リジェネラティブ・オーガニックってなに???[コラム 2022 No.04]
またまた新しいオーガニック認証が発案されています。
リジェネラティブは日本語にしてみると再生ですので、環境再生有機農業ということになります。
土壌を傷めない有機農業という考え方から一歩進めて改善して回復させていくこととしています。
リジェネラティブ農業が掲げている農法の基本は以下の4点です。
- 不耕起栽培畑を耕さないで栽培する。
- 作物を作らないときは、畑を露出しないで葉のある植物で覆う。
- 輪作する。
- 有機肥料で土壌の健康を保つ。
国連が 2019 年にクライメイト・アクション・サミット(気候改善サミット)会議の時に扱われたテーマでした。
目標として
- 農場とその周辺の生物多様性の保護と改善
- 土壌中の炭素と水の保持能力を高める
- 肥料や殺虫剤などの使用を減らす
- 農業コミュニティの生活サポート
が挙げられています。
2014年 に非営利の有機農業の研究機関であるロデール・インスティチュートが、環境再生型有機農業に改善すれば CO2 の排出を 100% 土壌に吸収できると発表しています。
食物と繊維の生産は、世界の CO2 排出量の 25% を占めており、環境保全型のオーガニック農業を積極的に一歩進めて改善型に変えていくことを提唱しました。
パタゴニア社は、衣料品の原料には早くからこの問題に取り組んできましたが、食用の農産物へ活動範囲を広げ始めました。
そして 2017年 にはリジェネラティブ・オーガニック認証を開発しています。
テキスタイル・エクスチェンジが認証規定の策定に加わり、新たな認証マークも用意されています。
上記の環境再生型有機栽培の4つの基本の内容をざっと見て、オーガニックを理解してきた人は、何が新しいのか首をひねります。
すでにやってきた、当たり前の事ばかりですが、一つだけ「畑を耕さない不耕起栽培」という項目は、これまでの農業の常識から外れていて興味がひかれました。
農業を始めるとしたら、最初にする作業は畑を耕すことでしょう、というのがこれまでの常識です。
オーガニックコットンの仕事を始めた頃、有機農法とは何かを知るために何冊かの本を読みました。その中に自然農法の提唱者 福岡正信氏の「わら一本の革命」(2004年)がありました。この本は多くの外国語に訳されて広がり、発展途上国の農業に貢献しました。
人間の浅知恵で自然環境を作り変えるなんて、神様に刃向かうようなことだぞといい、厳しい眼光を向けられたように記憶していますが、不耕起、無肥料、無農薬、無除草で、これこそ究極のオーガニック農法だと共感もしました。
ただ、自給自足的な農法としては、納得できましたが、売って稼ぐ農業となると本当に成り立つのかどうか疑問が残りました。
畑を耕すというのは、雑草を取り除き、土を柔らかくして、作物の根が張りやすくして、土中に空気を入れて土壌中の微生物を活発にし、土中の有機物の分解を進めて作物が栄養分として吸収しやすくなる効果を狙ってやっているものと思ってきました。
ところが、不耕起栽培の立場からすると、耕すことで土壌が痩せるといいます。
有機物が流出しやすくなり、微生物が少なくなり、土壌が硬くなると指摘します。
メカニズムはこうです。
畑を耕すと土中に空気が入る、すると微生物が活発になって土中の有機物を急速に分解する、そこに雨が降るとその栄養分が流れ出て、作物が吸収する機会を逸してしまうということです。
そこで、肥料をたくさん与えると、育ちすぎの問題と作物の病変や害虫の被害を被ることになります。
土を耕すと、独特な土の香りがしますが、これは正に栄養成分で空中に逃していることなのだといわれると、なるほどと思いました。
また耕すことで何よりも大事な「土壌」が流れ去ったり、風で吹き飛んで畑が痩せていく土壌浸食、土壌劣化の問題を起こすのだそうです。
私たちの食べ物の 95% が土壌に係わっていて、土壌の CO2 吸収能力は植生の3倍もあり、土壌を良い状態に保つ事がいかに重要かは理解できました。
ただし、日本のような高温多湿で雑草が繁茂しやすい条件下では、この不耕起農法はむずかしい面があるという専門家もいるようです。
ROC(Regenerative Organic Certified)の規定は以下の三つの大枠からできています。
Soil Health(土壌の健康)
Animal Welfare(動物の福祉)
Social Fairness (社会的公平性)
確かに良い考え方だと思われますが、すぐにどうするということもなく、注目はしながら、現状のオーガニックコットン認証の改善の方向性の参考にしていくのが得策と思われます。
2022年02月25日
日本オーガニックコットン流通機構
オーガニックコットンアドバイザー 宮嵜 道男