新疆綿について[コラム 2021 No.12]
新疆綿問題のニュースクリップ
新疆(しんきょう)ウイグル問題の綿花に関して全体像を見られるように、関連情報をとりまとめました。
NOCグループでは、新疆綿を扱ったことはありませんが、同じ綿業の世界の問題ですのでひと通りご理解くださるのがよろしいかと思います。
なお、新疆綿につきましては、ネットで行き交っている情報が、すべて正しいとは限りません。
様々な考え方があるかと思いますので、あくまでも一見解として、ご理解をいただけますよう、お願い申し上げます。
中国・新疆綿とは
- 2020年の世界の綿生産量は約2600万トン。
インドが618万トン、中国が617万トンの僅差で、続いてアメリカが350万トン。 - 新疆は516万トンの綿生産で全中国の生産量の8割以上の巨大産地。
- 中国の国内需要には届かず、中国は年に200万トンの綿を輸入している。
生産量増進の圧力は生産者に大きく掛かっている。 - 新疆は高緯度で日照時間が長く、標高800メートルの高地であるので朝晩の気温差が大きい。
- 特に世界三大超長綿として、アメリカのスーピマ、エジプトのギザと共に並び称される。
超長綿の品種はバルバデンセ種。
年間降水量は200~300 ミリとの乾燥地であるが、天山山脈からの雪解け水が利用できる。寒冷地で虫の害も少なく、希に見る綿栽培の適地で、生産量に優れ、品質も最高級。
新疆ウイグル問題の綿に関する状況
- 2020年8月28日 シンクタンクASPI(オーストラリア戦略政策研究所)が
「Uyglurs for Sale/ウイグル人が安売りされている」というレポートを発表した。
その中で、世界のグローバル企業80社が強制労働問題に関与しているとした。 - 2020年12月 アメリカ シンクタンク Center for Global Policyが、ウイグル他少数民族57万人が強制労働させられている。
100万人が強制収容されていると発表。
世界的な大手アパレル企業3社に対してに対して警告している。 - 2021年3月 中国で不買運動が起きて、3~5月間の売り上げが前年比28%減少した。
- 2021年4月 フランス司法当局が捜査を行い、アパレル企業4社を告発した。
- 2021年7月13日、アメリカ バイデン政権は、自国の事業者で、新疆ウイグル自治区で生産された部材は法律に抵触すると発表した。
同年1月に関与しているとみられたアパレル企業のシャツの輸入を差し止めた。
参考資料
新疆ウイグル自治区とは
- ウイグルは 2500年 の歴史を持つ国で人口は 2500万人、中国自治区の中では最大でがあるが、山地がほとんどで、全地域の 9.7% に人々が住んでいる。
- 8 か国(インド、パキスタン、アフガニスタン、タジキスタン、キルギス、カザフスタン、モンゴル、 ロシア)と国境を接し、勢力を持った近隣国に支配され続けてきた歴史がある。
現在は中国の自治区となっている。民族も入り乱れ、ウイグル人 45%、漢人 40%、残り 15% は 17の民族で構成されている。 - 中国は 5つの自治区を運営している。
新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区、広西チワン族自治区、寧夏回族自治区、そしてチベット自治区。 - 植民地と自治区はなにが違うのか?
植民地は本国人をより多く住まわせ、過半数を超えると本国に組み見込む仕組みである。自治区の場合は、その民族が国としての運営をするが、本国の意向に背くことは許されない。宗教の自由は制限されるので、チベットでは、仏教の指導者ダライラマは亡命状態でいる。 - 信教の制限、共産体制の強制的な再教育、テロ防止を名目に 1億7000台 もの監視カメラの設置、ウイグルの人口減少政策として強制不妊手術や本国男性とウイグルの女性の婚姻を推進しての同化政策を行うとされている。
自治区の周辺は、原爆実験の主要な地域となっている。
ウイグル問題全体を時系列で見る
内部通達書など証拠となる文字資料、写真資料も多く流出している。
<発表の内容>
中国はウイグル人を綿栽培で 10万人 強制労働させている。
2014年からウイグル人女性の避妊手術件数が急増している。
2019年のウイグル人に対する避妊手術ノルマが、過去 20年間分 に匹敵する多さであった。
同氏は国連のジェノサイド条約に特定集団内の産児制限を集団虐殺と規定していることから、これはジェノサイドであり 20世紀 のホロコーストに匹敵すると非難した。
- 2021年1月19日、アメリカのトランプ政権のポンペオ国務長官が初めて米政権を代表してウイグル弾圧をジェノサイド、反人類的犯罪と認定した。 その後を継いだバイデン政権のブリンケン国務長官も同様の立場を唱えた。
- 2021年2月22日:カナダ下院が、新疆ウイグル自治区で継続している民族迫害をジェノサイド(民族大量虐殺)と認定する動議を可決した。
- BBCイギリス放送協会は、ウイグル人権問題について、強制収容所で ウイグル女性に対する組織的な性犯罪が行われていたという証言をスクープした。
- イギリスのボリス・ジョンソン首相はジェノサイドと認定しないとして、英国下院も同様にジェノサイド修正法案を否決した。
- フランスのマキシム・ヴィヴァス(ジャーナリスト)が「ウイグルフェイクニュースの終結」を出版した。
全米民主基金会(NED)、世界ウイグル会議、ヒューマンライツウォッチなどの組織が連携して作り出したフェイクニュースだと反論した。 - 当の中国は、この本を大きく取り上げて大宣伝を展開した。強く反論して、収容所は強制ではなく、職業訓練施設だと主張。
過激思想に染まったウイグル人を正しい道に戻し、就職をサポートしている。さらにすでにほとんどの収容者が出所していると主張した。
* 出所の事実はあるようだが、連携した工場に送り込まれて労働させられている可能性が高い。 - 2008年の北京オリンピックの時は、チベットへの宗教弾圧があり、大きな騒乱となり多数の死傷者が出た。
来年2022年の中国冬期オリンピックに向けて、ジェノサイドと言明されたウイグル問題が起きて、各国がオリンピックのボイコットを言い出している。
以上、新聞・雑誌・ネット情報からピックアップして全体を把握できるよう、また要点が見つけやすいように、箇条書きにまとめました。
2021年7月23日
日本オーガニックコットン流通機構
オーガニックコットンアドバイザー 宮嵜 道男