タオルとボジョレ・ヌーボと投資ファンド
全然関係ないこの三つのお題を整えられるでしょうか?
池内タオル㈱が見事に実践されています。
ボジョレ・ヌーボ
(新物ワイン)は、その年その年の葡萄の出来をワイン業者の間で評価するために始まりました。
9月に葡萄を収穫するや否や、特殊な方法で発酵を急ぎワインに仕上げ、2か月足らずのその年の11月の第3木曜日を「解禁日」と決めました。世界中に航空便で送り出すようになってから、一般のワイン愛好家を大いに酔わせるようになりました。
ボジョレ・ヌーボは、当然のこと、毎年味わいが違います。
大自然が織りなす味わいの違いを楽しむのが流儀です。
さて池内タオル㈱は、コットンも葡萄と同じ農産物で、毎年コットンの質が異なることに注目しました。
従来は、毎年同じ品質を維持するため、色々な産地のもの、前年の綿などをブレンドして均質化することが重視されてきました。
高速で織り上げる機械を扱う工場の人々は糸の均質さを求めるし、販売の流通側の人たちも一定の品質の方が売り易いので均質化を望みます。
池内タオル㈱は、このブランドに「コットン・ヌーボー」と名づけ、敢えて年毎の品質の違いを、ボジョレ・ヌーボのように楽しもうと逆転の発想の提案をしています。
アフリカ・タンザニアのビオリプロジェクトの指定の畑で摘んだばかりのオーガニック綿を、パノコトレーディングがいち早く輸入して、池内タオルがタオル製品に仕上げ、毎年決められた日時に発売して面白さを演出しようというものです。
「タオル」、「ボジョレ・ヌーボ」と来て、さあ三つ目のキーワードが「投資ファンド」。
この原料の仕入れ、タオルの製造、そして販売プロモーションの資金は、小口の投資ファンドを募集して資金調達するということにしています。
専門の投資家というよりタオルのユーザーに向けて一口5万円の約一年間の投資を募集しています。一年経って、決算して事業売り上げから利益配分してゆきます。
投資した人は、タオルを割引で安く買えるなどのメリットはありますが、それよりも、自分がまずこのタオルを気に入って、商品を買い、知人・親戚にも薦め、具体的に事業に参加できた喜びを味わいます。
募集金額550万円、一口5万円で110口募集しています。
既に投資の目標の90%が達成されています。
予定の額を売り上げられなかった場合は、タオルの現物で弁済されますので、投資の損害は起きないように工夫されています。
なんと言っても、このアイディアの素晴らしいところは、資金調達の手段と言うよりも「ヘビーユーザー」、「ブランドのファン作り」にあるというところです。
投資ファンドの運用は、専門の企業が行いますので、金融業としての資格や経験は要りません。
投資のテーマが最も重要になります。
- 伝統工芸品の焼き物
- 老舗酒造メーカーの銘柄酒、
- 間伐材を活用した割り箸プロジェクト
- サッカーチームの支援
- ミュージシャンの応援などなど
趣味やお好みの商品、サービス、アートに気楽に投資して係わるという新しいビジネスが
注目されています。
時代の風を巧みに捉える池内タオル㈱の真骨頂プロジェクトです。
コットンヌーボ・プロジェクトの詳細はコチラのサイトをご参照ください。
日本オーガニックコットン流通機構 理事長 宮嵜 道男