つ人の割合は 2008年 に初めて 50%(51.7%) を超えました。
また、自分の消費行動で社会が変わると思う人の割合は 58.6% で 6割 に迫っています。
さらに、「社会への貢献意識」の調査では、何か社会のために役に立ちたいと答えた人の割合は、69% で 7割 になろうとしています。(2009年調査)
これらの意識調査では、50歳以上の中高年世代の比率が高い点も注目しなければなりません。経済的にも時間的にも余裕を持てるこの世代は、価格よりも品質や企業の 品格を評価するようで、この世代にも期待が持てます。
以上のように、必ずやってくる消費者の意識変化の行く末を見て、積極的にNOCのオーガニックコットン製品がまさにエシカルのテーマそのものであることを、折に触れてアピールしていかなければなりません。
エシカルファッションの条件
- オーガニック素材・天然素材など環境に配慮した素材を使う。
- 環境保全に配慮した生産加工を行う。
- 生産者から不当な搾取をせず、貧困救済、児童労働撲滅に繋がる取り引きを行う。
- 世界基準を押し付けず、地域伝承の技術を尊重する。
2021年5月14日
日本オーガニックコットン流通機構
オーガニックコットンアドバイザー 宮嵜 道男