女性がリードするエシカルな社会 その1[コラム 2021 No.16]

社会改革論

このところ「人新生の資本論 斎藤幸平著」の本が 30万部 売り上げて、話題をさらっています。

現代の資本主義のあってはならない毒性がアチコチにあふれ出してしまって、ここらで、皆で考えてみませんかという社会改革論です。

本のタイトルの見慣れない「人新生」という言葉、それは地層の呼び方で、特に著者は、人類がまき散らした人工物が地球の表面に新たな一層を成してしまっているという際限のない生産資本主義を批判した造語です。

経済は成長しなければならないという観念を転換しなければならない、全ての価値をお金で計る仕組みを変えなければならない、異常な富の偏在、格差社会をなくさなくてはならない、他者の犠牲や苦しみ、貧困の上に成り立つ大量生産、大量消費はおかしいという、極くまともな感覚を取り戻す時代がきていると主張しています。

2013年 にフランスのトマ・ピケティ著 「21世紀の資本論」 という世界的なベストセラーがありますが、この資本論やマルクスの資本論を読み解きながら論陣を張って行きます。
アメリカでは、上位 1% の富裕層の人たちの富が国全体の富の40%にものぼっているという 異常な格差社会が現出しているといいます。
これはかつて1980年代まであった累進課税の軽減が原因で、最高税率を90%まで戻す 必要があるとしています。
お金がすべてという価値観から脱さないと、人々は幸せになれないし、地球環境へのダメージをなくすこともできません。
SDGs の運動についても、現状の資本主義体制のままでは、小手先の改革に終わり、根本的なサスティナブル社会に転換するにはほど遠いと手厳しく批判しています。

テレビでこの本の著者を呼んで特集をしていました。そこでメインコメンテーターの一言が 秀逸でした。いわく、ここで語られていることは、要するに女性の感性を社会の仕組みに取り入れるということで、中高年の男性政治家達が一斉に退陣して、女性に任せるということでしょう、とコメントしました。
これを聞いて、わが意を得たりと歓びました。

実は2010年に 「オーガニックコットン物語」 が出版され、この時、編集者に持ち込んだ原稿は最終的に三分の一に絞られ、残りの原稿は引き出しに眠ることになりました。
その原稿の中に正に、この世は女性が主役にならないと、環境問題は解決できないと論じているものがありました。
当時、このような事はあまりに荒唐無稽で出版社としては、歯牙にもかけず、ボツにしたのでしょう。
この機会に12年ぶりにファイルから出してみました。
以下、当時の原稿を再現してみます。

学問が進んで人の体の仕組みや成り立ちが明らかになると、次々に「女性」という存在の重要性が浮き彫りになってきています。
人類の歴史を見ていくとほとんど男性中心に語られています。
歴史では、男たちは勢力争いに明け暮れ、権力を握り人を支配し、宗教を作って生活、精神を縛ってきました。
当然、歴史上の英雄といえばほとんど男たちです。まれにクレオパトラやジャンヌ・ダルクが思い浮かぶ程度です。
宗教の世界では、キリストもブッダもマホメットもみんな男で、神様のイメージといえばお決まりの白髪で髭をたくわえ、杖を持ったおじいさんです。
ということは、これらはみんな男によって創り上げられた、それこそ神話だということがわかります。
人を従わせる、これまでの人類の歴史のままで、果たしてこれからの時代やっていけるのか疑問です。

ミトコンドリア・イブ

細胞の中にミトコンドリアという不思議な器官があります。

地球がまだ酸素もない地球創世期の頃のことです。もちろん生物らしい生物は存在していません。酸素がなくても生きられる菌類(嫌気性菌・けんきせいきん)がいるくらいでした。

太陽のエネルギーを使って光合成する藻類などが出現し植物が生い茂り、排出したのが酸素でした。酸素は反応性が強く元来生体には害になるものですが、この酸素をエネルギーに換える変わった細菌だったミトコンドリアがどこからか出現して、酸素を好むいわゆる好気性微生物に取り込まれました。
これがその当時の環境にうまく適応して、一気に地上にはびこり始めました。
魚類、両生類、は虫類やがて哺乳動物になっていきます。
そんな画期的なミトコンドリア。
何世代にもわたって人の遺伝子に伝えられて今日の私たちに至っています。

さて、そこでミトコンドリアの遺伝子ですが、女性の細胞だけに残り伝わってきました。
男性のミトコンドリアは精子の運動エネルギーに使い果たして、受精の時には残っていないのです。
ということは、現代の女性から何十億年とミトコンドリアの遺伝子をたどって過去にさかのぼっていけるということで、なんとアフリカ大陸の一人の女性にたどり着いたのでした。
その女性は「ミトコンドリア・イヴ」と名づけられました。

やはり最初の人間は男性ではなく女性が先でした。
土の塊に神様が息を吹き込んでできた男のアダム、アダムのあばら骨から女性のイヴを創ったというのは、男の創作だったのです。

子供の頃から一つの疑問がありました。誰に聞いても嘲笑(ちょうしょう)だけで答えてくれませんでした。それは、「なんで男なのに乳首がポツッとお印のように小さいのが付いているのだろう」なんの役に立つのだろうかということです。

大人になって遺伝子の働きを知って腑に落ちました。
これは結局、ただ単に男とは女性から変形したのであって、元は女性だった痕跡なのだということです。
細胞内の遺伝子の46個の染色体の一つが、本来全部 X の形をしていなくてはならないのに、Y の異形を成しているのが男性なのです。
どこの国にも一定の割合でいる性同一性障害の男性、最近はLGBTと呼びますが、つまり本来の女性の形に戻りたいという自然な姿なのだといえます。

男は本来、女性のために生きるべきものなのです。
カマキリの雄(オス)は子孫の種を雌(メス)に宿すと、その身を雌にささげるそうです。雌は雄の身体を食べて子供を生む力にしていきます。つらい話ですが、カマキリの雄の潔さは見上げたものです。
男とはそんな存在なのです。自然界では、雄のほうが美しく、雌は地味に造られています。雄は、雌に選ばれる存在で、選ぶのは雌だということです。

男は女性を助け、喜ばせるために造られています。
女性を支配し、傷つける男なんていうものは決して許されるべきものではなく創造の神の意思に反することで、天罰ものです。
女性のために歌を唄い、女性のために美しい絵を描く、男は本来、女性を喜ばせることでこそ自身も喜べるようにできているのです。

女性がリードするエシカルな社会 その2 に続きます。
 
 
2021年10月22日
日本オーガニックコットン流通機構
オーガニックコットンアドバイザー 宮嵜 道男

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