衣料品の産業が気候変動問題の炎に油を注いでいる[コラム 2021 No.14]
オーガニックコットンにこの炎を消せる力があるのか?
2020年12月4日、ソーシング・ジャーナルがこの大変刺激的な記事を配信しました。
Sourcing Journal は PMC(ぺンスキー・メディア・コーポレーション)の配信するファッション、ショッピング、美容、エンターテインメント、ライフスタイルなど多くのカテゴリーのひとつです。
ニューヨーク、ロサンゼルスに本社を置き、世界 11カ所 にオフィスを配し、1億8000万人 にネットでニュースを配信しています。
この記事を要約しました。
EJF(Environmental Justice Foundation / 2000年にロンドンで設立されたNGO組織)は、世界で衣服の生産をする過程で、温室効果ガス全体の 6.7% もの二酸化炭素を排出している と指摘しました。(この数字は過去45年間で3倍の増加でありました)
Environmental Justice Foundation ホームページ
繊維 1トン 当たり 15~35トン の CO2 を排出するが、プラスティックで 3.5トン、紙だと 1トン 程度ということです。
繊維産業全体では、12.2億トン ~ 29.3億トン も排出していると計算しています。
そういわれても、その規模がどれ程のものかわかりませんので、世界各国のCO2年間排出量を示しておきます。
中国 90億トン、アメリカ 50億トン、インド 23億トン、ロシア 16億トン、日本が 10億トンです。
問題は化合繊が 2000年以降、とうとう全繊維の半分以上が石油から作られるようになりました。
使われる石油の量は毎年 3億4200万 バーレルです。
海洋汚染のマイクロプラスチックの 20 ~ 35% が、化合繊のポリエステル、ナイロン、アクリルです。
木質繊維のビスコースレーヨンは自然由来繊維として好まれますが、実はこのために 1億5000万本 の木が伐採されています。
木は二酸化炭素を吸って酸素をもたらしているので地球温暖化にとっては二重のマイナスとなります。
(過去 15年間 に 5600万ヘクタール の森林が消えたことになります)
それなら綿花はどうでしょうか?
EJF は、年間 820万トン の農薬を使って 2億2000万トン の CO2 を排出している と指摘しています。
綿花の栽培のもう一つの問題は、大規模な灌漑(かんがい)水で、年間 2330億立方メートル の水を使っています。
また、染色や加工で排水汚染を起こしています。
カンボジアでは、ファッション産業が国全体の水質汚染の60%、化学物質汚染の 34% を占めているとしています。
EJF の最高責任者のスティーブ・トレント氏は、歯に衣着せない物言いで断言します。
「ファッション産業の環境破壊ぶりは衝撃的だ。
気候変動を悪化させ、栽培地を劣化させ、人々を毒殺している。
悪魔に打ち勝つ銀の弾丸がどうしても必要だ。
その銀の弾丸とはオーガニックコットンのことだ」
* 銀の弾丸とは、フィクションの世界において、通常の弾丸では通用しない悪魔、狼男、魔女などに対し、特別な銀製の弾丸でないと殲滅できないというイメージと結びついていることから使われている言葉です。
通常の手段では対処が厄介な対象を、たった一撃で葬るもの、という比喩表現として用いられる場合が多いです。
オーガニックコットンに切り替えれば、年間 9620万トン の CO2 削減ができて、持続可能な栽培ができて、有毒な農薬から逃れられる。
そしてさらに大事なことは、水の消費量が 91% も減らせているという調査結果は驚くべきものだ と説明しています。
(一般のコットンは綿糸 1トン 当たり 14,595立方メートル の水を消費していると言われています)
そしてファッション産業に向けて決定的な解決策を提示しています。
「ファッション産業は、オーガニックコットンを期限付きの目標を定めて積極的に取り込んでゆかなくてはならない。
EU は、従来型綿花に炭素課徴金を課して、その資金をオーガニックコットンへの移行費用と認証費用に充てるべきだ」
更に、消費者には環境破壊の素材に気付いて、ファーストファッションの商品を避けて、質の高い商品を選ぶよう呼びかけていくとしています。
NOCが 30年 近く呼びかけてきた事を、ものの見事に記事として発信してくれたことを嬉しく思います。
NOCの活動は、銀の弾丸だったのだという自信にして、更にオーガニックコットンの普及活動に励んでいきましょう。
2021年8月27日
日本オーガニックコットン流通機構
オーガニックコットンアドバイザー 宮嵜 道男