EJFの警告[コラム 2021 No.02]

ロンドンで2001年に発足したNGO(非政府組織)Environmental Justice Foundation(環境正義財団)が綿生産について警告を発して、「オーガニックコットンこそ 解決策だ」と言明しました。

EJFはアフリカ、アジアの貧困地域で起きている環境悪化や人権侵害に焦点を当てて改善の活動をしています。
特長的な事は、調査、報告に映像を駆使して実情を訴えることです。
例えば、2012年に国際的に規制対象農薬とされたエンドスルフォンがこの地域では未だ使われていて、農民の健康を害している報告キャンペーンをしました。
エンドスルフォンは、有機塩素系の殺虫剤、防ダニ剤で、強い毒性があり肝臓、腎臓障害やけいれんと内分泌攪乱作用を起こし、環境中に長く残留する事が 問題です。

この貧困地域は、多くがコットン栽培地で、コットン栽培では通常の食用農産物の8倍もの農薬が使われていると重大視しています。
この他に、報告している要旨を挙げていきます。

  • 一般のコットンは世界的に、820万トンの農薬を使用し、毎年2億2千万トンの二酸化炭素を排出している。
  • コットンは農業用水を大量に消費していて、その量は年間2,330億立方メートルで、つまり世界中の人々が一人あたり年間238回浴槽に満たす水という途方もない水資源を消費している。
  • 繊維製品(合成繊維、天然繊維)の廃水が水不足を助長している。
    例えばカンボジアでは、ファッション産業が国の水質汚染の60%、化学物質汚染の 34%を占めている。
  • 繊維産業全体では、年間12.2億~29.3億トンの二酸化炭素を排出していると算出されているが、別に39.9億トンにもなるとの試算もある。 この量は驚くべき事に世界のCO₂ 排出量ランキング1位の中国、2位の米国に次いで3位となる。
  • アメリカ人は、平均年間37.6キログラムの繊維製品を消費している。2030年までに世界の繊維生産量は1億4500万トンに達すると予測されている。
  • 2000年以降、衣料品に使用されたポリエステルの量は倍増しており、世界の繊維生産量の半分以上が石油から作られている。その量は、毎年約3億4,200万バレルの石油に換算される。
  • ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維は、そのライフサイクルを通じて、海洋に存在するマイクロプラスチックの20~35%を占めている。
  • 自然素材と人気のビスコースなど人工セルロースのために、年間1億5000万本の木が伐採されていて、このため、過去15年間で5600万ヘクタール以上の森林が消えている。森林資源こそ地球温暖化のブレーキになるはずが、森林消失で暴走に向いている。
  • 中国の新疆ウイグル自治区での強制労働とそこから生産された綿花は、アパレル業界が 問題にすべき課題である。
    世界的に人権侵害への関心が高まる中、アパレル業界は、これらの製品をサプライチェーンから排除するという決断をしなければならない。
  • 米国の税関警備局が、中国の綿花の3分の1を生産する準軍事組織である新疆生産建設軍団とその下部組織や関連組織、また囚人労働を含む強制労働で製造された新疆からの輸入を禁止する方針を発令した。
  • 完成品のサプライヤーから生地工場、紡績業者に至るまで、サプライチェーン内のすべての階層を管理する仕組みを作り、発注書、請求書、パッキングリストを追跡して、取引のトレーサビリティを明らかにする方向で動き始めている。

このEJF(環境正義財団)の代表者のスティーブ・トレント氏は「ファッション産業による地球環境の壊滅的な影響は本当に衝撃的だ。ファッション産業は気候危機を 悪化させ、生産地を劣化させ、人々を毒殺している」と言及した。
そしてその言葉に続けて、オーガニックコットンこそファッション産業の問題の ソリューションだと言い切りました。

  • オーガニックコットンへの切り替えによって、年間9,620万トンの二酸化炭素を削減できる可能性がある。これは平均的な自動車1台を世界中で14,112回運転した場合に相当する。また、農薬を使わない持続可能な農業により、有毒な農薬を減らせる。
  • オーガニックコットンの栽培では、綿糸1トンあたり14,595立方メートルの水を消費する。 これによって、オーガニックコットンの農業用水の消費量は91パーセント減少できる。
  • ファッションメーカーや小売業者は、オーガニックコットンを含む気候への影響が少ない 代替素材や新素材をサプライチェーンに取り入れなければならない。「2025年持続可能なコットンチャレンジ」に参加している企業は、サプライチェーンにおいて オーガニックコットンを優先的に使用して、従来のコットンからの転換を加速させるべきである。
  • 欧州連合(EU)は、綿花に炭素調整制度を導入して、徴収した資金を「オーガニックコットンへの移行費用と認証プロセスの費用に充てるべきである」と主張している。
  • 政府は、持続可能で倫理的なファッションや衣料品を奨励するために、財政的・規制的措置を用いてオーガニックコットンを奨励すべきである。
    そして同時に一般の綿花生産による環境への多大な悪影響を抑制しなければならないとし、衣料品メーカーや小売業者もまた、その責任を果たし、オーガニックコットンを普及させ、提供するために行動しなければならない。
  • 消費者も、オーガニックコットンを使用しているブランドや小売店を支援して、お気に入りのブランドにオーガニックコットンをはじめ、環境への影響が顕著に軽減された素材へ移行するよう訴えてほしい。
    消費者が、大量生産、大量消費のファストファッション文化を拒否する意味で、購入量を減らし、質の高いものを購入する方向に転換して行かなくてはならない。

ここまで強くオーガニックコットンの価値を言及したレポートをこれまでに読んだことがありません。
世界の問題意識は確実に深まり、オーガニックコットンの存在がこれまでの「あってもいいね!」から、「なくてはならない!」に転換しつつあります。

2021年1月14日
日本オーガニックコットン流通機構
オーガニックコットンアドバイザー 宮嵜 道男

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