ハロー・キティに口がない[コラム 2021 No.06]

世界的な人気キャラクターになったサンリオのハロー・キティは1974年生まれなので、今年で47年になります。
オーガニックコットン製のキティちゃんも販売されていたこともあります。

ハロー・キティが海外でも人気が出始めた頃、思いも寄らない批判があることを海外版新聞が取り上げていて、それを読んでびっくりした事を思い出します。
 
キティには口が無い、口が無いのは、ものを言えない日本の社会を象徴している、男性優位で女性を黙らせる意図がある、幼児的可愛さは、幼さを見下す文化の
反映ではないか、カワイイは人に媚びる態度をよしとする、などなど日本の文化や風説に絡めた批判でした。
サンリオはこれに対して反論はせず、キティのデザイン意図について「優しさや思いやりは、口で言うだけでなく態度で示している」という柔らかいメッセージで応えました。

観る人が自由に表情を想像して、湧き起こる感情に委ねるという狙いがあるようです。表情を敢えて無くし曖昧にしたので結果として、世界の人々に受け入れられたといえるのかもしれません。

「能面のような・・・」といえば、無表情という意味になりますが、能面はわざと左右を非対称にして角度によって微妙な表情を見せたり、面の上向きを「照る」下向きを「曇る」と称して演技表現を工夫しています。
また荒削りな木彫りの円空仏の表情が単純、素朴だから観るひとの感情に寄り添い現代でも人気があります。

随分前の事ですが、孫たちを連れて、サンリオ・ピューロランドに行って、キティちゃんを巡る劇を観ました。
キティちゃんが喜んだり、悲しんだり、困ったりの演技を自然に受け取りました。
いつもニッコリに固定したミッキーマウスには出来ない芸当です。
この時、キティちゃんの無表情は、日本古来の伝統的な意匠技術に共通していると感じました。

さて、ここからが本題です。

昨年から世界に拡がった新型コロナウイルスですが、欧米諸国の蔓延が激しさを増す中、アジアでのパンデミックの規模の拡大はある程度抑えられました。
色々な理由があるようですが、マスクが果たした効果は少なからずあったと思われます。

日本人が口を隠す文化とすれば、欧米人は口を見せる文化と対比できるかも知れません。
アメリカの人々が話している時の特徴は、如何に自分の意思、感情を相手に伝えるために、身振り、手振りを大きくして口元を突き出したり、口角を吊り上げたりと強調します。
まさに意思、感情を表に出す文化です。

口元の筋肉は意思で自由に動かせますが、目の表情はどうか。
意識して目の形を変えることも出来ますが、細める、見開く、微笑むなどと、口元の変化と比べて限られています。

アメリカ人が歯列矯正の治療を受ける比率は、他国に比べて圧倒的に多く、歯並びの良し悪しで、貧富の程度や教育程度、人格まで判断する傾向があり、特に女性は ニッコリと白く整った歯を見せて笑う事が大変重要で、鏡に向かって美しいスマイル練習をしています。
その割には、サングラスで目を隠すことは、それ程、違和感がない点が面白いと思います。
日本人は感情を表に出すことは、時にハシタナイこととして慎む文化な訳で、微妙な眼差しの方に重きをおくようです。
「目は口ほどに、ものを言い」とはズバリのことわざです。
男性が女性をデートに誘って、女性が微笑んで口を押さえる仕草をすると、それを日本の男性は恥じらいと受け止めて、胸ときめかせ好感します。
一方、アメリカの男性は、拒絶や嘲りと受け止めて落胆します。
面白い実験があります。メールの顔文字の表情について、アメリカ人と日本人の
注目点の違いを比較しました。
結果は、予想通りアメリカ人は口元の形に、日本人は目元の形に注目していました。

60年代にアメリカから流行ったラブ・アンド・ピースのスマイルマークは、確かに目は笑っていませんでしたので、何か馴染めなかった印象が残っています。

マスクは口を覆い口に触れるし、呼吸の安全に直接影響するので、素材の安全性には早くから注目されて、オーガニックコットンのマスクはとても人気があります。
肌触りのよさや安心感は格別です。各メーカーは色柄、デザインに凝る方向にありますが、この点はしっかりと見据えて欲しいと思います。

2021年3月16日
日本オーガニックコットン流通機構
オーガニックコットンアドバイザー 宮嵜 道男  

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