意図的なパーセンテージ[コラム 2022 No.07]

イギリスの首相ディズレーリの有名な言葉に、このようなものがあります。
「世の中には3種類の嘘がある。嘘、大嘘、そして統計だ」

学生の頃から、統計の数字や表を示されると、それ以上疑うことなくきてしまったように思います。
コロナ感染者が、毎日発表されて一喜一憂していますが、この数字はあくまでも症状が現れて、保健所の指示でPCR検査が行われ、陽性と判定された人の数です。
検査の場が街のアチコチにあって誰でもいつでも検査ができるような体制だったら無症状の感染者が加わり、何倍にも大きな数字になるでしょう。
オリンピックだ、選挙だと感染者数が大きく見えないような調整があったかもしれません。
統計はいつでも「意図」を持っていることに注意を払わなければならないのではないでしょうか。


スーパーマーケットの食肉売り場で、おやっと疑問を感じたことがあります。
新聞で日本の食料自給率はわずか 37% だと書かれていた事を思い出したからです。
確かにオージービーフとかアメリカンポークと表示されたものはありますが、圧倒的に国産肉が多いのです。
野菜も中国産というものもかなり見かけますが、ほとんどは国産です。
加工食品も米も味噌も多くは国産です。
そこで、食料自給率ってなんだろうと思い、調べてみたら驚きました。

食料自給率 37% というのは、国際的には使われていないカロリーベースの算出法でした。
国際的には生産額ベースで統計の数字を出して比較しています。

そこで、生産額ベースに直した数字を見ると、日本の自給率は 67% で、先進国の中でも遜色ない数字です。
ところが、政府も経済界もマスコミも、日本は食料自給率が低く、安全保障上も非常に危機的だと警鐘を鳴らしています。
農業人口が減り、高齢化して衰退し、耕作放棄地が増えてこのままでは食料輸入国となり、外交上大きな弱みを持った国柄になるのだというのです。

実際には 野菜は 90%、米は能力的には 100%、牛肉は 36%、豚肉は 48%、鶏肉は 64%、卵はほぼ 100% です。

米は余ってしまっていて、耕作放棄して太陽光発電パネルを設置して、この方が楽だといっている農家の人の笑顔の写真なんかもネット上で紹介されています。
日本は、豊葦原(とよあしはら)の瑞穂の国ですから、小麦も大豆も作る必要があればいつでも作れます。国際相場が安くて採算が合わず、手を出せないということです。

綿花も栽培できますが、国際相場が低い農産物なので、採算度外視で国産主義で趣味的に栽培している人たちがわずかにおられるようです。
というわけで危機でもなんでもないのです。

その実、世界経済フォーラムの 2020年 の食料安全保障国際比較で、日本は世界 113カ国中、上位の 9位 にランクされています。

https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002902.html
参考:独立行政法人農畜産業振興機構
   「世界の食料安全保障指数ランキング、フィンランドが首位、日本は第9位(EU)」

兵庫県養父市では、国家戦略特区として農業の企業化のモデル事業を行ってきて、大変に順調で、日本の農業の新しい形が見えてきています。
企業の農地所有の禁止というこれまでの農水省、農業関係者の築いた岩盤規制のため、企業化できませんでした。
従来の農業関係者の人口は大きく、国会議員の大事な票田で抜本的な改革は先延ばしにされてきました。
日本の農業は危機的だとしないと農水省は予算が獲得できない、農業関係者はそのための補助金を得られなくなるという理由があるようです。

そこで、考えついたのが、カロリーベースで自給率を表わそうという仕掛けです。
カロリーベースで計算すると、肉や魚はカロリーが高く、野菜はほとんどカロリーがなく数値に寄与しません。その畜産物も飼料が輸入となれば大幅に減らされます。
卵は国産 100% だろうと思っていると、餌が輸入とあってわずか 10% しか算入されていない始末です。
その上、年間 2,000 万トン以上の廃棄食品も差し引かれているので、日本人の活動を成しているカロリーをベースに計算すると食料自給率 37% とおかしなことになってしまいます。

私たちが日常触れているニュースやネット上の説明にある統計の数字は、このようなある意図をもって演出された統計数値である可能性を見越して、判断する癖をつけなくてはならないと思いました。

オーガニックコットンのレポートを提供する際にも気を付けなくてはならないと自戒する次第です。


2022年04月08日
日本オーガニックコットン流通機構
オーガニックコットンアドバイザー 宮嵜 道男

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