エコバッグはコットン製[コラム 2021 No.11]
エコバッグはコットン製、ベストチョイス!
昨年7月にエコバッグのレポートを書きました。
https://noc-cotton.org/column/コラム-「ポリエチレンの-エコバッグって-本当に
一般的にエコバッグと言えば、カラフルでお洒落なデザインのポリエチレン化学合成品が一般的になってます。
ネットでエコバッグを検索すると、出てくる出てくる、もう見るのが嫌になるくらいで、大変な激戦状態です。
中には売れている人気ランキング 800 なんていうサイトもあります。
その中にコットン製、ほか天然繊維製を見つけることはできませんでした。
ひょっとすると 1~2点 はあったかもしれませんが、実は目で追って探して、300 番台辺りから目がつらくなって、いい加減にスクロールしてしまい見落としたかもしれません。
「エコ」と名乗るからには、天然繊維製がなくてはならないのですが、見当たらず、本当に残念でした。
天然繊維のエコバッグがこのように普及しないのは、天然繊維業界全体の認識不足ではないでしょうか。
中でも強度や価格の面で十分対応できるコットン業界は、怠惰の謗りを免れないのではないかと思います。
エコバッグでネット検索してみて、ビックリした記述に行き当たりました。
これは、見逃せないと、コラムを書こうと思い立ちました。
デンマークの環境食品省環境保護機関が 2018年 に発表したレポートで、地球温暖化防止に最も優れているのは、なんと有料化されたポリエチレン製のレジ袋だというのです。
一瞬、何のことか、戸惑いました。
LCA(ライフサイクルアセスメント)の手法で原料、精製、製造、流通までの二酸化炭素の排出量で他の素材と比較しています。
1 枚のポリエチレン製のショッピング袋を作る上で発生する CO2 環境負荷を試算して、その他の素材の買い物袋が何回使ったら同等になるかを試算して比較しています。
この結果によると、一般的なポリエステル製のエコバッグだと 35回 としています。
そして、コットンなど布製のエコバッグの場合は 840 回 使って、やっとポリエチレン製のレジ袋と同等の二酸化炭素、CO2 排出環境負荷だとしています。
このように、環境関係に限らず、統計や研究データというものは、少し目を離して全体像で判断しないと事実を見紛うことになります。
天然繊維には、成育中に二酸化炭素を吸って酸素を供給している事実(光合成・炭酸同化作用)がありますが、そちらが考慮されていない可能性が高いと思われます。
そもそも、レジ袋の制限はプラスチックが生分解しない素材のために海洋汚染を起こし、海洋生物を傷つけている、さらにそのプラスチックが微少化してマイクロプラスチックとして魚介類の体内に取り込まれ、それを食べる我々人間の健康被害になる怖れがありと始まった運動でした。
以上のような、温暖化の問題に変わっている情報がネット上には多数ございますので、自分の目で確認し、全体像で判断していただければと思います。
コットンなど天然繊維は、自然界の生育、生産、廃棄、分解のサイクルの中に収まっていて、廃棄後は炭素と水素と酸素に戻るだけで、完全な生分解性のサイクル素材です。
CIEL(Center for International Environmental Law – 国際環境法センター)の Plastic & Climate のレポートの 「The Hidden Costs of a Plastic Planet:プラスチック生産の隠れた環境コスト」を見ると、プラスチック生産の二酸化炭素排出を計算して警告しています。
- 1t のプラスチック生産によって 1.89t の CO2 が発生している。
- 2015 年のプラスチック生産が3.8億tなので、プラスチック生産による二酸化炭素発生量は 7.2億t。
- 石油の発掘、輸送の過程で 1億800万t(2015年)
- 精製と生産の過程で 1億8000万t ~ 2億1300万t
- 廃棄の過程で 590万t
元々石油の生産の過程で二酸化炭素が大量に放出されています。
これらの数字を見て、石油を原料とした化学合成繊維製のバッグに「エコ」という呼び名を付ける発想について、皆様はどう考えますか?
これに対して、オーガニックの威力を示す決定的なデータを示しましょう。
有機栽培によって、土壌中の炭素は平均 455kg/ac・f(年間)増加した。CO2 に換算すると約 1,600kg/ac・f になります。
例えば世界の全ての綿花をオーガニックコットンにしたとして、世界の綿花栽培面積は3,400万ヘクタール(8,400万エーカー)であるから、単純にかけ算すると、何と 1億3440万トンの CO2 を固定吸収(大気中のCO2を減らす)してしまいます。
大気中の炭素、窒素の土壌中への固定現象は、一般の綿花栽培では見られませんでしたが、オーガニックの畑では炭素分が 15 ~28 %、窒素分も 8 ~ 15%増加しました。(化学肥料、農薬を使わないので、土壌中の菌が活発に働きます)
土壌中に炭素や窒素が増加するということは、植物の生産力も高めることになり、一挙両得の効果があるというオーガニックコットンの明るい未来・スーパーパワーを伺わせます。(Rodale Institute:ロデール研究所)
以上の事から、オーガニックコットン の ショッピングバッグ こそ本命のエコバッグ だと私は考えております。
“エコバッグはオーガニックコットンで!” というキャンペーンを興しましょう。
2021年6月25日
日本オーガニックコットン流通機構
オーガニックコットンアドバイザー 宮嵜 道男