やってはいけないテクノロジー[コラム 2022 No.03]

46 億年かけて培ってきた生命史を覆してしまう技術は、なんといっても原子力と遺伝子組み換えでしょう。

人間を造った神様も、まさかここまでやるかと困惑しているに違いありません。

オーガニックという思想は、あるがまま愛でるという価値観で、大自然が起こす作用以上の人工の加工はしないという自制心であると考えてきました。

このところのマスコミは、NPT(核拡散防止条約)に対してもう一歩踏み込んで核兵器禁止条約を進めようという動きがあることを伝えています。

NPT は 1968年 から始まった運動で、世界のほとんどの国が参加しています。

ところが条約があっても、実情は新勢力国が核を保有してさらなる脅威になってきていて、2017年 に新たに国連で核兵器禁止条約が採択され 2020年 には批准(ひじゅん)されました。
ただし、現在 59カ国 の参加に留まっており、肝心の核保有 5大国は参加せず、唯一被爆国の我が国も、アメリカの核の傘の中にいるという事情からこの条約に参加できていません。
核戦争が起これば地球そのものが壊れるので、「勝者のいない戦争」と分かっているのに、競り合う当事国同士、引くに引けない金縛り状態に陥ってしまっています。

最近、EU 欧州連合委員会は原子力発電を CO2 の出ないグリーンエネルギーという位置づけで推進するという動きに呼応するように、我が国の現政権は福島原発惨事の 反省が薄れたのか、ベースロード電源として位置づけるという体勢を整えようとしています。
地震が多発しているこの日本列島に 50数基 もある原発施設、福島原発の燃料デブリもコントロールできず、汚染水はたまりにたまって行き場がなく、とうとう海洋放出する算段に陥っているというのにです。

本来、放射能汚染物質の安全な処理の技術や方法が整わないのに、原子力発電を始めたのは無謀なことでした。よく「トイレがない家」と例えられますが、さぞかし居心地の悪い家でしょう。

そもそも原子力は、1905年 にアインシュタインが特殊相対性理論を発表したところから始まりました。
有名な E=mc2 という空恐ろしい科学的事実を公式に表わしました。
エネルギーは 物質の質量 x 光速 x 光速 であるとしています。
光速は 30万km/秒 というとんでもない数字の二乗倍で、物質の質量がエネルギーに転換する時、想像を絶する膨大なエネルギーが発散されることを示しています。

何かの本の記述でうろ覚えですが、一円玉 4枚 が持っているエネルギーで東京ドームいっぱいの水を沸騰させられるとあって、不思議なこの世界の物理現象を知りました。

それまではラボアジェの質量保存の法則で済んでいましたが、アインシュタインが この公式にたどり着いたので、物理界は一変しました。
質量は変換してエネルギーに成り得ること、ウランが放射能を発していること、
ウランの質量が相対的に重いこと、ウランの原子核に中性子をぶっつけると核分裂反応が起きること、などがわかり一気に新兵器としての原爆への道につながってしまいました。

広島の原爆は 50Kg のウランの中のわずか 800g がエネルギーに変換して、あの破壊力になったそうです。800g といえば、大きめのカボチャ程度です。
物質とエネルギーの関係の中に秘めた力は、とてつもなく巨大なことがわかります。

人類はこの秘密を学問として解き明かしても、危険な物は利用しないという高度な 見識を持っていたら、幾多の悲劇は起こりませんでした。
以上のことからオーガニックな価値観でみたら、原子力利用は、明確に行き過ぎな技術であり、EU のいうような CO2 を出さないからグリーンだと短絡的にいうことは決してできません。

もう一つ、利用してはいけない技術に遺伝子組み換えがあります。

遺伝子は創造神が造った生命の設計図ともいえるし、46億年 の気の遠くなるような時間経過の中で淘汰を繰り返し地球環境に適合して生き残った貴重な仕組みです。その仕組みに、ビジネスとしての動機から手を入れ、用途に合わせて遺伝子組み換えをして、農産物を変異させてきています。
一世代、二世代と世代が進んでいくと最初の生命体からだんだんと異なるものになる可能性があります。
遺伝子組み換えされた食品が体内に入って、体内で変異した遺伝子によって身体が変異してしまうということは、身体の消化システム上、起こりにくいと願いますが、これも世代が進んで、何らか不具合が起きた場合、決して元に戻ることができない不可逆性の問題があることは覚悟しなくてはなりません。
遺伝子組み換え食品が免疫に関するアレルギー反応として現れる可能性は、多くの研究で指摘されてきたことです。

オーガニックの規定では、創造神が造り上げた大自然の仕組みには一切手を入れないという考え方が強くあり、原子力技術、遺伝子組み換え技術は根本的に受け入れられ ないという立場にあります。

2022年02月10日
日本オーガニックコットン流通機構
オーガニックコットンアドバイザー 宮嵜 道男

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